夏の海芝浦支線を行く

「鶴見線スナップ散策 1/4 (鶴見~海芝浦~新芝浦~浅野)」

[2016/7/2]


鶴見線。鉄道大国日本でも、大都会に存在し続ける超ローカル鉄道だ。
横浜市鶴見から京浜工業地帯の奥へ延び、3つの末端を持つ珍路線だが、
その正体は工場で働く従業員の通勤路線。
平日は工場の通勤客でごった返し、休日はガラガラの様相を呈する。

そんなわけで、鶴見線は土日に訪れるのが○。必然的に人が少ないからだ。
30度越えの7月初頭、私は鶴見線のもとへ向かった。


鶴見線 [鶴見~海芝浦]

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JR鶴見駅構内に鶴見線の専用改札があって、SUICAをかざして通ればそこは既に”異界”だ。
始発駅の時点で、他とは違う雰囲気を醸し出す。それが鶴見線の面白いところ。
鶴見線に来るのはコレで3度目。今日は新愛機GRで全線スナップに挑む。

休日の鶴見線は本数が少なく不便だが、朝方か夕方なら効率良く乗り継ぐパターンが組める。
16時20分に鶴見を出発し、電車と徒歩を駆使して全線を攻略するプラン。駅名だけ記すと、
「鶴見→海芝浦→新芝浦→浅野→武蔵白石→大川→安善→昭和→扇町→国道→鶴見」
って感じで……乗り鉄以外は激しく同意してくれない散策スナップをやるんで、そこんとこよろしこ!


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鶴見線の電車は3両編成だ。ローカル風味満載だが車掌は健在である。
16時20分発の海芝浦行きは、ガラガラの状態で鶴見を出た。


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タモリ倶楽部とかで特集されてすっかり有名になった鶴見線だが、
観光客でごった返すとか、そんなことはまずない。
あくまでテツ向けのディープ路線なのだ。

そんなディープな鶴見線だけど、フツーの人にも知られている超有名スポットがある。
今日はまずそこへ向かおう。



鶴見からしばらくは住宅街なので地元客が多いが、弁天橋を境に一気に乗客が減った。
工業地帯へ突入し浅野を過ぎると、海芝浦行きは運河沿いの支線へ入る。
左手には運河が流れ、無機質な工場やら業務用の船やらが見え始める。

大都会の喧騒も、お洒落さのかけらもない、ちょっとした異界へ入り込んでいく。


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運河を眺めながら進んでいくと右にグッとカーブし、
列車は海沿いに出た。

終点海芝浦は、鶴見から僅か11分で到着となる。


海芝浦駅

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眼 の 前 が 海 。


海芝浦の魅力。それは、駅ホームの真ん前に海が広がっていることだ。
眼の前が海ってだけでも衝撃だが、この駅は他も珍要素があることで知られる。
まず、駅から出られない。駅出口がそのまま東芝の工場敷地内となっているため、
一般人が改札を出ると不法侵入で捕まることになる。「駅を出る=犯罪」が成立する超絶レベルの珍駅。

じゃあフツーの人は来てどうすんのさ??て話なんだけど、東芝もそこは考えたのか、
改札とは別に、駅構内と直結して小さい公園が設けられている。



「海芝公園」と名づけられた公園が、駅構内からそのまま続いているのだ。
一応駅構内に自販が一台置いてあるので、そこでジュースを買って、
公園のベンチでマターリすることも可能。

公園では少数の家族連れがくつろいでいた。
ディープというよりは、メジャーなスポットになりつつあるのかもしれない。


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それにしても潮臭いところだ。
都会真っ只中にして潮風を感じられる駅である。
駅舎の屋根も、関東の駅100選のプレートも、良い感じに錆び付いていた。

潮の匂いっつーよりは、生臭くてリアルな磯の臭いだけど。
本当に綺麗な海は潮の匂いがしないらしい。仮にも工業地帯ですからねココは……


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自販で買ったコーラをガボガボ飲みながら、ホームの端でボーっと海を眺める。
簡単に来れて人が絶対的に少ないので、ある意味究極の贅沢である。

眼の前は海。空が広い。コーラがうめぇ!



潮風を、潮の匂いを感じながら、海芝浦で夏を感じていた。
ポエミーな気分に浸ること20分。折り返し列車の時間が来る。
海芝浦に来る列車は本数が少ないので、すぐに折り返したほうが無難。

お次の下車駅は新芝浦だ。16時53分発の鶴見行きで、隣駅の新芝浦へ向かおう。


鶴見線 [海芝浦~新芝浦]


海芝浦から新芝浦までは約800m。普通に歩いて行ける距離だが、
この区間に限っては電車で移動するしか方法が無い。
新芝浦へ行けば、一般人が通れる道(徒歩限定)が延びているので、
線路際をちょっと散策してみようか。


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僅か2分で新芝浦へ到着。
海芝浦は海沿いだが、この駅は運河に沿ったところに存在している。


新芝浦駅


眼の前が運河という……ニッチなロケーションだが、コレはこれで面白い景観だ。
駅の真横が運河で、向かい側は工場しかない。鶴見線は全てが日常離れしている。
異空間を覗くというより、自分が異空間の中にいるって感じだ。

人が少ないので、なおさらその感覚が強い。



こういう景色とかタマラナイ。ローカル線以外の何者でもないっていう。
実際、新芝浦から先で単線になってるので、よりローカルな雰囲気を醸し出す。


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鶴見線は鶴見を除き全て無人駅。吹き抜けのガランとした構内に、
下車用の切符入れとICタッチ機がポツンと置かれてるだけである。

SUICAをタッチして駅を出ると、そこは東芝工場入口の真ん前であった。



新芝浦の駅舎は相当古く、年季の入った木造建て。恐らく開業当時からのものだと思われる。
コレみよがしに迫り出している東芝正門屋根とのギャップが凄い。
完全に東芝訪問者専用の駅って空気になってるw

駅前は警備が手厳しく居心地良くないので、さっさと浅野目指してひた歩く。


徒歩 [新芝浦~浅野]

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工場の従業員に混じって、線路脇の広大な道路を進んでいく。
新芝浦~浅野間は距離にして750mほどで、徒歩でも10分ほどで着いてしまう。

どうやら、この道に名物的なブツは無い模様。強いて言うならバス停と鶴見線の線路ぐらい。



後に知ったのだが……この道路は公道じゃないらしく(つまり東芝の私道)、一般車は入れないそうな。
妙に道が整然としてて面白くないなって思ったら、そういうことだったのね。
いずれにしても、徒歩なら問題ナッシングっす。


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何処もかしこも、線路は草ぼうぼうである。


線路以外で何か探そうとしたが、
特にネタになりそうな被写体は見つからなかった。
鶴見線は、西よりも東がディープなのかもしれない。ワクテカワクテカ。



線路脇にある巨大クレーンが、ちょっとカッコいい。
何をするためのものなのか知らんけど、ちょっとカッコいい。

クレーンを舐めるように撮った後、踏切を渡って浅野駅へ到達する。


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コレで現役の旅客鉄道ですからね……。しかもJRだし。
地方ローカルの民鉄でも、なかなかこういう風景って無いと思う。

雑草まみれになる夏に来てよかった。鶴見線といえば雑草ってイメージがあるので。


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海芝浦支線の散策はこれにて終了。
「あっちぃ~!」茹だる暑さに身を任せ、生温くなったコーラを一気に飲み干した。

ホームに上がるとすぐに列車がやってきた。もちろん全て計算済みである。
事前に列車の時刻を下調べしとかないと、休日の鶴見線は効率良く散策が出来ない。
それは、鶴見線が生粋のローカル線だから。ローカル線の旅は計画性がないと痛い目に合うのだ。

お隣の「大川支線」を攻略すべく、私は武蔵白石行きに乗り込んだ。(次回へ続く→)


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