鶴見線の旅

「大都会の中のローカル線」

[2013/4/13]


北海道の旅からまだ一週間しか経っていないが、早くも次の旅を計画する。
とはいえ何日も休みをとる余裕はもうないので、通学帰りにどこか手短に行ける場所を探してみる。
それで、まず思い立ったのが鶴見線だ。
定期圏から30分ぐらいで行けるので、早速ダイヤをチェックして行ってみることにした。

夕方、京浜東北線に乗って鶴見へ向かう。
鶴見駅に到着し、ホームの階段を上がってすぐ横のところに鶴見線の改札があった。
205系3両編成での運転だ。平成生まれの自分にとって、205系は正に電車の基本イメージみたいなものである。
特に物珍しくもないので、さっさと列車に乗り込んだ。


鶴見線 [鶴見~海芝浦]

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運河沿いをゴトゴト走り、やがて列車は終点の海芝浦駅に到着した。
ホーム脇はすぐ海になっている。
この駅は東芝の敷地内なので、一般客は駅から一切出ることができない。

ここまで片道僅か10分ほどの道のりであった。
旅というには短すぎるかもしれないが、実際終点に着いてみると他とは全く違う非日常感に溢れていて面白い。


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対岸に大きなコンビナートや首都高の橋が見える。
夜になると夜景も綺麗らしい。


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折り返しの列車に乗って、今度は鶴見線のもう一つの見所といわれる国道駅で降りた。
昭和初期に建設されたこの駅は、今も改築が行われていないため当時の面影がそのまま残っているのだという。


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駅構内へ降りると、見れば見るほど独特な薄暗い空間が現れた。
高架下がそのまま通路になっているのだが、まるでここだけ時が止まってしまったかのようである。


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立脚はアーチ状になっていて、いかにも当時の雰囲気といったつくりだ。
まだ外は明るいのだが駅構内はかなり薄暗く、年季を帯びたコンクリートの床が鈍い光沢を放っている。


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改札付近だけは蛍光灯があるので明るい。無人駅だが、古い木製の改札口が今も残されている。
よく見ると、ホームに向かう階段と立脚が上手く入り組んでいて面白い。
改札を出てすぐのところに焼き鳥屋が一軒あった。


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灯りも未だに昔ながらの裸電球が使われている。
剥き出しの姿がかなり生々しく、戦前にタイムスリップしてしまったような気分になる。


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外から駅入口を見る。
中は濃密な闇に支配されていて、まるで別世界との境界のようである。


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壁面には、第二次大戦中に受けた機銃掃射の跡が残っている。
コンクリートは朽ちかけており、防護用にネットが張られている。
未だにこんなものまで残っているのがすごい。


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通路両端の2つの入口の他、通路脇に細い抜け道が一つあった。
果たして、これが駅の入口だと言われて俄かに信じる人はいるだろうか。
通路横の部分はかつて住居として使われていたらしいが、今は人のいる気配は全くなく半ば廃墟と化している。


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散々探索した後、国道駅から歩いてすぐのところにある京急の花月園前駅に向かった。
あとは京急に乗って品川まで行き、そのまま帰路へ着く。
総じて1時間強の短い旅だったが、圧倒的な非日常感とタイムスリップ感を体感できた。

ディープでマニアックな鶴見線といわれるが、実際に訪れてみると他には見られない発見があって面白い。
個人的には、国道駅の醸し出す雰囲気が圧倒的だった。
駅周りはありふれた住宅街であり、その異空間ぶりがやたら際立っていたのである。

(完結)

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