大井川鉄道の「SLくん」

「日本アルプス周遊旅行 3日目 (金谷~千頭)」

[2013/8/10]


日本アルプスを巡る旅も、3日目を迎える。北アルプスから鈍行で順々に南へ下ってきた。
今日は東海道本線を辿って帰路に着く予定だ。しかし、帰る前に静岡で絶対に立ち寄りたい路線があった。
大井川鉄道である。

朝8時に宿を出て、東海道線で掛川から二駅隣の金谷へ。金谷は大井川鉄道の起点だ。
金谷から大井川鉄道に乗って、終点の井川へ向かう。


大井川鉄道

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大井川鉄道は金谷~千頭間は普通の鉄道線だが、千頭から井川までは日本唯一のアプト式鉄道となる。
元々木材輸送やダムの資材運搬用としてつくられた大井川鉄道は、今はその役割を終え観光路線として運営されている。
SLは毎日運行され、主に関西私鉄の名車が普通列車として走っている。


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鉄道好きなら一度は絶対に来たくなるような場所で、鉄道遺産の宝庫と呼ばれている。
しかし自宅から遠いのでまだ一度も訪れたことがなかったし、長年憧れていた場所であった。
今回は全区間のフリーきっぷとSL急行券を使う。


SLくん [新金谷~千頭]

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SLの起点である新金谷へ着くと、はしゃぐ子供達に囲まれて、何やら鮮烈な青い物体が鎮座している。
その名を「SLくん」。昨年から夏休みに期間限定で運行されているものだ。
青く塗りたくられた機関車C11の姿はかなりインパクトがある。


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客車は全て旧型客車だ。至るところが出来る限り昔の状態のままで残されている。
いかにも観光列車といった華々しさはなく、本当に昭和の雰囲気そのままといった感じ。
これが毎日走っているのだから、もう素晴らしいとしかいいようがない。

しかし、今日は暑い。静岡周辺の予想最高気温は38度となっている。
冷房のない車内は既に尋常じゃないほどに熱い。窓も端から全開状態。
そんなうだるような熱気の中、盛大に汽笛を鳴らしSLくんは走り出した。


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しばらく茶畑の中を走り抜けていく。車掌さんも、実に軽妙な語り口で車内を盛り上げる。
こういった暖かい演出はJRではなかなかみられないものだし、徹底されているのだろうと思う。
鉄道ファンだけでなく、観光客にも根強く支持されている理由が何となくわかった。


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家元までは、車窓右側に大井川の景色が広がる。

「この先に狸がいるんですよ~。大所帯で住んでいらっしゃるので是非左側の窓を見ていてくださいね~」
と車掌さんが言うので、窓を見ていると狸の焼き物が線路脇に沢山並べてあった。
上手い!洒落の落ちどころも完璧だ。しかし、あの狸は何か意味がありそうだ。


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家山駅を過ぎると列車は大井川を渡り、川のすぐ右側に沿って走っていく。
今までは右側の景色がよかったが、ここからは車窓左側に絶景が広がる。


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上り勾配がきつくなったのか、SLくんは豪快に黒煙を巻き上げ始めた。
今回僕が乗っているのは一番後ろの客車で、その後ろには補機の電気機関車が連結されている。
SLのブラスト音と同時に吊り掛け音も聴けてしまうという、自分にとっては贅沢な環境だ。


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人家も少なくなり、昔ながらの山里の景色が広がる。


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終点近くになると、山もかなり深くなる。
あの山脈の向こうに、昨日乗った飯田線が通っているのだ。


千頭駅

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やがて、およそ1時間強で列車は終点の千頭に到着した。
到着するとすぐに、SL先頭部分での記念撮影が始まる。
子供達が直にSLに乗って撮影しているのだが、こういう大判振る舞いも他にはできない貴重な体験だと思う。


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最後尾でSLくんを支えていた、補機のE10型電気機関車。
昭和24年製造なので、もう既に半世紀以上活躍していることになる。


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ここ千頭から、今度はアプトライン井川線に乗って山奥の秘境地帯へ向かう。
井川線も、あの小さな客車に冷房なんてついてないだろう。
今日の異様に猛烈な暑さはどうもおかしい。
夏らしいというより殺人的といえるほどで、駅構内でアイスを買ったらすぐに溶けてベタベタになってしまった。

容赦なくじりじりと照りつける日差しに悶えながら、今度は井川線アプトラインの乗り場へ向かった。


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