「屈辱の初18切符旅 (上野~新潟~青森~秋田)」
[2012/8/30~9/1]
18切符の旅は初めてだ。一泊二日で青森へ行き、五能線で白神山地を周遊する計画である。
青森で何処か観光しようと考えたが、東北の列車の少なさにまかれると何もすることができない。
例え幹線だろうと、秋田以北の列車の少なさや接続の悪さは事前に把握しておく必要があった。
計画~導入
1日目は夜行列車「ムーンライトえちご」に乗って新潟へ。
早朝新潟に着いたら、18切符旅の定番である日本海ルート(白新線~羽越本線~奥羽本線)を使ってひたすら北上。
夕方弘前へ到着したら一泊となる。
2日目は五能線に乗って、白神山地の見所の一つである十二湖へ。
十二湖を観光したら再び五能線に乗車し、秋田から寝台特急「あけぼの」に乗って帰路に着くというのが主な行程だ。
心底不安な気分のまま、夜22時に自宅を出て上野駅へ向かった。
高崎線 [上野~高崎]
実は、最初から「ムーンライトえちご」に乗るつもりはなかった。
新宿からムーンライトに乗ってしまうと、途中で日付を跨ぐため18切符が2枚必要となるためだ。
千葉からだと新宿まで行くのに少し時間がかかるし、ちょっともったいない。
そこで18切符の使用枚数を抑える裏技があるのだが、鍵となるのが日付変更時間だ。
まず通常運賃を支払い、上野からムーンライトの一つ先を行く普通列車(985M)に乗って高崎へ向かう。
高崎はムーンライトえちごが日付を跨いで最初に停車する駅だ。
つまり、高崎から乗車ならギリギリ日付を跨がず18切符1枚で済むのである。
上野からの場合、「23時7分発新前橋行き」がムーンライトの先行列車に該当する。
ということで、上野から北鴻巣までの切符を買い、新前橋行きの普通列車に乗り込む。
「何故北鴻巣までなのか?」というと、23時7分発の普通列車は北鴻巣寸前で日付を跨ぐため、そこから先は18切符の使用区間に入るからだ。
高崎到着後は改札で北鴻巣までの切符と18切符を見せればいい。
この方法は、東京側からムーンライトえちごに最も安く乗車する裏技である。
高崎まで2時間弱。
もう旅は始まっているが、くたびれたロングシートに座ってるのはあまり心地よくない。
古参車両211系の車内は酒臭かった。
ムーンライトえちご [高崎~新潟]
高崎に着いてしばらくすると、ホームに夜行列車「ムーンライトえちご」が入ってきた。
早速乗り込んで落ち着きたいところだが、まずは改札で切符に印を押してもらう必要がある。
考えることは皆同じなのか、僕と同じぐらいの学生がワラワラ印をもらいに来る。
この裏技は知れ渡ってるらしく駅員さんも手馴れた対応だった。
18切符に最初の印を入れてもらったところでホームで一服したのち列車に乗り込んだ。
混み入った中を辿り自分の座席を見つけるが、面倒なことに窓側の乗客に占領されている。
二席まるごと使って熟睡している。そっと起こしてどいてもらうと気まずい空気が漂った。
高崎から乗る人なんて少数派だからこれはしょうがないか。
早朝5時前、ムーンライトえちごは新潟駅に到着する。列車を降りると慌しい雰囲気が漂う。
次乗る白新線の列車は5分後に発車してしまうからだ。
小走りで跨線橋を渡り村上行き快速列車に乗り込む。
白新線/羽越本線 [新潟~村上]
ガラガラの車内。左手に朝日を見ながら田園地帯を突っ走る。
ようやく本格的に旅をしてる気分になってきた。
約40分後、列車は終点の村上へ。
羽越本線 [村上~秋田]
村上からは気動車となり旅情を誘うが、その前に座席の確保が重要である。
3両編成のボックスシートなので混雑率が一気に上がるのだ。
列車を降りると我先にダッシュしていく人もいた。
ここからは絶景続きで、列車は日本海の縁をひた走って行く。
ディーゼルエンジンをふかしながらのんびり進む様はローカルムード満点だ。
約2時間半後、ディーゼルカーは終点酒田に到着。酒田では1時間強の滞在時間がある。
駅前から数分のところにコンビニがあるので、そこで朝食にありついた。
酒田からは再び電車である。それもオールロングシートの701系。
座席は新型車ならではの固いもので大体2時間ぐらいで尻が痛くなる。
車内は少しずつ空いてきた。
奥羽本線 [秋田~弘前]
秋田で約2時間休憩をとり再び鈍行に乗り込む。
ガラガラになってきたが、新潟からの乗客も少しだけ見かけた。
この区間もロングシートの701系。ただ車窓は完全にローカルである。
約2時間後、列車は大館に到着する。
ここには名物駅弁があると聞いたので買って食べてみることに。
花善の「鶏めし弁当」850円也。駅開業時(1899)から販売している駅弁だそうだ。
柔らかい鶏肉が沢山入っている。シンプルに味付けされたご飯もまた上手い。
大館は忠犬ハチ公の故郷だ。駅前には銅像があった。
渋谷のハチ公像は晩年の姿がモデルになってるらしいが、これは若い頃の姿のようだ。
青森までくると車内の雰囲気は完全にローカル一色になる。
途中で高校生がわんさか乗ってきたが、生粋の東北訛りで何を話してるのか全然わからない。
女子高生が「○○べさ」とか「○○だべ」とかで喋るのは、東京人にはちょっとした衝撃である。
弘前駅
夕方16時37分、列車は定刻通り終点弘前に到着。
ムーンライトで一睡もできなかったため眠くてしょうがない。
宿近くにあった弘前城を見学した後、そのまま宿に直行した。
翌日、起床した自分は目覚ましをセットし忘れていたのに気付いた。
時刻は午前10時過ぎ。乗るはずだった五能線の列車(9時32分発)が行ってしまったのである。
これからどうしようかと思ったが、まだ奥の手があった。
五能線を走る「リゾートしらかみ」は、観光向けに運行されている臨時快速である。
この列車は指定席券を買うだけで乗車でき、18切符でも乗ることが可能だ。
弘前でのブランクが多くなってしまうがもうこれ以外に選択肢はない。
みどりの窓口で14時35分発のしらかみ4号の指定席券を購入した。
リゾートしらかみ [弘前~秋田]
豪華列車「リゾートしらかみ」が、定刻通り弘前駅を発車した。
3両編成で、中間車両は個室形ボックス席、車端部には展望ラウンジが設置されている。
座席のシートピッチは足を目一杯伸ばせるほど余裕があり、510円足して乗れるものとは思えない。
車内はほぼ満席。シーズン時は指定席を取るのさえ困難な人気列車だ。
鳴沢を出ると海沿いの絶景車窓に差しかかる。
ここから約3時間、列車はずっと日本海すれすれを走っていくのだ。
しらかみ専用車は窓が大きく、怒涛の車窓を心行くまで味わうことができる。
観光列車なので景勝地に近づくとその都度案内が流れた。
厳しい日本海の景色は圧巻の一言だ。
弘前から2時間半後、列車は十二湖駅に到着。
もう夕方なので行く所は限られてるが、せめて青池だけでも見に行こうと思う。
青池
駅前からバスに乗り、原生林の中を歩いて「青池」に到着。
既に17時を過ぎており人っ子一人いない。
手を当てて拝むと、池の中から何か出てきそうである。
よく見ると、本当に”青い”池だった。
何故こんな青色になったかは科学者にも解明されていないという。
まさに神秘の池だ。
誰もいない原生林の道を歩く。
その後は最終バスの時間が来たので、急いでバス停に向かい十二湖駅へ戻った。
18時半前、最終バスは十二湖駅前に着く。
名物(?)のバス運転手が言ってた通り、夕日が綺麗だ。
夕日を眺めるうち、18時44分発のしらかみ6号がやってきたので乗り込んだ。
夜20時38分、しらかみ6号は終点秋田に到着する。
ここからあとは青森から来る寝台特急「あけぼの」に乗って帰るだけだ。
駅前にラーメン屋があったので入店。
夕飯にありついた後、ホームであけぼのが来るのを待った。
あけぼの [秋田~上野]
小さい頃憧れていた寝台特急に今回初めて乗車する。
“ゴロンとシート”の車両は人気があるらしく、中に入ると満席であった。
たまにガクっと大きな揺れがあり、ウトウトしてる間に東京へ近づく。
やがて朝6時58分、寝台特急あけぼのは終点上野へ到着した。
上野からは常磐線に乗って帰路へ着く。
「青池」以外、特に何処も行けなかった今回の鈍行旅は、どちらかというと失敗だった。
中途半端な行程に終わったし、列車待ち時間のブランクがあまりにも多すぎた。
五能線の鈍行に乗れなかったのが敗因だが、五能線の車窓は素晴らしいので、いつかまた鈍行で挑戦したいと思う。
初18切符にして屈辱を味わった僕は、帰りのあけぼのの車内で早くも次の18切符旅を計画したのだった。