山万ユーカリが丘線の旅

「未来派ボナが計画都市を駆ける」

[2015/2/12]


漢のロマンを求めにとある駅へ向かおうと思う。

熱き男達の夢を叶えてくれる駅が千葉の佐倉にあるのだという。
何時になく空を切り続けてきた私だが「今度こそは!」と当たって砕けろで家を出た。


山万ユーカリが丘線


山万ユーカリが丘線。千葉県佐倉市にある、不動産会社によって運営されている新交通システムである。
地図上で円を描く謎めいた路線で、ずっと気になってたので今回訪問することにした。
この路線は松戸から電車を乗り継いで一時間半のところにある。

ユーカリが丘線は京成本線のユーカリが丘駅から接続している。
この駅は快速・普通と一部の特急しか停まらない。
新松戸からJRで船橋へ行き、そこから京成でユーカリが丘まで行きユーカリが丘線に乗り換える。
こじんまりとした通路を進んでいくと一昔前の自動改札機があった。
全長4.1kmにしか満たない、ミニ鉄旅の始まりだ。


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下調べしていて思ったのだが、山万ユーカリが丘線は屈指の「珍」路線といえる。
まず運営してるのが鉄道会社ではなく民間の不動産会社なのだ。他ではまず見られない。
あと運行形態が独特で、ラケット状のかたちをした線路を列車が一方通行で走っているのにも注目したい。


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大人と小人、200円と100円。


運行区間が短いので運賃は一律200円。ボタンも大人用と子供用の二つしかない。
シンプル過ぎて突っ込みどころに困るよ。
改札に切符を投入すると「ウィーーーン!」と、すっとぼけたような機械音が唸った。
ここの自動改札機は見た感じ相当な年代物だ。当然SuicaなどのICカードは非対応である。


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乗り場へ上ると列車が到着していて、今にも発車しそうなのでさっさと乗り込んだ。
3両編成で、車体にはコアラのイラストが描かれている。
私が乗り込むと同時に、ユーカリが丘線の小型列車は発車した。

日中なので車内はガラガラ。乗客は沿線の地元民が全てを占めていると思われる。
発車すると真新しい町の中を進んでいくが、緑も多くニュータウンらしい光景が広がる。

お目当ての駅は起点から5分で到着となった。


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女 子 大 。


すいません、こういうオチです(笑)

女子大とは何なのか。こんな直感的に訴えてくる駅名も珍しい。
きっと駅前には華々しい女子大があってあとはどうにもこうにもなってしまうんだぜ。


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しかし、現実は非情である。

駅は無人。駅前は二車線の道路が横切っており、向かい側には女子大じゃなくて小学校があった。
辺りに広がるのは何の変哲もない新興住宅で華の女子大など見当たらない。
実は駅から遠くにあるんじゃないか??と思って案内看板を探してみるが、見つからず。
女子大行きのバス停とか、そういう類のものも一切ないようだ………。

当たって砕けるどころか、砕けるための材料すらなかったw

「女子大」なのに、女子大がない。

じゃあ何故ここは「女子大」なんて駅名がついてるのか?
その謎を紐解くには、ユーカリが丘線とユーカリが丘ニュータウンの概況を知る必要がある。


ユーカリが丘線の概況

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「田園の向こうに超高層マンションが聳える(女子大駅にて)」

関東初の新交通システムとして山万ユーカリが丘線が開業したのは、今から30年以上も前のことだ。
鉄道のノウハウを知らない不動産会社が鉄道を開業させることに、運輸省は難色を示したという。
しかし山万の「鉄道を走らせる熱意」は並々のものではなく、無事に認可を得て1982年に開業している。

町は通常、鉄道が敷かれたところから放射状に発展していくが、ユーカリが丘ニュータウンの場合は逆だ。
鉄道を町の一つの価値として、総合的なコンセプトの一要素として走らせる主旨が元からあった。
つまり、一つの町を便利にさせたいだけに山万は鉄道を建設したのである。
根深い土地・輸送事情に基づいて建設される鉄道において、これは珍しいことだ。

路線の成り立ちだけでも珍要素に満ちているが、極めつけなのは大雑把すぎる駅名である。
開業当時は町が発展途上で何もなく地名そのものがなかったこともあって、
駅近に建設される予定だった施設をそのまま駅名にしてるのだが、インパクトは絶大。
ということで、以下にユーカリが丘線の全駅名を列挙してみた。

・ユーカリが丘
・地区センター
・公園
・女子大
・中学校
・井野


……どう思いますか、皆さん。駅名らしいといえるのは「井野」ぐらいか。
当時ここら辺は農村地帯だっただろうからネーミングセンスが問われたと思うが、
それにしたって駅名としてはドストレートすぎないか?w
無駄な形容や固有名詞を使ってないところに潔さすら感じられる。

ぶっちぎりで気になるのは「公園」「女子大」「中学校」の3駅だ。
このうち「公園」と「中学校」については建設が実現し駅名の由来が保たれているが、
問題となるのが「女子大」で、こちらについては移転誘致に失敗し建設は実現していない
駅近に女子大を建てる予定で名前を当てたはいいものの、駅名だけが一人歩きする結果となっている。

「女子大」という響きに誘われるのもいいが、駅前には何もないから注意されたし!


「癒し系×鉄オタ×芸人:鈴川絢子さんのユーカリが丘線紹介動画」


私の画像と文章ばかりではムサ苦しいと思うので、ここで清涼剤としてYoutubeの秀逸動画をご覧頂こう。
千葉北西出身の芸人で鉄オタでもある、鈴川絢子さんの紹介動画を貼ってみた。
某番組の「かわいすぎる女芸人」ナンバーワンに輝いた御方である。

これまで鈍行で各地に出向いてきたが、彼女みたいな可愛い鉄子は正直一度も見かけたことがないぞ……。
鉄オタ芸人なのに、タモリ倶楽部に一度も出てないってのも意外。


沿線探索

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女子大駅のすぐそばにはユーカリが丘線の車両基地がある。
車両は3編成が在籍しているが、日中は一編成のみで運行されているようだ。

この路線は「VONA(ボナ)」と呼ばれる独自の運行方式が採用されている。
線路の真ん中に案内軌条を設け、それを両脇からローラーで挟み込んで走行するというものだ。
新交通システムは線路の両脇に案内レールが設けられることが多いが、
ユーカリが丘線は中央に案内レールがあり現役の新交通としては国内唯一の方式となっている。


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通しで乗っていても面白くないので、女子大駅から中学校駅まで歩いてみることにした。
公園駅から中学校駅にかけては長閑な田園風景が広がっている。

田園の道は住民の憩いの場となってるらしく、散歩やランニングで利用する人が多いようだ。
通りすがり地元のおじさんが「撮影ですか?」と食いついてきたので、
ユーカリが丘線についてちょっと話を伺ってみることにした。


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ユーカリが丘線のうんちく (by地元民)


・沿線の年齢層は南側(ユーカリが丘方面)ほど若者が多く北側(中学校方面)ほど高齢者が多い
・昔から住民入居数と年齢層をコントロールし各地域に合わせた町づくりが進められてきた
(ex.高齢者が多い中学校駅近くに老人センターが建設予定)
・開業から33年間、事故を一度も起こしてないらしい
・地元で祭りをやる日は運賃が無料になる
・一日数本だけ女子大止まりの列車がある(←「女子大行き」ってことか?w)
・雪に弱く、雪が降ると運行が麻痺/運休となるのがデフォ
・冷房が一切ついてないので夏は窓全開
・3編成の列車を写真一枚に収められる時間帯があるらしい


おじさんの地元愛感半端なかったが、ユーカリが丘線は町のための鉄道だとひしひし伝わってきた。
列車を撮影した後は真っ直ぐ中学校駅へ向かった。


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静かな住宅街を進んでいくと、スーパーマーケットの裏にこじんまりとした駅があった。
中学校駅はユーカリが丘線の中でも利用客が多く、地元民が続々と駅へ入っていく。
由来通り、駅を出てすぐのところには中学校があった。

ここからは復路ということで4駅隣のユーカリが丘へ向かおう!


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ホームでしばらく待っていると、「こあら3号」がヘッドライトを照らしてやってきた。

ユーカリが丘線の車両は1000形と名乗っており、各編成には「こあら1号・2号・3号」と名付けられている。
開業当初の1982年から走ってる車両で曲線と丸みを多用したデザインに時代を感じる。
ユーモラスな一枚顔が昔のSFロマン的な意匠で面白い。


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公園~中学校間は田園の横を進んでいくが、中学校から先は切通しになっている。
切通しを抜けるとまさかのトンネルに突入。短い路線だが道のりは波乱万丈だ。

トンネルを抜けた先は急勾配を駆け上がり、井野に到着する。


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「次は、こーえん、こーえんでーす」


「ここが地元なのあたし!」といった感じの、舌足らずな女性自動アナウンスがちょっと気恥ずかしい(笑)
故郷札幌の地下鉄もユーカリが丘線と同じ中央案内軌条だったから、個人的には懐かしい乗り心地だ。
車内は少し狭いが居心地はすこぶる良い。窓には手厚いカーテンもついている。

井野から先で片一方の線路と合流し、公園に着く。
公園からは高架の上をひた走り、あっという間に京成と接続するユーカリが丘に到着した。


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起点のユーカリが丘駅は広々とした駅構内が特徴的だ。
丸っこい小型列車に別れを告げ、京成の快速に乗って帰路に着いた。

ユーカリが丘ニュータウンは今後も様々な開発・整備を行っていくそうだ。
時代の先を見据えた町開発は、虫食い状態に住宅が建てられがちな典型的市街地とは対照的だ。
ラケット線内にあった手がつけられてない里山や田園も一見ただ寂しいだけのように見えたが、
あそこも実は山万の計画で保持されている憩いの場であるというのは、訪問してから何となくわかった。

ただ食って寝るだけの住処としてじゃなく、住民に愛されるために計画された都市と鉄道。
女子大駅ホームの後方で展開するリアル・シムシティーのような箱庭風景美は一見の価値あり。
漢の願望としてだけでなく、皆さんも計画都市のロマンを求めにユーカリが丘線に訪れてみては如何だろうか。

(完結)

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