関東鉄道竜ヶ崎線の旅

「古き良き中心市街のためのローカル線」

[2015/6/13]


常磐線と繋がる佐貫から竜ヶ崎までを結んでいるのが関東鉄道竜ヶ崎線だ。
今回はこの小さな私鉄ローカル線、竜ヶ崎線を辿っていこうと思う。


関東鉄道竜ヶ崎線


竜ヶ崎線の起点は、上述した通り常磐線と接続する佐貫だ。
ここから唯一の途中駅入地を経て、終点の竜ヶ崎へ至る。
全長4.5kmの短い道のりであり、乗車時間僅か7分で完乗できてしまう小さなローカル線。
全線単線であり、列車交換駅なども一切存在しないシンプルな路線である。

私の中で関東鉄道のイメージといえば、かつて主力で走っていたベージュ地にオレンジ帯の気動車である。
現行の関東鉄道の車両は白地に青赤のラインを帯びているが、昔の澄茶の気動車を私は見たかった。
そこで狙いを定めたのが、土曜の日中だけ走っている竜ヶ崎線のキハ532だ。
同車は、日本で初めて製造されたワンマン用気動車として知られている代物である。

かつての関東鉄道標準色を纏っているこの気動車に、今日は乗りに行ってみよう。


佐貫駅

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自宅最寄から常磐各停で我孫子へ行き、そこから下りの勝田行き中電に乗って佐貫で下車する。
佐貫は茨城に入ってから3つ目の駅だ。辺りはベッドタウンとして発展を遂げている。
JRの自動改札を出た後、さっそく関鉄竜ヶ崎線の乗り場へ向かう。

佐貫駅東口から関鉄竜ヶ崎線の乗り場への連絡通路は、ビルの裏側へと続いている。
駅の入口というよりマンションの入口といった様相を呈しているが、怯まず案内に従って進んでいこう。


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ビル裏の連絡通路を進んでいくと、竜ヶ崎線のこじんまりとした駅構内へ。
改札は自動化されてないが、ICカード対応の簡易改札機がある。
とりあえず往路は普通の切符で行くことにしよう。


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「佐貫駅構内に掲示してあった当時の竜ヶ崎線の写真資料


関東鉄道竜ヶ崎線の歴史は極めて古く、茨城最古の私鉄路線として知られている。
開業は一世紀以上も前に遡り、19世紀末当時、馬車鉄道として開業を目論んでいた竜崎鉄道が全ての大元だ。
同社は馬車鉄道として計画を発起したが、後にすぐコスト性の観点から蒸気牽引の軽便鉄道に計画変更。
営業区間も当初は藤代~竜ヶ崎間だったが費用削減のため佐貫~竜ヶ崎間へ縮小し、1900年に竜崎鉄道は開業した。


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竜ヶ崎線は茨城最古の私鉄路線であると同時に、日本初のワンマン導入路線でもある。
1971年に国内の一般鉄道で初めてワンマン運転を導入していて、現在も継続されている。
地方ローカル線ではワンマン列車が当たり前となった今では想像し難いが、
導入当時は一般鉄道でのワンマン運転の前例が無く、許可を取るのに難儀したという。

切符を買い改札を通ると、懐かしのカラーを纏った単行気動車が停まっていた。


関東鉄道竜ヶ崎線 [佐貫~竜ヶ崎]

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ワンマン運転を導入した1971年以降、竜ヶ崎線は他社からの旧型気動車のお古が走っていたというが、
老朽化は免れず、やむなく新型車を導入することとなった。
それで1981年に導入されたのが、このキハ532だ。
この車両は足回り機器を国鉄キハ20の部品で賄い、車体だけを新しく造って組み合わせた”準新造車”である。

現在竜ヶ崎線に在籍している車両は、平成以降に導入された新型気動車キハ2000二両とキハ532の計三両。
普段はキハ2000しか走らないが、毎週土曜の日中に限り旧型のキハ532が名物として走っている。
この車両の運用に関しては関東鉄道の公式ホームページに記載されているから、捕らえるのは容易だ。
81年製造とそこまで古くない車両だが、今後この車両の希少性は高くなってくると思われる。

休日の日中なので、車内はそこそこだが乗客がいる。老若男女ともに乗り込んでおり、手堅い需要を感じさせる。
発車時刻が来るとメロディが鳴り響き、ガラガラとエンジンを唸らし竜ヶ崎行きが発車した。


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竜ヶ崎線の所要時間は、起点から終点まで僅か7分。あっという間だが、車窓はローカル風味濃厚で見物だ。
起点佐貫からしばらくは住宅街をゴトゴト進むが、間もなくしてただっ広い田園地帯へ出た。
直線区間がほぼ全てを占める路線だが、スピードはそれほど出さず60km程度に留まっている。

そのまま終点に行くだけでは面白くないので、往路は途中下車してみよう。
竜ヶ崎線唯一の途中駅入地へは、起点からたった3分で到着となる。


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「ええぇー!何ここぉー!千と千尋の駅みたいー!」


女子高生の戯言をよそに私は一人列車を降りた。
どうやら、この駅では切符の集札をしないらしい。
乗客を降ろすとすぐにドアが閉まり発車していく。

(↑ちなみに千と千尋に出てくる鉄道は「海原電鉄」というそうです。”電鉄”なのに非電化というヘンテコ設定)


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「プァーン!ガタンゴトンガタンゴトン………」


降りたのは私一人だけで、取り残された感が半端ない。
ここは一応東京近郊なのに、何なんだこの寂れきったローカル感覚は………。

旧型気動車は発車するとエンジンを唸らせ、警笛を鳴らしながら農村の中に吸い込まれていった。


入地駅

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入地駅ホーム上には、ゴツいコンクリートの待合室がある。
ノスタルジックでこじんまりとした佇まいが良い感じだ。


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駅名票もちゃんとあるが、錆びに錆びてボロボロ。
味があるのを通り越してホラーじみてるのは気のせいか(苦笑)


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入地駅は集札が行われない代わり、ホーム上に「きっぷ入れ」なるものが設けられている。
列車を降りたら箱に切符を投入すればいいとのこと。なかなか原始的である。
この錆びれきった箱に、入地駅切符利用者の全てが託されているのだ。

今気付いたが、佐貫駅では確か集札されなかったよな………。
てことは、「佐貫→入地」利用に限っては”キセル”が可能ということになる。
ホームには防犯カメラがついてるみたいなので、やれば即刻捕まるだろうが。


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入地駅の全景はこんな感じ。
辺りは農村地帯だが、駅周辺には小さな集落がある。
かつてこの駅には列車交換設備があったらしく、左側の空き地はその名残だろう。


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入地駅探索を終えて間もないところで、早くも折り返し列車がやって来たので撮ってみた。

さて、入地からは一駅隣の竜ヶ崎へ向かって徒歩で到達してみよう!
できる限り線路沿いの道路に沿って東へ進んでいくことになるのだが、
歩行距離は2kmちょっとなので、そんなに大した距離ではないし簡単に行ける。



竜ヶ崎線は毎時二本と本数は割と多いので、どうせなら”撮り鉄”も兼ねてのんびり探索していこう。


入地駅~竜ヶ崎駅(徒歩)

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入地駅からしばらくは線路に沿った道がないので、一旦南側の道路へ出た。
今となっては珍しい蒸機記号の踏切標識が掲げられた踏切を渡ると、線路沿いの道路へ合流する。


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この辺りはまだ農村なので、何処から撮っても絵になるから素晴らしい。
コンデジにして精一杯のズームを使い、鉄道写真らしい角度から撮影ができた。


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なんだか、ここはローカル好きにはたまらないシチュエーションだなあ~。
周りは何も無いし空気も草と土の匂いしかしない。だがそれが良い。
田園地帯の向こうに見えるのは龍ヶ崎中心街だ。
龍ヶ崎は江戸時代に商業都市として栄えた地域である。

線路沿いに道を延々と進んでいくと、次第に住宅が多くなってきた。


門倉停留場跡

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再び線路沿いの道が途切れるところで、何やら興味深い空き地を発見!
かつてあったという門倉駅の跡地だ。
近くに跡地だということを示す案内看板があったが、無残なことに壊れている。
拾って内容を確認してみると、看板には以下の概要が記されていた。


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「門倉停留場は竜ヶ崎線開業時に設置され、鹿島参宮鉄道時代の昭和32年(1957)に廃止されるまでの57年間、門倉地域の生活拠点として利用されていた単式1面1線の無人駅でした。」


門倉駅が廃止されたのは半世紀以上も前のことで、遺構らしきものは正直何も残っていない。
後発客のため目に付く箇所へ看板を置いた後、再び道を東へ進んだ。


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竜ヶ崎が近づくと線路は住宅の中に入り、パチ屋のすぐ横をかすめるようにして続いている。
パチ屋の奥には地元のショッピングセンターがあり、線路向かいのところには駐車場がある。

このショッピングセンターと駐車場を結ぶ跨線橋では、竜ヶ崎線の車両基地を拝むことが可能だ。


竜ヶ崎線車両基地

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ショッピングセンター直結の跨線橋から拝める、竜ヶ崎線のこじんまりとした車両基地がこれだ。
実にいい味出してるのが、トタン屋根の車庫!昭和の時代そのまんまの建造物である。
ここでまた、竜ヶ崎線の列車が通過していく。本日三度目の撮り鉄。

車庫に居座る新型車を尻目に、旧型車が元気に走っているのは微笑ましい光景だ。
平日は恐らく、あの錆びれきったトタン屋根の下で眠っているのだろう。
竜ヶ崎線の最古参車として、今後も末永く走り続けてほしいものである。


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再び線路沿いの道へ戻り、ノソノソ歩いていくと間もなく竜ヶ崎駅が見えてきた。
どうやら、竜ヶ崎駅は駅のすぐそばに車両基地を併設しているようだ。


竜ヶ崎駅

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竜ヶ崎、到達!


入地から線路沿いの道を歩くこと約1時間、竜ヶ崎線の終着駅竜ヶ崎へ無事到達した。
竜ヶ崎駅のロータリーは広く、タクシーやバス乗り場が併設する一大ターミナルとなっている。

実は当初の計画では、竜ヶ崎から路線バスを乗り継いで佐原や潮来へ行ってやろうと考えていたのだが、
バスの本数と時刻が絶望的に噛み合わなかったため、今回は断念した。
折り返しの列車ですぐ佐貫へ戻り、今日は潔く探索を終了する!


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竜ヶ崎駅構内は昔ながらの私鉄駅の雰囲気を色濃く残しており、昭和の匂いがムンムンするぞ。
ほの暗い照明、有人改札、プラスチッキーな椅子、黄ばみきった時刻表看板。
ICの簡易改札機が無ければ、昭和ノスタルジー映画のセットのようである。

駅構内を観察した後、椅子に座って待っているとゾロゾロ待ち人が増えてきた。
さすが伊達に黒字路線を誇っているだけあって、需要はなかなかのものだ。
IC対応してるのに普通切符を買う人が多いのも意外や意外。
やがて列車到着時間が近づくと駅員から一声かかり、改札が始まった。


関東鉄道竜ヶ崎線 [竜ヶ崎~佐貫]

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龍ヶ崎は古くから水運の商業都市として栄えた街だが、この地に何故あの常磐線が通らなかったのだろうか?
それは、常磐線が当時水戸以北で採掘される石炭の輸送に最大の主眼を置いてたからだ。
東京~水戸間を出来る限り短距離で結ぶため、龍ヶ崎は常磐線の経路から無視されてしまった。
これに対し地元有力者が発起して、龍ヶ崎市街~常磐線を結ぶ連絡路線として竜ヶ崎線は誕生したのだった。

この路線誕生の経緯は、同じく常磐線の経路から外れた流山と馬橋(常磐各停)を結ぶ流鉄流山線と酷似している。
幹線鉄道から外れた町村を結ぶミニ路線はかつて全国各地に沢山あったというが、
そのほとんどは現在バス転換されるか廃止されている。
竜ヶ崎線は元来の連絡路線の役割を担う鉄道として今も健在しており、そういう意味では貴重な存在だ。

復路の佐貫行きは、往路と同じく乗客が老若男女多種多様だ。
発車時間になるとメロディが流れ、ドアが閉まり発車。佐貫までたった7分の道のりである。


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素朴な田園風景を単行気動車がひた走っていく。
龍ヶ崎の中心市街を離れると、車窓に広がるのは懐かしさ一直線の眺めだ。
唯一の途中駅入地では、やはりといっていいか誰も降りなかった。
この路線はあくまで龍ヶ崎市街と常磐線を結ぶ連絡路線として機能しているのだ。

「ご乗車ありがとうございました。間もなく終点佐貫へ到着です」


やがて住宅地へ入るとアナウンスが入り、列車は終点の佐貫へ到着した。


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竜ヶ崎線の旧型気動車に別れを告げ、早々に乗り場を出る。
佐貫到着後は寄り道をせず、常磐線に乗ってさっさと帰路へ着いた。

・旅の総費用:運賃370円
・乗った乗物の数:鈍行2本
・旅の総距離/所要時間:約9km/約3時間


東京近郊ではなかなかお目にかかれない貴重な鉄道風景が、竜ヶ崎線には沢山残っている。
随所で昭和の雰囲気満載で、合理化の波がほとんど及んでない印象を受けた。
規模の大きい常総線はすっかりスマートになってしまったが、対し竜ヶ崎線は昔のまんまって感じだ。

皆さんも週末ふと思い立ったら、限定運用の気動車で竜ヶ崎線を探索してみては如何だろうか。

(完結)

コメント

  1. 関鉄書房 より:

    渋い 気兼ねない手ごろな旅でしたね

  2. なまらゆうと より:

    関鉄書房様、コメントありがとうございます。

    竜ヶ崎線は地味ですけど意外と見所ありましたね。
    シンプルの極みですが、それが逆に新鮮でした。

    日常レベルでも、自分が見出せば「旅」になると思ってます。

  3. 匿名 より:

    懐かしい。80年代の初めに龍ヶ崎の高校に通っていたので竜ヶ崎線のお世話になりました。
    当時、写真に載ってる小さな蒸気機関車が本文中に記述のあるトタン屋根の車庫の中に鎮座し開口部からひょっこり顔を見せていて駅に入ってくる車両と乗客を迎え入れていました。
    ざっと見、佐貫駅の木造の駅舎、崩れかけたホームが新調された以外は変わってないですねー。なんだかわからないですが安心しました

  4. なまらゆうと より:

    名無し様、コメントありがとうございます。

    竜ヶ崎線で通学されてましたか。今もバリバリ健在ってところが良いですね。
    80年代の時点でSLは残ってたんですか。トタン屋根の主だったと。
    竜ヶ崎線は常総線と比べても、ときのとまったような印象を受けました。
    リアルタイムで通学されていた方が仰るのですから、間違いないですね!

  5. 俺も名無し より:

    常磐線沿線の者です。
    竜ケ崎線には何回か乗っていますがあらためていいですね。

    コロッケそばは頂いたでしょうか?
    次回訪問する際は食べてみて下さい。
    龍ケ崎はコロッケで町おこしをしているんですよ。
    10月2日、コロッケフェスティバルが開催されるとのことです。

  6. なまらゆうと より:

    名無し様、コメントありがとうございます。

    コロッケとは、意外です。茨城はラーメン王国ってイメージがあって、
    よくつくばにラーメン食べに行ってますが、コロッケは予想外!
    今度また行ったときにありついてみたいと思います。

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