扇町と昭和と野良猫

「鶴見線スナップ散策 3/4 (安善~昭和~扇町)」

[2016/7/2]


魔境ローカル線「大川支線」を攻略した私は、大川発の最終列車で安善へ戻ってきた。
海芝浦支線・大川支線を行ったなら、残るは鶴見線本線の末端だけだ。

鶴見線の中で最もディープなのは、やっぱり東の扇町エリアだと思う。
それは、以前来たときに何となく感じていたことだった。
色褪せた街並み、工場、錆び付いた鉄塔。
海芝浦近辺と比べても、扇町はノスタルジックで刹那的な構造物が多かった気がする。


鶴見線 [安善~昭和]

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安善到着から数分後、18時09分発の扇町行きがやってきた。
休日の鶴見線は支線の本数が殺人的に少ないが、それは本線も同じ。
一見本数が多そうな本線も、浜川崎止まりの列車が半分を占めていて、
終点の扇町まで行く列車は限られている。海芝浦と似たり寄ったりの本数なので下調べ必須!

終点まで乗って直行で帰るのはつまらないので、往路は徒歩で散策スナップでもやるか。



扇町の手前に「昭和」という、如何にもな名前の駅があるので、
そこで降り、道路を歩いて扇町へ向かう。


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どんどんディープになってきた。


安善辺りで感じた市井の匂いは消え失せ、武蔵白石を出たところで工場一色になった。
南部支線と接続する浜川崎を出ると、広大な貨物線の脇を抜け、
運河を渡って埋立地の扇町へ入っていく。


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人混みの中で同じような景色を見るのがクソつまんないと感じた人は、鶴見線に乗るといい。
未開の非日常とリアルを求める方にこそ、鶴見線の魅力は開かれている。
偉そうに何言ってんだ、俺。

でも、ホントに思うんだ。そういう人にとって、鶴見線は天国なんだって。



18時16分、列車は昭和へ到着した。名前が名前なので一度降りてみたかった駅だ。
ホームに佇んでいたのは、僅かながらの利用客と、ニャーだった。
ニャーがオッサンに混じって鎮座していた。

ズカズカ近づいても微動だにしない。やっぱり、駅に住むぬこは格が違うのか。
列車が去ると、ホームの向こうからもう一匹近づいてきた。


昭和駅

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鶴見線の駅に猫が住み着いているのは有名で、猫目当てで来る人もいるという。
まるで実家の如く、のんびりと毛づくろいをするぬこ達。
実際、ここ一帯に住み着いてるのだろう。

気持ちよさそう。こんな土地でも、野良猫はどっこい生きてるのだ。



毛づくろいを終えたぬこは、線路に降り立って“STAND BY ME ごっこ”を繰り広げ始めた。
過酷な環境で生きている野良猫にとって、鉄道なんぞ遊び道具に過ぎないのさ。

非日常を求めるくせして安全に旅をやってる、自身の呑気を恥じた。


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まず第一に俺は思う。観光なんてする場所あったのか、と。
いや、ただ単にポスターを貼るスペースなんだろう。きっと。

何も貼られてませんけどw



食ったような名前の昭和駅だが、駅名の由来は隣接する昭和電工だ。そのまんますぎて秀逸過ぎる。
駅前が昭和電工の入口になっている。そして、駅舎が大川と肩を並べるくらいボロく、古い。
昔ながらの木造建てであり、頽廃よろしく蔦が絡み付いてるのが何ともいえない。

駅前の道沿いに僅かな商店があるが、尋常じゃないほど寂れている。ここ本当に東京近郊か??
アレだな。もうコレ昭和電工じゃなくて、完全に”昭和”の世界だから。
駅名とリアル、両方セットで体現しちゃってますから!


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扇町へ真っ直ぐ行ってもいいが、さっき見た運河の風景が良かったので、ちょっと寄り道。
駅前を出て道を左に進んだところに、扇橋という橋があるので行ってみる。
昭和付近唯一のスポットといえるかもしれない。

道中貨物の線路が横切っているが、現在使われている形跡は全く無い模様。
貨物線を渡れば、扇橋はすぐそこだ。


扇橋


運河っていいなぁ・・・!


ディープ&コアな工場地帯の景観は、少し前まで観光としてはタブーというか、
そもそも見向きもされなかったはずだ。でも、今は違う。

無機質で得体の知れない、それでいて何処か生活臭のする工場に何かを感じる人が増えてきたんだと思う。



夕陽に急かされながら、私は扇橋を後にした。
元来た道を戻り、昭和駅前を過ぎ、そのまま真っ直ぐ進む。
すると、右斜めに続く道がある。扇町駅へ向かうための唯一の道へ入る。


徒歩 [昭和~扇町]

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扇町エリアもやっぱり工場しかない。道は手厚い柵に囲まれているので眺望は良くないが、
柵の向こうに剥き出しのプラントやタンクがチラッと見えたりする。
ただ、そこまでダイレクトには迫ってこない……かな??

工場萌えのメッカである浮島町や千鳥町と比べると、微妙かもしれないが、
さっきの扇橋然り、ピンポイントで異界的景色を覗けるのが楽しい。



焼ける夕陽をバックに、一人でGRを弄りながらパシャパシャ撮りまくった。
持ち主のポテンシャルが反映されるカメラなので、八割方が微妙な写真になるのだが(苦笑)、
試行錯誤するうちに「コレだ!」と思う写真が撮れるときが、たまにある。その瞬間がたまらない。

ローアングルで屈んで撮るのがマイブーム。扇町にて変態がまた一人、生まれた。


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スナップしながら進んでいくと、呆気なく扇町駅前に到達する。
すぐ電車に乗って帰ってもいいが、
私が気になっていたのが、扇町駅のさらに奥。
駅前から、一般人も入れる車道が先へと続いているのである。

川崎の工場地帯でも相当ディープな一角が、この先で待ち構えているという。
ということで扇町駅はスルーして、ちょっと行ってみましょうか。


扇町


貨物線の踏切を渡り奥へ進んでいくと、右手に錆び付いたガスタンクが現れた。

この辺りまで来ると人気は皆無で、工場の通勤客がポツポツと歩いてるのみである。
ガスタンクの横を抜けるとT字路になってるので、そこを右に曲がる。
すると……


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D E E P W O R L D へ よ う こ そ 。


ここは何なのか??というと、道の両端に昭和電工の工場が迫り来る一角なのだ。
凄い重圧感。辺りは工場の臭いと、息苦しい重低音で満ちている。
グオオオオ!っていう工場の唸りが間近に迫る感じがたまらない!



立入禁止の脇道を覗くと、配管パイプが縦横無尽に絡み付いているのが見えた。

こんな場所で立ち尽くしていると、自分が無力でちっぽけな野良犬に思えてくるし、
工場が巨大な生命体のような感じだ。360度工場で、そのド真ん中に立っている。
浮島町や千鳥町でも、ここまで間近に”工場”を感じられる場所は無かったと思う。


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車道はさらに奥へと続いているが、DEEPな雰囲気を味わえるのは昭和電工の一角だけっぽい。
意外だったのは、こんな奥地でも鶴見線の貨物線路が延びていたこと。
しかし現在、使われている形跡は全くないようだ。

あまりブラブラするのもアレな場所なので、キリのいいところで扇町駅へ引き返した。
時刻は18時55分。19時ちょうど発の鶴見行きで帰路に着こう。


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扇町駅は旅客ホームの他、旅客を遥かに上回る貨物スペースを持っている。
おっここにもぬこが。線路脇を歩いて駅へ入っていく。

もしかして……



ぬ こ 天 国 だ っ た 。


駅なのに人いなくて、猫しかいないってどういうことだしw
無性に戯れたくなってきたが、列車が出るまで数分しかないのでスルー。
鶴見線は完全攻略したが、実は、あと一つ忘れてはならない駅がある。
帰路ついでにその駅へ立ち寄って、今日の散策スナップを締めたいと思う。

鶴見線といえば、個人的にあの駅以外ありえない!(ネタバレ必至→)


コメント

  1. ことり より:

    鶴見線は、昭和にタイムスリップするんですね。

  2. なまらゆうと より:

    鶴見線は別格ですね。何処行っても昭和でディープなのがたまらないです。
    他と比べると地味ですが、昭和駅は個人的にかなりオススメです。

  3. ことり より:

    昭和のイメージの工場だと思ってみていて思い出した。
    初代のウルトラマンやウルトラセブンのシーンでは
    何故かこんな感じの工場がよく登場します。

    いつも、怪獣に破壊されまくってるんですよね~
    そして、ふと気が付いた。
    怪獣に破壊されたはずの工場は
    次回には、完全に元どおりになっていて
    また、怪獣に破壊されるというパターン。

    平成生まれという事なので、再放送かビデオを視ていれば
    多分お気づきかもしれませんが。
    大人が視ても、別なイミで面白いかもしれません。

    工場で仕事が始まる時の、サイレンも鳴ったりするシーンも
    あったんですよ。確か……

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