「碓氷峠訪問記 2/3 (高崎~横川~文化村~峠の湯)」
[2015/7/12]
梅雨中の快晴となった今日、私は千葉から鈍行で高崎へやってきた。
適当に時間をつぶし、30分ぐらいして碓氷号入線のアナウンスが入る。
遠くから汽笛一声。黒光りのD51がホームに入ってきた。
SLレトロ碓氷 [高崎~横川]
SL碓氷は、長大幹線だった信越本線の起点高崎から横川を走るSL列車だ。
高崎発のSLは2種類あり、上越線を走って水上へ向かうSLみなかみと今から乗るSL碓氷がある。
どちらも繁忙期・休日に設定され指定席代を払うことで乗車可能。
SLだが列車の扱いは“快速”となっている。
高崎支社は生きたSLを2機持っていて、有名なD51と急行用として活躍したC61がある。
どちらで運行されるのかは日によって変わり、運行情報は公式ページで公表されているから知るのは容易だ。
今日はD51(498号機)が牽引するらしい。
1988年に復活して以来“東日本の顔”として活躍してきた機関車だ。
SLみなかみと違い、SL碓氷は終着駅に転車台がないためSL牽引は往路か復路どちらかのみとなる。
最近コスト面の問題からか、勾配を上る往路にSLが充当される機会が少なくなってきたが、
今日は希少な往路SLの運行日。そのせいかホームは人で溢れかえっている。
今日の混雑振りにさらに拍車をかけているのが、列車の後に連結された電気機関車だろう。
普段はディーゼル機関車が片道牽引する碓氷号だが、たまに電気機関車が牽引する日があるらしく、今日はその希少な運行日なのだ。
年に数回だけの往路SLでさらに希少なEL連結だから、混雑するのも納得。
いぶし銀の茶色い機関車はEF64。1964年に勾配線区向けに導入された直流電気機関車だ。
SL碓氷の他、臨時列車の多くを牽引しておりブルートレインも牽いたことがあるという。
高崎のSLで使われる客車は二種類あり一般的な国鉄客車と茶色い旧型客車があるが、今日の碓氷号は旧型客車だ。
客車の編成や運用形態は日によって変わるそうだが、このうち1両しかないスハフ32という戦前生まれの客車は、壁がニス塗りで床が板張りになっていて圧倒的人気がある。
横川←「D51-スハフ32-オハ47-オハ47-オハ47-オハニ36-EF64」→高崎
今日運行される碓氷号の編成はこんな感じ。
私が取った席は横川側先頭の5号車に連結されたスハフ32だ。
日本最古の現役客車で1938年生まれの古老。
走ってること自体が奇跡にしか思えない骨董品である。
旧型客車が使われる日、SL碓氷は「SLレトロ碓氷」と名を変えて運行される。
旧客は冷房が付いてないので車内は熱気の中。でも昔はこれが普通だったのだ。
乗客が乗り込んでくると皆窓を開け放って全開状態に。
ためらいなく窓を開けられるのは旧客の魅力である。
私が陣取る席は横川側先頭車(5号車)の前の方。SLの汽笛と音が一番よく聞こえるところだ。
ここなら走行音も良い具合に録れるだろう。発車時刻が来ると汽笛一声!
黒煙を上げながら高崎を発車した。
高崎を出て上越線と分かれると信越本線は独り立ちする。
住宅が少なくなってくると田園地帯に出て、力強くひた走っていく。
この区間はあまりスピードを出さないようだ。
安中の左横に工場群が見えるがあれは何なんだろうか。ラピ○タに出てきそう。
線路脇でギラギラ眼を光らして列車を収める撮り鉄達。
こんなクソ暑い中お疲れ様です。
列車の中はもっと暑いけどね。汗がダラダラ出てくる!
安中を出てしばらくしたところでイベントが行われた。
どうやら○×クイズをやるようだ。意外と難しく、私は即効落脱。
「安中市発祥のスポーツ」とかそんなん誰が知ってるんだよw
最終的には子供主役のボチボチ展開となり、景品も子供達の手へ渡った。
急勾配区間
「急勾配が続く磯部~横川間(標高差約170m)」
磯部を出ると、碓氷号は“25パーミル”の急勾配へ差し掛かった。
電車と比べて非力なSLは、坂の手前である程度の勢いをつけないと坂を上ることができない。
速度の遅い観光列車でも、この区間だけは絶対に速度を上げないと終点へ行けないのだ。
当時の鉄道限界といわれる勾配区間だが、実は中間付近が僅かな“平坦地”になっている。
その平坦地にあるのは終点二つ手前の松井田駅だ。
ここからレコーダーを窓際に翳して走行音を録ってみた。
「力走!SLレトロ碓氷 走行音(松井田~横川付近)」
これがD51の本気(ガチ)モードだ!
松井田周辺の平坦地を使って碓氷号は一気に加速。横川までの急勾配に突入した。
アクセル全開で一気に速度を上げると、西松井田付近まで爆裂ブラスト音を上げて坂を駆け上がる。
観光列車にしては嘘みたいな猛進ぶりだ。なかなか良好な環境で録れたので是非ご堪能あれ。
急勾配を上って終点が近づいてくると、辺りはすっかり山の中。
左手には奇怪な妙義山が聳える。日本三大奇勝の一つとされている山だ。
怒涛の勢いで坂を上ってきたSLは少し勢いが落ち、喘ぐようにブラスト音を立てて進んでいく。
横川が近づくと列車は速度を落とし、ゆっくりと入線した。
横川駅
10時49分、SL碓氷は終点横川へ到着した。
10分後に出るトロッコに乗る必要があるため、すぐに移動しなければならない。
列車を撮った後はすぐに駅を出た。
トロッコ列車の乗り場は、横川駅の隣にある「碓氷峠鉄道文化むら」の敷地内にある。
入口で入園券とトロッコの往復セット券(計1300円)を買い、すぐに乗り場へ。
今から出る列車に乗らないと碓氷第三橋梁まで5km歩かなければならないので地味に焦ったが、普通に間に合ったからよかった!
トロッコ列車ライン [ぶんかむら~とうげのゆ]
横川からは鉄路が途切れていると思いきや、そんなことはなかったらしい。
調べてみると碓氷峠の中腹まで行くトロッコ列車があった。
その正体は、碓氷峠鉄道文化むらが運営している“アトラクション“である。
トロッコ列車ラインという名が付いていて「ぶんかむら」から「とうげのゆ」の2.6kmを結ぶ短小路線だ。
当時使われていた碓氷峠区間の線路を流用し遊具として開業させたもので、3月~11月の土日祝日に運行している。
アトラクションではあるが発車時刻はきっちり決まっており、ちゃんと時刻表もあるようだ。
列車は1日5本のみ。某ローカル線並みの少なさである。
11時ちょうど発の「とうげのゆ」行きは空いていた。
二両編成で、前側が展望トロッコ、後側が一般的な客車となっている。
牽引するディーゼル機関車はぶんかむら側に連結。こじんまりとしているが、これもまた列記とした鉄道だ。
定刻が来るとブザーが鳴り響き、出発した。
“アトラクション”なので速度は遅く、走れば抜かせるほどのスピードでのんびりと走る。
それでも2.6km歩かないで済むんだから有難い。脇の遊歩道はほとんど歩いてる人がいない。
35度の炎天下で急坂を好き好んで歩く奴が何処にいるのか(苦笑)
途中、中間駅「まるやま」で数分停車。駅横には丸山変電所があった。
国鉄が初めて造った変電所で、昔は廃墟スポットとして有名だった建物だが、観光化された現在は修復されており重要文化財に指定されている。
丸山変電所の観光案内・見学タイムが終わると、再び発車。
最大66.7パーミルの急勾配は伊達ではなく、道のりは急峻さを増してきた。
まるやま駅を出てしばらくすると右手の眺めが良くなってくる。
並行して敷かれている線路は碓氷峠の上り廃線。トロッコに使われている線路は下りの方だ。
特急「あさま」が通っていた上り線は遊歩道化されており、線路の上がそのまま歩道になっている。
垂直に建てられた架線柱と遊歩道が織り成す尋常じゃない傾き具合に注目してほしい。
こんな急なところを普通の列車が当たり前のように通っていたのだ。
とうげのゆ駅
11時20分、トロッコ列車は終点の「とうげのゆ」に到着した。
碓氷第三橋梁へ行くには、ここからさらに2kmほど歩かなければならない。
油断してると暑さにやられそうなので自販で水を補給。炎天下の探索は水分が不可欠だ。
次回!碓氷峠の旧線跡を歩き碓氷第三橋梁(めがね橋)へ向かう!