「千葉北西~お台場到達の最短距離ルート」
[2015/6/1]
今日は休日で予定なかったから日帰りで乗り鉄でもしようと目論んでいたが、
前日までの疲労に甘えてしまい二度寝を繰り返して大寝坊。
気付けば正午を過ぎていた。
「こんな中途半端な時間からどこ行けばいいんだ?」と嘆いたが、もう仕方あるまい。
何もしないまま一日が終わるのも嫌なので、ミニ鉄旅のルートを即席で立ててみた。
お台場最短距離到達作戦
今回急遽立てた乗り鉄ルートはこんな感じ。名付けて「お台場最短距離到達作戦」!
自宅最寄から公共交通でお台場へ向かう”最短ルート”を編み出してみたという、完全に自己満100%の行程だ。
旅の起点は新松戸。ここからまず常磐線に乗って金町へ向かう。
金町からは京成金町線で京成高砂へ行き、京成線・都営浅草線を使って浅草へ。
そして浅草で東京都観光汽船の水上バス「ホタルナ」に乗り継ぎ、目的地お台場へと達する。
お台場までの所要時間は約2時間。船に乗るので、最短距離だが結構時間がかかる。
お台場といえば夜景なので夕方16時に家を出た。
常磐緩行線 [新松戸~金町]
常磐線各駅停車で、まずは金町へ。今回お世話になったのは千代田線の名車6000系。
地下鉄車両で窓が小さく景色が見えないので子供の頃は毛嫌いしていたが、省エネ車両としての実績や、当時としては先進的なデザイン(非対称)など、評価されるべき名車の一つであることを大人になって知った。
脇に貨物線がズラッと並ぶ金町駅。ここは東京最東端の一角である。
年季の入った改札を出て京成電鉄の駅へ向かう。
JR金町駅の南口ロータリーを歩いてすぐのところに、京成金町線の駅はある。
このごった煮感が「下町路線の駅」って風情を醸し出していて、昔から印象に残っていた。
京成金町線 [京成金町~京成高砂]
京成金町線は、常磐線と接続する金町から柴又を経て京成高砂へ至る小さな路線だ。
都内のローカル線といってもいいだろう。全長たったの2.5kmで、起点~終点の所要時間は僅か5分。
全線単線で途中駅は一駅のみ。
少し前までは本線直通の列車もあったが、現在運行されているのは同線を往復する鈍行のみだ。
地元ローカル色が濃厚な金町線の大元は、1899年に金町~柴又間で運行を開始した帝釈人車鉄道である。
大昔から沿線にある柴又帝釈天の参拝需要があったため、客車1両を人力で動かす人車軌道が開業したのだった。
後1913年には電化開業し電車での運行を開始。受け持ったのはもちろん現在の京成電鉄である京成電気軌道だ。
狭苦しい街中に建てられたホームに停まっているのは、京成の古参車3500形。
72年のデビューで、導入から40年以上経過しているが今も現役で活躍中だ。
駅外から列車を観察した後、発車時間が迫ってきたので切符を買って改札へ。
ホームは地上にあり改札からそのまま直結しているのが私鉄らしい。
列車は4両編成。座席は地元客で埋まっており手堅い需要を感じさせる。
16時22分、高砂行き鈍行は定刻通り発車する。
金町からしばらくは道路と道路に挟まれた直線区間をすっ飛ばして進むが、これは人車時代の名残だ。
この柴又街道の直線を抜けると、列車は僅か2分で柴又へ着く。
寅さんのロケ地にもなった柴又は、元旦になると柴又帝釈天目当ての参拝客で賑わう。
名物は草団子と醤油煎餅で、元旦参拝時は毎回買って帰るから自分にはお馴染みの味だ。
駅舎も味わい深いものがあり、途中下車する価値がある駅である。
16時27分、金町から僅か5分で終点高砂へ到着。ここで京成本線に乗り換える。
金町線は他の路線と孤立しており、改札も別々になっているようだ。
乗り換え対応の改札で一旦外へ出たら京成本線の改札に向かい、再び切符を通してホームへ降り立つ。
京成線/都営浅草線 [京成高砂~浅草]
京成高砂からは京成本線だ。青砥までは本線、青砥から押上までは押上線を経由する。
都心から千葉へ至る京成線の中でも、京成高砂~押上間は鉄にとって眉唾モノの区間。
北総線・京急・都営浅草線など、様々な路線の列車がひっきりなしに乗り入れてくるからだ。
高砂到着から8分後、やってきた羽田空港行きは「C-Flyer」こと9100形。
千葉ニュータウン鉄道所有の車両で、かつて公衆電話が付いていたことで知られる。
京成高砂から列車は下町を進んでいく。私鉄らしく駅間距離は短い。
僅かばかりに設けられたクロスシートがあったので、そこに座った。
四ツ木を出ると、列車は広大な荒川を渡っていく。
「次は押上、スカイツリー前。東武線、東京メトロ半蔵門線はお乗換えです」
そうアナウンスが入ると右手にスカイツリーが見えたが、角度的に一瞬だけだ。
チラッと見えたところで列車は地下へ突入し、都営浅草線へ入った。
本所吾妻橋を過ぎると、列車は浅草へ到着する。
およそ10年ぶりに乗った「C-Flyer」に別れを告げ、私は地上へ出た。
浅草/吾妻橋交差点
観光天国、浅草。ここは東武鉄道の起点だが、他にも銀座線、都営浅草線が乗り入れている。
国道6号と都道463号が交差する吾妻橋交差点は浅草の玄関口といえる。
東武の駅舎は随分様変わりしてしまったようだ。
「東武電車」と掲げられていた看板が取り払われていて、小奇麗に改装されていた。
スカイツリーが出来てから東武は大きく変わった。オサレになっちまった。
関東圏で「○○電車」って名乗ってたのは東武ぐらいじゃないか??
吾妻橋交差点の横には、浅草名物の吾妻橋が架かっている。都内屈指の景勝地だ。
橋から見えるのは、スカイツリーとアサヒビール本社隣接ホールのオブジェ(通称う○こビル)だ。
ひとまず吾妻橋で今回の主役がやって来るのを待つことに。
到着時間が近づくと、隅田川に一際目立つ“未来派汽船”が現れた。
ホタルナ/ヒミコ
今回、しがない即席ミニ旅を牽引してくれる水上バスのお出ましだ。
漫画から出てきたようなこの船は、名を「ホタルナ」「ヒミコ」という。
松本零士がデザインを手がけた、東京都観光汽船の名物汽船である。
「ヒミコ」に続いてやって来たのが、私がこれから乗る「ホタルナ」だ。
「ヒミコ」はデッキが付いてないが新型の「ホタルナ」にはデッキが付いている。
どうせ乗るなら展望デッキ付きの方がいい。
デザイン的には「ヒミコ」の方がスマートでカッコいいかもしれないが。
お目当ての船が寄港したので、吾妻橋脇の水上バス乗り場へ向かった。
東京都観光汽船 [浅草~お台場海浜公園]
隅田川~東京港の定期航路を運航している東京都観光汽船は、水上バスの元祖として知られる。
水上バスとは河川・湾岸地域を運航する船舶のことをいい、海外では「Water Bus」と呼ばれている。
隅田川で乗合汽船の運航が始まったのは19世紀末からで、当時は移動手段として重宝されていたという。
旅客水運はとっくの昔に衰退したが、今は観光資源として着目され運航されているところがある。
東京都観光汽船はその一つというわけだ。同社は計6つの路線を持っている。
6つの路線の中でも、「浅草・お台場直通ライン」はホタルナ・ヒミコのために用意された専用航路だ。
浅草からヒミコは豊洲へ向かい(一部はお台場止まり)、ホタルナは日の出桟橋を経由してからお台場へ向かう。
これから私が乗るのは、浅草・お台場直通ライン「ホタルナ」のお台場海浜公園行きだ。
出発時刻が近づくとゲートが開き、乗船となる。
宇宙船チックなガルウイングドア(←上に開く扉のこと)をくぐり、ホタルナの船内へ。
意外と内部は落ち着いたインテリアとなっており、大人の上質感を漂わせている。
上半分がガラス張りなので開放感抜群。船特有の息苦しさは皆無だ。
17時30分、ホタルナは浅草を出発する。定員はほどほどだが端の座席は八割方埋まった。
見かけは宇宙船だが動力はディーゼルエンジンだ。乗船場から船体を離すと、
ホタルナはエンジンを轟かせ隅田川を南下し始めた。
船は道中いくつもの橋をくぐるが、くぐるたびに毎回橋梁についての案内が行われる。
橋の下通過時は橋脚が間近に見放題で橋脚萌えにはたまらないかもしれない。
鉄にとって見逃せないのが総武線の隅田川橋梁。
今日は運が良いらしく、ホタルナがくぐるときにちょうど列車が通った。
九割方“橋の解説”になってしまっている観光案内は「銀河鉄道999」の鉄郎・メーテル・車掌がやってくれている。
コアな橋梁の解説は退屈に聞こえるらしく、皆ろくに聞いてない模様。
豊洲方面の河川合流地点を抜けると、右手に東京中心部の高層ビル群が見えてきた。
ここから高層ビルが多くなり、車窓が少しずつ様変わりしてくる。
高層ビルと巨大な橋の絡み合いが連続する様は、圧巻の一言。
普段、原始的なローカル鈍行ばかり乗ってる自分には刺激の多い車窓だw
巨大橋梁の向こうに聳える超高層ビル郡。その上にはさらに巨大クレーンがある。
こういう構図たまらない。AKIRAに出てきそう。
「うわあ、何か川幅が広くなってきたよ?」「東京港に入ったのよ」
メーテル曰く、ホタルナは東京港に入ったらしい。
海上には境界線がないから何処から東京港なのかよくわからない。
この辺りでようやく、橋をくぐる際の安全上の理由からだろう、閉鎖されていた展望デッキが開放された。
東京港入ってすぐのところでは、右手に東京タワーを拝むことが可能だ。
高層ビル群に没した”昭和の象徴”が斜陽の中に佇んでいる。
「メーテル、あっという間に着いちゃったよ」
「そうね、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうものよ」
メーテルがサラッと名言を放つと、ホタルナは途中駅の日の出桟橋に到着した。
ここから船は南東へ進路を変え、カップルの聖地お台場へ向かう。
日が暮れかける中、ホタルナはお台場向けて出発する。
日の出桟橋を出たホタルナは、間もなくしてレインボーブリッジをくぐる。
言わずもがな、お台場が誇る有名な大橋だ。
虹橋ブランドは相当なもので、近づくと記念撮影の集中砲火が始まった。
正午起きで即席計画した鉄旅で拝めたものとは思えない、奇跡的空模様。
お台場に来れば、こうもドラマティックな展開になっちまうのか。
瀬戸大橋と同様、この橋も一応「吊り橋」だという。
二階建て構造であり、上層には首都高11号、下層にはゆりかもめが通っている。
“封鎖できません!”で有名な橋だが、荒天やイベント時には当然封鎖される。当たり前のことだが。
レインボーブリッジをくぐると、ホタルナは島式防波堤の横を通り終点へ向かう。
前方にはお台場の名物、フジテレビ本社が見えてきた。
どうやら、お台場の乗船場はフジテレビ本社前にあるようだ。
ここまで来れば目的地は眼と鼻の先である。
お台場、到達!
18時35分、ホタルナは終点のお台場海浜公園へ到着した。
暮れなずむ大都会をバックに停泊する姿を見ていると、SFの世界にでも来た気分だ。
せっかくなので、今日は夜景を拝んでから帰るとしますか。
さすが松本零士が手がけただけあって、何処から見ても映える「ホタルナ」の流線形デザイン。
久しぶりにカメラのアートフィルター機能を使ってみたら、嘘みたいにカッコよく写った。
お台場海浜公園
夜景を見るのが目的なので、日が暮れるまで近くの喫茶店で時間をつぶすことに。
辺りは大型SCが立ち並んでおり、その後ろにはフジテレビ本社が控えている。
ある程度時間をつぶしたところで、夜景を拝める展望ポイントへ移動。
日が完全に没すると、大東京の夜景が姿を現した。
ギラギラ輝くレインボーブリッジと高層ビル群。バックで赤く光っているのは東京タワーだ。
お台場は東京屈指の夜景スポットで海外から高く評価されている。
実際、夜景を撮影しているのは外国人ばかりだ。
・旅の総費用:通常運賃2100円
・乗った乗物の数:鈍行3本・船舶1艘
・総距離/所要時間:約30km/約2時間
夜景を撮影した後は、近くにあるりんかい線の東京テレポート駅へ向かい、帰路へ。
行きは2時間かかったのに帰り(りんかい線&京葉/武蔵野線)はたったの50分。
水上バスを旅の移動手段として旅程に組み込んでみるのも、なかなか乙だ。
即席決行にしては割と充実した探索が出来たと思う。