「碓氷峠訪問記 1/3 (新松戸~武蔵浦和~川越~高麗川~高崎)」
[2015/7/12]
碓氷峠。群馬・長野の境に君臨する険しい峠である。
“鉄”の間で有名なこの峠には、かつて日本の大動脈として鉄道が通っていた。
今回はあらゆる路線と列車を用いて、碓氷峠のシンボル「碓氷第三橋梁」へ向かおうと思う。
今回決行した碓氷第三橋梁への旅程は無駄が多く、完全に乗り鉄乙なルートになっている。
新幹線を使えば3時間弱で着くのに、”八高回り”の鈍行・SLルートだと5時間強もかかるのだ。
鈍行で遠回りするとか、普通の人からすればアホにしか思えないだろう。
一都六県大回りするよりはマシかもしれんがw
計画~導入
今日日帰りで行く碓氷第三橋梁への乗り鉄ルートはこんな感じだ。
まず新松戸から武蔵野線に乗って武蔵浦和へ行く。
武蔵浦和で川越線直通の埼京線に乗り換え、大宮から川越線に入って高麗川へ。
高麗川からは八高線の非電化区間だ。首都圏で珍しい気動車に乗って高崎へ向かおう。
そして高崎から「SL碓氷」に乗り継いで、信越本線の終着横川を目指していく。
横川には「碓氷峠鉄道文化むら」があり峠の中腹へ行くトロッコ列車が出ているので、今回はこのトロッコを利用し碓氷峠到達を実現させる。
碓氷第三橋梁は、トロッコの終着「峠の湯」から2kmほど歩いたところにある。
「武蔵野線→埼京線→川越線→八高線→信越本線 (SL) →トロッコ列車ライン→徒歩」
目的地まで約160km!結構密度の濃い行程だ。列車のバリエーションも多彩。
そんな欲張りな鉄路を日帰りで制覇していこう。
武蔵野線 [新松戸~武蔵浦和]
早朝5時半、ガラガラの武蔵野線に乗って武蔵浦和へ向かった。武蔵浦和では埼京線に乗り換える。
天気は快晴。予報通りだ。絶好の夏日和だが群馬では最高気温35度になるらしいから、
熱中症には気をつけたいところ。しかも高崎から乗るSL列車には冷房が一切ついていない。
車内は熱気がこもってるはずである。でもあの茹だるような熱気も、またいいのだ。
武蔵野線は駅間距離が長いが、走ってるのは駅間距離が短い山手線のお下がり(205系)である。
ほぼ全ての車両が改造され馬力は山手線時代からパワーアップしているが、車内は昔のまんま。
究極の万能電車205系も今となっては古めかしくレトロに見えた。
埼玉に入り乗客が増えてくると、埼京線と接続する武蔵浦和へ到着。
間髪入れずに川越線直通の川越行き鈍行に乗り換える。
埼京線/川越線 [武蔵浦和~川越]
埼京線は普段あまり乗らないが、その超絶カオスぶりは何度か体験したことがある。
混雑が死に物狂いにエグイから“最狂線”とか“最凶線”とか揶揄されたりも。
国鉄が”最強”になるぞと願いを込めて付けた路線名は、今は自虐ネタの対象になってしまった。
沿線人口が莫大に膨れ上がって需要がコントロール不能になってしまった結果だ。
6時12分発の川越行き直通電車はガラガラ。車両はりんかい線のやつだ。
ベッドタウンを走るうちに日が昇り、晴れたのはいいが、めちゃくちゃ暑くなりそうだ……
ビルが多くなり地下へ入ると、列車は大宮へ着く。
大宮からは川越線だ。鉄道博物館の横を通ると他の路線と別れ、列車は独り立ちした。
日進を出ると川越線は単線になった。
駅もこじんまりとしていて生活路線の匂いがムンムンする。
何の変哲もない住宅街を走り抜け、列車はただっ広い田園に出た。
南古谷で列車交換のため2分停車した後、定刻通り終点川越へ到着する。
川越線 [川越~高麗川]
再び川越線の鈍行に乗り換える。同じ川越線なのに途中で乗り換えなければならないのが少々面倒だ。
川越線は川越を境に運行系統が分かれていて、全線乗る場合は途中で一回乗り換えなければならない。
高麗川から来る列車と大宮から来る列車、その両者が川越で折り返す運行形態をとっている。
つまり、川越線を全線通しで走り抜く列車は存在しないというわけだ。
車両は先頭改造された205系で、ラインカラーはグリーンとオレンジ。車内はやっぱりガラガラ。
「パラララーン♪」と小粋なチャイムが流れるとドアが閉まり、出発。
ここからは”半自動ドア”になるようだ。
相変わらずの住宅街だが、川越以西まで来ると古い人家が多くなりローカルらしくなってきた。
雑草も良い具合に生い茂っている。新鬼怒川を渡り的場で列車交換のため3分停車。
武蔵高萩辺りまで来ると完全にローカル景色に。
列車は豊かな緑の中を進んでいく。ここまで来れば終点高麗川はすぐそこだ。
7時11分、列車は高麗川に到着した。
高麗川からは八高線に乗り継いで高崎を目指そう!
八高線 [高麗川~高崎]
八高線。東京近郊なのに未だ非電化(高麗川~倉賀野)で昨年に80周年を迎えたローカル線である。
八王子から倉賀野までを結ぶ路線で、八王子~高麗川間は96年に電化されているが、これから行く高麗川~倉賀野間は未だ非電化となっている。
通称「八高北線」。この区間は本数が少なく走るのは短編成の鈍行のみだ。
7時28分発の高崎行きは二両編成の気動車である。車両は東日本ローカルでお馴染みのキハ110。
発車時刻が近づくごとに少しずつ混んできた。学生も多いが観光客もちらほら。
ここからは関東平野の西側末端をひた走っていくことになる。
座席がほぼ埋まると“ガラガラガラ”とエンジンを唸らし高麗川を出発する。
左手の席に陣取ったが早くも車窓に山々が迫ってきた。
この路線は埼玉の山群の脇を霞めるようにして走るのだ。
川越線とは打って変わり一気にローカル色濃厚に。発車の合図もホイッスルのみである。
越生で乗客が減った。明覚を過ぎると山里へ入り小さな峠を上っていく。
峠を越え坂を下ると住宅が多くなってきて、東武線と接続する小川町へ着く。
竹沢からは鬱蒼とした野山へ入っていき、再びちょっとした峠に差し掛かる。
この峠を越え折原を過ぎると急勾配を下り、荒川を渡って秩父鉄道と繋がる寄居へ到着となる。
寄居から、八高線の車窓は少しずつローカル色が薄れていく。
間近に迫っていた山々は遠ざかっていき、平坦な関東平野へ。
列車も快調にスピードを出して走る。
松久からは広大な田園をひた走り児玉で5分停車した。
児玉からは完全にベッドタウンの中だ。車内もそれなりに混んできた。
神流川を渡り住宅が多くなってくると群馬藤岡へ到着。
何故かは知らないがここで乗客がドッと増えた。新幹線を潜り北藤岡を出ると烏川を渡っていく。
高崎線と合流すると倉賀野へ。列車は高崎まで向かうが八高線の実質終点は倉賀野だ。
倉賀野からは高崎線の線路を間借りして進む。
高崎駅
8時57分、定刻通り終点の高崎へ到着した。八高線の乗り場は他の在来線ホームから離れたところにある。
素朴な八高線の車窓。2回目の乗車となったが意外と飽きなかった。
気動車の鼓動にのって流れる山里の車窓はちょっとした癒し風景。
「癒しの八高線」なんて売り出し文句を付けてもいいかなと(流行らなそー)
SLが来るまで時間があるので、ホーム端に行ってみると機関車が待機していた。
デゴイチ(D51)だ。国内のSLで最も製造数が多かったにも関わらず、
在来線を生きた姿で走っているのはここ高崎支社のデゴイチだけである。
碓氷第三橋梁まで残り2時間半の道のりだ。信越本線は終点近くで急勾配が待ち構えているのだが、
今回、音フェチの私は急勾配の力走を“音”に収めようとPCMレコーダーを用意した。
急勾配へ差し掛かるときに録音開始し走行音として動画UPしてみようと思う。
SLとはいっても観光列車だから期待するのもどうかと思ったが、ガチなSLの咆哮を聞いてみたかった!
行楽客と“鉄”で賑わう駅構内で、私は30分後にやってくる碓氷号を待った。