「東武と京成の秘境っぽい駅に行ってみただけの記録」
[2016/5/23~26]
昔から変なモノが好きだ。特に、都会にあるディープなローカル駅とか好きだ。
調べてみると、大手私鉄にも”そういう系の変な駅”があるというので、
行ってみることにした。あまり期待せずに、ね。
秘境駅とは(以下略)
Wikiのお堅い定義はとりあえず置いといて、近場で秘境駅を見出してみようと思ったのが全ての始まり。
同じこと考える人は沢山いるようで、ググればそれらしい情報が幾らでも出てくる。
んでネットの情報をもとに、近場で秘境駅や面白そうな駅を選定して、行ってみる計画を立てたのだった。
今回のターゲットは東武と京成だ。とりあえず行ってみるかぁ……!幸い、どちらの駅も家から割と近い。
思い立ったら、行動だ。速攻でヒアウィLET’S GO!
堀切へ行ってみる
まずは東武の堀切駅へ向かうため、常磐線に乗って北千住へ。東東京最大の鉄道要衝だ。
10年以上お世話になってるのに、この駅の構造が未だによくわからない。迷宮ですよ迷宮。
堀切は快速・急行が停まらない駅なので、3番線でノッソリと待つ浅草行き鈍行に乗り込んだ。
お目当ての駅は、北千住から二駅隣にある。
先発の急行を通した後、浅草行きは北千住を発つ。
隣駅の牛田を出ると、左手に荒川の堤防が近づいてくる。
堀切駅は、荒川堤防のすぐ横に身を寄せるようにして建っていた。
列車を降りると、5月下旬にしては焼けるような日差しに喘いだ。
改札付近しか屋根が無い。この時点で既に東京23区の駅って感じがしない。
私含めて僅か三人だけを降ろし、発車ベルが鳴った後、列車は堀切を発っていく。
「なんなんだここは……!」
よくわからないけど、変な駅だ。東京とは思えない寂れっぷりにニヤニヤしてしまう。
23区内の伊勢崎線の中で、最も利用者の少ない駅として知られるこの駅は、金八先生の舞台でもあった。
駅ホームは、東京未来大学と荒川河川敷の挟まれたところにある。正直、駅を建てるには窮屈な立地条件である。
人気のない中、端の方へ歩いていくと、こじんまりとした改札へ。
北千住から二駅隣でこの規模である。(しょぼい…)
改札は上りと下りで別々になっていて、それぞれ自動改札が二台設置してある。
無人駅のような雰囲気を醸し出しているが、さすがに駅員はいるようだ。
年々増えつつある、萌えキャラ広告に見守られながら改札を出た。味を占めたのかは知らないが、
最近、東武は萌えキャラを推しまくっている。東武って”そういう会社”だったっけ?
「旧体制、地味、質素、堅実、硬派」ってのが東武じゃなかったのか??
堀切駅の駅舎は二つあって、東と西に分かれている。浅草方面が東口で、春日部方面が西口。
駅構内で上りと下りのホームが繋がってないので、改札と駅舎が別々になってるのだ。
東口の真ん前には堤防があって、堤防を上ると都道に出る。
都道を渡れば、そこはひたすらただっ広い河川敷。
空 が 広 い ぜ !
駅から徒歩30秒でこの景色、この開放感。なんもねえけど最高。
通学チャリを引く高校生カップルが出てきそうなロケーションだ。正に金八先生の世界。
荒川の向こうに見えるのは、悪名高き合流点といわれる堀切ジャンクション。
駅前は閑散としてるが、ここ一帯は、あらゆる路線が入り乱れる要衝なのだ。
河川敷をボヤーと眺めた後、今度は駅の西口へ移動。
東口横の都道に沿ったところに青い跨線橋があるので、そこを渡ればいい。
この跨線橋は堀切駅の東口と西口を結ぶ唯一の手段であり、駅員も利用するという。
高速の巨大高架と、荒川・隅田川を繋ぐ水路の狭間を、東武線は貫いている。
やっぱりここ、変な駅だ。
というか上りと下りのホームが改札外でしか行き来できない時点で変な駅だ。
跨線橋を渡り堀切駅の西口へ。下調べ通り、ノスタルジックな空間にニンマリ。
三角屋根の木造駅舎は、大正の開業時から使われているという。
23区とは思えないレトロチックな佇まい。
駅前はラーメン屋が一軒あるのみで、他は何も無い。色褪せた電話ボックスぐらいしか無い。
というか、駅前そのものが路地裏なのである。パッと見は田舎の駅にしか見えない。
ラーメン屋の名は「みゆき」。まさか金八先生の「世情」に便乗したとか??
おどろおどろしい、中島みゆきの恨み節が脳内再生される。ときの流れを止めてぇ変わらない夢をー
駅自体はローカル臭がムンムンしてるが、ここは伊勢崎線の中で最も過密な区間であり、
数分の間にありとあらゆる列車が行き交っていく。そしてその大半は堀切を通過する。
この駅に停まる列車は、区間準急と区間急行と各駅停車だけだ。
ただ、列車の本数は多く、利用客もそこそこいるので秘境感は希薄である。
ときの流れの止まったような駅が、北千住から二駅隣にあるなんて思わなかった。東武恐るべし。
「世情」じゃないけど、近代化の匂いがせず、東京のざわざわした世情とは無縁の駅だ。
人と違って、駅は“変わらないこと自体が幸せ”なんだと思う。
西口を適当にブラブラした後、反対方向の電車に乗って帰還。
北千住へ戻ると、何時もの喧騒と雑踏が待っていた。
大佐倉へ行ってみる
後日……時間の合間を縫って探索再開。
今日向かうのは、京成最強の秘境駅といわれる大佐倉駅だ。
大佐倉は、上野~成田を結ぶ京成本線の最もローカル色の濃い区間に、存在するという。
千葉北西に秘境なんてあるわけねーだろが (´・`)
……わかってるんだよ、最初から。そんな大した場所じゃないことぐらい。
でも、行ってみたい。一度そう思うと頭がウズウズしてきてしまう。
ウズウズを取り払うため、私は船橋から京成電車に乗り込んだ。
京成本線。総武本線とともに、東京から東へ真っ直ぐ延びる通勤路線である。
日中の時間帯に大佐倉へ行くには、成田空港行きの特急に乗る必要がある。理由は後述。
ベッドタウンを駆け抜けて、臼井を出ると住宅が少なくなり、素朴な田園の中へ。
東に行けば行くほど寂れる。それは総武本線も京成本線も一緒か。
印旛沼の南端をかすめ佐倉を出ると、隣駅の大佐倉はすぐそこだ。
佐倉の住宅街が途切れると山林に囲まれた丘陵地帯へ入る。
「こんなとこに駅があるのか??」と思っているうちに、列車は山林の中で停まった。
何事もなく着いた大佐倉。降りるとあっという間にドアが閉められ、列車は駅を発っていく。
降りたのは地元客一人と私だけ。列車が去ると、辺りは静寂に包まれる。
すると「谷渡り」と呼ばれる、ウグイスの鳴き声が聞こえてきた。
「ピールルルルルー!ケキョケキョケキョケキョケキョ……!」
……鳥のさえずりしか聞こえてこない。それが、京成の秘境駅のリアルだった。
確 か に 、 こ こ は 何 も な い 。
ホームの両側を見渡してみても、この駅はおおよそ目立ったものが存在しない。
あるのは、鬱蒼とした山林と、未開拓の丘と、数件の人家・商店だけ。
他は本当に何も無い。なーんもない。それが最高なんだけどさ。
「コンビニ何ソレオイシイノ??」が通用する立地だ。
ただ、秘境っぽいのはここだけらしく、隣駅へ行けば典型的な千葉の街並みが広がっている。
大佐倉駅の駅前風景。いやコレ駅前じゃないから、ただの路地裏だから。
駅舎も駅舎と呼べるものではなく、駅員の事務室に簡素な屋根をとってつけただけの代物。
事務室の脇に小さな駅の入口があり、券売機と自動改札が一台ずつ設置されている。
最低限の構成で成り立っている駅だが、ICカードは普通に使える模様。
そこは腐っても京成だった。
時刻表を見ると…この駅、日中は特急しか停まらないようだ。
佐倉から東、日中の京成本線は特急しか走らないので、
特急を嫌でも停車させないと駅として成り立たない現実がある。京成でもぶっちぎりのワースト駅なのに。
ホームの駅名標が他の駅と違う。昔から残ってる古いやつだ。これは東成田の廃駅でも見かけたな。
地図を見ると、この駅だけ両隣の大きな街から距離を置いていることがわかる。
西の佐倉、東の酒々井との間に、取り残されたように存在している駅だ。
駅横の踏切を渡ると…恐らく数年前に整地されたのだろう、雑草まみれの丘が横たわっていた。
自然に還りつつある更地の前には、建物の建築を禁止する看板が立っている。
土地の一部が”家庭菜園”や”駐車場”に留まってるのは、つまりそういうことなんだな、と。
丘の上には、伐採を逃れた立派な木が一本だけポツンと立っている。
15年前家族で行って「なんもない」と一蹴した美瑛の丘を思い出した。
うんうん美瑛っぽい。すっげー激しくピンポイントだけど美瑛っぽい。
更地の脇には砂利道がのびていて、そこを上っていくと頂上に行き着く。
丘の上から見下ろすと、眼下にこじんまりとした駅の姿があった。
「コレが空港連絡路線なのかよ」ってほどの侘しさ。
しばらくすると、8両編成の特急が駅へ入ってきた。
この地の主役は鉄道ではなく、緑と自然。緑の中に駅が埋もれている印象だ。
停車するのはホントに一瞬だけで、僅か2~3人を降ろした後、そそくさと発車していく。
京成を利用する通勤客も、毎日毎日「なんでここに止まるんだ??」と首を傾げているに違いない。
しかも、8両編成の電車に対し、設けられている屋根の規模は電車の1両分にも満たない。
夏は熱気と虫が、冬は寒風がダイレクトに車内へ入ってくるんだろう。
そういうのもたまにはいいんじゃないか。たまには。
あながちまんざらでもなかったな (´・`)
正直期待しちゃいなかったが、実際来てみて逆に裏切られた呈だ。京成にこんな駅があったとは!
千葉北西にしては秘境っぽい雰囲気に満ちていて、下車すれば侘しい空間に取り残され、
ちょっとした旅気分が味わえる。そのトリップ感覚…思った以上に、想像以上だった。
取り残された感を存分に味わった後、上野行きの特急に乗って帰宅。
突っ込みどころ満載の、意外性と静寂に満ちた秘境駅たち。
普段駅巡りはあまりやらないので、新鮮でした。