飯田線乗り通しの旅

「日本アルプス周遊旅行 2日目 (穂高~松本~岡谷~豊橋)」

[2013/8/9]


早朝に山小屋を出て燕岳を下山し、再び穂高駅へ戻ってきた。
今日は、ここ穂高からアルプス沿いの路線を辿って静岡の方へ向かう。

大糸線から篠ノ井線、中央本線と乗り継ぎ、岡谷からは「偉大なるローカル線」と呼ばれる飯田線に乗車する。
各駅での乗り継ぎ時間が数分のみのところが多く、あまり油断出来ない。
かなりギチギチな行程だが怯まず乗り継いでいきたい。


大糸線 [穂高~松本]

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穂高駅前で大糸線の松本行き普通列車を待っていると、駅ホームに見慣れないディーゼルカーが停まっていた。


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2010年から地域の観光キャンペーンと合わせて運行が開始された「リゾートビューふるさと」の専用車両だ。
このハイブリッド気動車HB-E300系は臨時快速としてはかなり贅沢な仕様になっていて、座席のシートピッチがとても広いことで有名だ。

五能線の臨時快速「リゾートしらかみ」も同じ車両で運行されているが、とても快適だったのを覚えている。


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その後数分遅れて、松本行きの普通列車が到着する。
運用が激減した115系や211系を期待していたが、主力のE127系100番台がやってきた。
701系と見た目はそっくりで、内装もほとんど同じだ。

見た目で唯一違うところといえるのは、北アルプス側の座席がセミクロスシートになっていることだ。
甲高いモーター音をあげながら、終点松本に向かって突っ走る。


ワイドビューしなの [松本~塩尻]


今回の行程では、松本~塩尻間が鈍行だと乗り継ぎに時間がかかってしまうので、この区間のみ特急でワープすることにした。
振り子式車両の383系である。丸みのあるデザインが個人的には好きだ。
座席も快適だがのんびりくつろいでいる暇などなく、およそ10分程で塩尻に到着した。


中央本線 [塩尻~岡谷]

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塩尻からは中央本線に乗車。爽やかな長野色の115系だ。
113系と比べても、山間部を走る115系は険しい顔つきをしている。
長いトンネルをくぐり抜け、約10分で二駅隣の岡谷に到着。

ここから、長い長い飯田線の旅が始まる。


飯田線 [岡谷~豊橋]


岡谷駅は飯田線の実質上の起点になっている。
飯田線は全長約200kmもある長大なローカル線で、全線を走り抜ける列車は一日に数本のみである。
元々4つの私鉄を買収して1つの路線としたもので、全94駅もあり駅間距離も短い。
中央~南アルプスに挟まれた険しい地帯を抜けていくので、風光明媚な景色や秘境駅も多く見所満載の路線だ。

列車の本数が少ないので途中下車はしない。
このまま6時間ずっと、終点の豊橋まで乗車する。


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全線通しで使われる車両は日によって異なるらしいが、今回は313系2両編成での運転だ。
車内は地元民中心の平和な空気が流れていて、予想以上に混雑している。
正直、6時間ぶっ通しで走り続けるとは思えない雰囲気である。

12時28分、0番線から豊橋行きの普通列車が定刻通り発車した。


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起点の岡谷からしばらくは、のどかな風景が続く。
初めから険しい山間へは突入せず、人家の多い街中を抜けていく。


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急な勾配を上ったり下りたりを繰り返す。
その上急カーブが連続しているので、スピードは全く出ない。


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一眠りしてしまい、しばらくして目が覚めると車内が空き始めている。
少しずつではあるが、ローカル線らしい様相を呈してきた。


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そして乗車してから2時間半ぐらい経ち、列車は天竜橋駅へ到着。
沿線の大きな観光拠点の一つで、ここで大半の乗客が降りていった。


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天竜峡から、今度は本格的な山間部へと入っていく。


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天竜川の脇を縫うようにして進む。


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この辺りの駅で乗降する人は全くいない。
特に断崖絶壁に建てられた田本駅は、一体誰がこんなところで降りるのか全く見当がつかないほどの秘境ぶりである。


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有数の難読駅である為栗(しでくり)駅に到着。
近くにダムがあり、ホーム目の前を流れる天竜川は大河のような趣を見せている。
元々はこの下に集落が存在したみたいだが、ダム建設の水位上昇で水没してしまい、今は秘境駅の一つとなっている。


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幾多のトンネルをくぐり抜け、険しい渓谷の中を進む。


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そして、本州で一番の秘境駅といわれる小和田駅に到着。
周りに集落などは一切なく、駅から車道へ出るのに一時間近くかかるらしい。
降りて観察してみようと思ったが、この後の列車だと豊橋到着が夜9時頃になるし、時間に全く余裕がなくなってしまうので今回は断念。


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地形図を見るとわかるが、この辺りの区間は本当に山の中を突き抜けるようにして線路が続いている。
トンネルとトンネルの僅かな合間に深い渓谷の姿が見える。


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日が少し傾いてきた。
本長篠辺りを境に乗客が増え始め、ローカル線の雰囲気が薄れ始める。
険しい山間を抜けた後は、再び街中を走っていく。


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終点が近づいてくると、さすがに尻がガチガチになってきた。
車内はかなり混み合っている。
街中でも相変わらずのんびりとしたペースで列車は進む。
JRというより大手私鉄の各駅停車に乗っているような気分だ。


豊橋駅

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やがて岡谷から5時間56分で、列車は終点の豊橋駅に到着した。

こんなに走行時間が長い普通列車に乗ったのは初めてだ。
全線通しで乗車した感想としては、飯田線は各区間によって路線の性格や表情が全く異なってくるということだ。
その表情の移り変わりを味わうのもいいが、6時間ぶっ続けで座席に座っているのは正直しんどいかもしれない。

とにかく列車の本数が少ないので、途中下車を行程に組み込むのは少しシビアになってしまう。
最近「秘境駅号」という観光向けの臨時列車が運行されているらしく、要所要所を効率よく見回りたい場合は絶対にそちらを利用した方がいいと思った。
終点で降りてしばらくは、乗り通した余韻よりも尻の痛みばかりが先行していたのである。


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日もすっかり沈み、豊橋駅前で晩飯を済ます。その後、東海道本線に乗って少し東へ進んだ。
豊橋から約2時間経って、夜9時に差し掛かるところで掛川に到着。
今日はここ掛川で宿に泊まる。

明日は、鉄道好きの聖地といわれる大井川鉄道に乗車する。
なかなか容易に来られないところだし、一日かけて存分に味わってこようと思う。


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