芝山鉄道に乗る

「芝山/東成田攻略 2/2」

[2015/6/13]


芝山鉄道が何なのかは前回の記事で説明したが、正直ここまで異常だとは思わなかったぞ。
空港第2ビル駅から不気味な地下通路を抜け、期待を胸に訪れた芝山鉄道の起点。
それは、四半世紀前に使命を終えた巨大廃ターミナルだった。

乗り場に自分と警備員しかいないという超展開の中、何の前触れもなく電車がやってくる。
やがて轟音が近づいてくると芝山千代田行きが姿を現した。


芝山鉄道 [東成田~芝山千代田]

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芝山鉄道は京成線からの列車が乗り入れており、同線を往復するだけの列車は存在しない。
乗り入れる列車の全ては、成田方面からやってくる京成や都営の列車である。
ちなみに芝山鉄道は自社の車両を一編成だけ持っているが、何故か芝山鉄道には滅多に乗り入れないという。
自社車両が自社路線を走らないってどういうことだし!(編成上の問題らしいです)

行き先幕は何故か「(東成田) 芝山」となっていて、芝山鉄道の特異性をビンビンに感じる。
列車に乗り込むとものの見事にガラガラ。一両に一人いるかいないかの割合だ。
到着アナウンスはなかったが発車ベルは鳴るというのもまた謎である。
電子音だけが鳴り響いた後、2.2km先の終点向けて走り始めた。



東成田を出ると空港下の地下線をゴトゴト走っていく。
しばらくすると速度が下がり、地図では把握し難いが急なS字カーブを曲がり始めた。
反対派の同意が得られず買収できなかった土地の隙間を、急カーブで切り抜けているのだ。


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「………カンカンカンカンカン!」


びっくりしたのはS字カーブを抜けた後だ。
地下なのに何故か踏切の音が聞こえてきたのである。
頭おかしくなったんじゃない。マジだ。恐らく検査の巡回員か何かに対するものだろう。
突っ込みどころ満載過ぎて何がなんやら。


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謎の踏切音が遠ざかっていくと、間もなく列車は地上へ出た。
線路のすぐ隣には成田空港があり、飛んでいく飛行機も見ることができる。

空港を拝みつつ高架を上がってきたところで、列車は終点の芝山千代田へ到着する。


芝山千代田駅

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芝山千代田駅は空港東側の端に存在する。列車を降りると辺りは轟音の中。
飛行機のジェットエンジンが間近で聞こえてくる。
線路横を走る一般道は地下を潜って空港西側へ直結してるみたいなので、
どうやら芝山鉄道だけが孤立してるわけではないようだ。車の交通量も多い。


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この駅は芝山鉄道の“現時点終点”だ。
将来的には九十九里の方まで延伸する計画があるようで、高架の端はブツ切り状態になっている。

今にも敷設が続きそうな様子だが、今後延伸される可能性はほぼ無いと考えていいだろう。


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芝山町は遺跡・古墳の宝庫で、駅の至るとこで名物のはにわがフィーチャーされている。
記念撮影ボードもはにわでロータリーに飾ってあるオブジェもはにわだ。100%はにわ推し(笑)


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駅前を探索してみるも、はにわ以外これといったものはないようだ。
この駅からは延伸区間の代替としてシャトルバスが出てるようで、芝山鉄道と併用すれば成田空港から九十九里へ行くことも可能だ。


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「芝山鉄道 みんなの願いは 早期延伸」


地元町議会による物々しい看板もあった。
一体何の基準で「みんな」としてるのかはわからないが、現時点で延伸は絶望的だろう。
あと延伸したら「日本一短い鉄道」ではなくなるので日本一ブランドがなくなってしまうのが痛い。

芝山鉄道が開業するまで日本一の短さを名乗っていた紀州鉄道の全長が2.7kmなので、少しでも延伸したら即刻ブランド剥奪である。



仮に芝山鉄道を看板の要望通りに延伸させたら、こんな感じになるだろうか……!
芝山千代田から芝山町中央を貫き、総武本線と接続する松尾を経て蓮沼・九十九里へ至る。
九十九里浜と蓮沼海浜公園を名物にして、上野・羽田から特急を走らせてみてはどうだろうか??

大赤字は間違いないけどね。


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ホーム北側からは、空港に停泊中の飛行機を間近に見ることができる。
開業当時は飛行機の見れる駅として注目を浴びたんだとか。

見るべきものは見てしまったので、キリのいいところで折り返しの列車に乗り込んだ。
ここであまりブラブラしてると不審者扱いされて捕まりそうである。
探索するのは自由だが常識ある行動を心がけたい。


芝山鉄道 [芝山千代田~東成田]

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夕方の通勤時間帯だからか、復路の成田行きは意外と利用者が多い。
そのほとんどが空港・公安関係の仕事帰りの人だろう。
車内の雰囲気は鶴見線のそれと似た感じだ。

淡々とした業務放送が流れた後、列車は出発した。
左手に空港を拝めるが、すぐに地下へ潜り空港直下を突き進む。
起点から終点まで2.2kmにして3分。小さな道のりを経て隣駅の東成田へ到着する。


東成田駅

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東成田に戻ってきた。
このまま直通の京成線に乗って帰ってもよかったが、自分の場合、成田スカイアクセスで帰った方が早いので、元来た道を戻り空港第二ビルへ向かうことにした。

………あの魔境地下通路をまた通らなければならないのだ。


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異 次 元 へ の 入 口 。


またここ通んのかよぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
女性客が間違って入り込んだらトラウマになるだろう。とにかく雰囲気がヤバイ。

入口にさっそく監視カメラがあるが、通路内にあのカメラが数え切れない程あるのだ。
空港の圧倒的権威の元で一人無防備でさらされる切迫感が尋常じゃない。
ドMな方にはいいかもしれないがw


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ただ戻るのも面白くないので、僅かに残る昔の広告を物色してみる。
色褪せた写真の下に「東京駅地下ホームからL特急あやめで60分」と案内が書いてあった。
L特急は国鉄時代の特急の称号だ。あやめは今年廃止されてしまったが……。
ここは何もかも時代から取り残されている。

あと間違ってもこんな辺鄙なところで彼女に会ってはいけない。
即刻別れを告げられ破綻を迎えるだろう(笑)


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生還!!


500mに及ぶ連絡通路を戻り、私は巨大廃ターミナルから”生還”した。
現世に戻ってきたかのような達成感。心底生き返った気分だ。

それほど、旧・成田空港駅はヤバイ雰囲気を放っていた。


空港第2ビル駅

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こちらは現行の成田空港、空港第2ビル駅のコンコース。
さっきの“異世界廃墟ワールド”は一体何だったんだと、人混みに紛れながら私は思った。

空港第2ビルに戻った後はスカイアクセスに乗り、さっさと帰路へ着く。


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人を選ぶが、鉄道好きなら東成田は一度訪れる価値がある物件だと思う。
芝山鉄道は京成成田から直通の列車でそのまま行くこともできるが、個人的には敢えて空港第2ビルから連絡通路を使うルートで辿るのをオススメしたい。
このルートで行く場合、万が一のときのために身分証明書を持参した方がいいだろう。

・旅の総費用:運賃400円
・乗った乗物の数:鈍行2本
・総距離/所要時間:5.4km/1時間強


さらされる恐怖と緊張感の元で、未知なる場所へと向かうような“圧倒的異空間”
長い連絡通路を抜けた先には、昭和のまま取り残された巨大廃ターミナルと”日本一短い鉄道”が待ち構えている。

(完結)

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