「内房臨快旅 2/2 (安房鴨川~千倉~野島崎~館山~新松戸)」
[2015/3/28]
臨時列車を使用した内房日帰り旅は順調な道のりを辿ってきた。
千葉北西から南房総号に乗り、君津でリゾートあわトレインに乗り換え安房鴨川へ到着。
安房鴨川で昼食休憩した後は折り返し鈍行に乗り、関東最南端の地を目指すことになる。
内房線 [安房鴨川~千倉]
内房線の館山行き鈍行が6両編成で停まっている。
車両は京浜東北で走っていた209系。お下がりとして千葉へ転属してきた奴だ。
こいつは先頭車のみがボックスシートに改造されているが、他の車両は全てオールロングシートとなっている。
国鉄113系亡き今、内房線の純然たる鈍行は全て味気ない209系が受け持つ。
この車両、如何せん安く作りすぎたためか当時は批判の眼が集中し、乗客から多大な苦情が出たことで知られる。
予報通り、天気はすっかり晴れてきた。
車内はガラガラでほとんどが観光客か乗り鉄。
209系は味気なさの極みのような車両だが、先頭車にボックスシートが追加された点ではまだマシかも。
元来た道を戻り、安房鴨川から一時間のところで千倉に到着する。
千倉駅
降りた乗客は、団体旅行客を除くと私一人のみ。
南国らしい植物がホームに華を添えている。
ありきたりな無人駅だが、ここが一応、関東最南端の駅なのだ。
千倉駅前は特にこれといったものがないようで、最南端駅の記念碑の類もないのが残念。
駅舎は真新しいコンクリート造りで中は広く、観光案内所も併設されている。
千倉から今度は、安房白浜行きの路線バスに乗って先を進んでいく。路線名は「千倉白浜線」。
千倉駅を始発とするこの路線は、JRバスではなく地元バス会社の館山日東バスが受け持っている。
館山からなら野島崎の最寄りへ行くバスがあるが、千倉から野島崎へ行くには千倉白浜線で終点の安房白浜まで行き、そこからさらに徒歩で行くしか手はない。
(といっても徒歩区間は約1kmなので到達自体は簡単だが)。
駅前を探索した後、私は駅前ロータリーに停まっているバスに乗り込んだ。
館山日東バス千倉白浜線 [千倉駅~安房白浜]
14時15分、乗客4人を乗せて安房白浜行きのバスが発車した。
バスは昔ながらのツーステップバスだ。
館山日東バス「千倉白浜線」は、関東最南端駅の千倉からバス拠点の安房白浜までを結んでいる。
狭い駅前通りを出ると国道410号線に差し掛かり「房総フラワーライン」へ入った。
房総フラワーラインは、2本の県道と1本の国道から形成されるドライブコースのことだ。
観光ドライブラインとして頻繁に取り上げられており、沿線には観光スポットが多く点在する。
路線バスは定刻通りに走るという使命があるので、走る速度は一定している。
それが災いしてか後方には一般車が詰ってきた。観光かドライブ目的でやって来た人々がほとんどだろう。
停留所に停まると、後方に溜まっていた一般車が一斉にバス前方へ吐き出されていく。
発車してはまた後方に車が溜まってきて、停留所に停まってはビュンビュン追い抜かれる。
「遅せぇぞ、バス!」と言わんばかりに………(苦笑)
起点からしばらく狭苦しい住宅街を進んできたが、中盤で左手に太平洋が見えてきた。
花畑が点在していて、今がちょうど見頃なのか色々な花が咲き乱れる。
房総らしい房総の一風景。南房総は温暖な気候で春の訪れは早いという。
定刻から少し遅れて、バスは終点の安房白浜バスターミナルに到着した。
ここはJRバスと館山日東バスの他、東京発の高速バスも乗り入れる拠点である。
野島崎は安房白浜バス乗り場からだと徒歩15分ほどで行くことが出来る。距離にして約1kmだ。
バスターミナルからフラワーラインを西へ進むと、野島崎への案内看板があったのでそれに従い裏道へ。
裏道を進んでいくと海沿いの道路にぶち当たり、海の向こうに野島崎灯台が見えた。
道路をひた歩き人が増えてきたところで、関東最南端の野島崎へ着いた。
野島崎
野島崎は関東最南端の地であり、すっかり観光化されていた。
岬入口に飲食店や土産屋が立ち並び、駐車場は満車状態だ。
岬中央には野島崎灯台が聳える。「灯台50選」にも選ばれた由緒ある灯台だ。
参観料200円払って中に入ることもできるが、今日は点検の為お休みしてたのが残念。
岬の周りはちょっとした遊歩道になっており、先っぽまで容易に行けるようだ。
せっかくここまで来たんだから、色々探索してみようか。
ここは関東最南端であり房総半島の最南端でもある。
お目当ての石碑も二つ発見した。
「最南端之碑」には、野島崎の場所を示すとともにこんなことが掘り込まれていた。
「この石碑は、アフリカ産黒みかげ石で作られており、日本地図のほぼ中央、千葉県南端にはめ込まれた印が本町の位置を示している」
……ここが最南端だってことはよくわかった。
でも野島崎とアフリカって何か関係性あったっけ??w
岬の先っぽはゴツゴツした岩が乱立しており、独特の景観だ。
大きな岩の上には、いかにもな雰囲気のベンチが設けてあった。
ベンチから見える関東最南端の景色はこんな感じ。岩場の向こうに広がるのはただっ広い太平洋。
ここから200km先には伊豆諸島があり、2400km行ったところにはグアムがある。
途方もなく途方のない数字に、たまには憧れを感じてみては如何だろうか?
厳島神社
どうやら、この岬は灯台の他に神社(厳島神社)もあるようだ。
本殿は実に渋い。そしてもう一つ気になったのが、本殿前にある小さな祠である。
地元の神か何かでも祭ってあるのだろうか??
祠には「平和の愛鍵」という怪しげな一文が添えられていた。
……この文からして、祠の中に何が祭ってあるかは、容易にご想像頂けると思う。
(本当にそのまんまの「形」なので閲覧注意)
なんか放送事故になりそうな気がするが↓で祠の主を堂々公開しよう!
ド ー ン 。
……そのまんますぎてワロた。というか、見た瞬間吹いちまったよコレ。
わざわざ関東最南端まで来てこんなもの拝めるとは思わなかったぞ。
「ねえ、父ちゃ~ん!コレ、な~に?」
「ああこれは………!そうだねぇ……ほらっ!あっちに灯台があるよ~!」
祠に厳然と据わる「御神体」は、ご立派なお姿であった。
いくら聖なる神といえども、ここの神は子供連れには厳しいものがあるだろう。
御神体の横にはでかいシャコ貝が置いてあるのだが、こっちは言葉にしたら即効アウトだなw
一通り探索を終えたところで、バスの時間が迫ってきたので最寄りバス停へ移動。
野島崎の最寄りバス停「野島崎灯台口」は、岬前の小道を5分ほど歩いたところにある。
岬から裏道を北へ歩いていくと房総フラワーラインへぶつかった。
バス停はフラワーラインへ出てすぐ右のところで発見。待合室の中にポールが二本立っている。
一方が館山日東バスでもう一方がJRバスのものだ。
この区間は二つの路線が走ってるのだが、主力はJRバスであり、館山日東バスのポールは侘しい出で立ちであった。
行 き 先 は 無 し 。 バ ス は 1 日 5 本 。
……行き先ぐらい書いておいてほしい。めっちゃ不安になるんだけど行き先無しってw
時刻表もひたすら侘しい。午前中に3本と、日中に1本と、夕方に1本しかない。
ちなみに、JRバスはほぼ毎時一本来るらしい。
誰も来る気配が無い中バス停で一人突っ立って待つ。やがて定刻がきたがバスは一向に来る気配がない。
「もしかして平日限定運行なんじゃないか?」とか無駄に疑ったり心配したりしてると、5分ほど経ったところで、道路の向こうから館山日東のバスがやって来た。
館山日東バス豊房線 [野島崎灯台口~館山駅]
館山日東バス「豊房線」は、千倉白浜線と繋がる安房白浜ターミナルから館山駅までを結んでいる。
県道86号線を経由するこの路線は、廃止寸前に追い込まれながらもギリギリの状態で存続しているという。
元々JRバスが運行していたが、乗客の減少に伴い2005年に館山日東バスへ移管され今に至っている。
「館山駅~安房白浜」を結ぶバス路線は2つあり、豊房線の他に国道410号線を経由するJRバス「南房州本線」がある。
南房州本線は1日12本出ているが、対する豊房線は需要が限りなく少ないらしく1日僅か5本。
「普段一体誰が乗ってるんだろうか?」と思わざるを得ないほどの少なさである。
今回の旅程において、超ローカル線の豊房線は帰りの南房総号に間に合うための救世主だった。
この時間帯に出る16時20分発の南房州本線だと南房総号の発車時刻に間に合わないが、今から乗る豊房線最終バスを使えばギリギリで間に合うことが出来るのだ。
バスは野島崎灯台口を出るとフラワーラインを進み、川を渡ったところで右に曲がり県道86号線へ入る。
この県道は館山~白浜を結ぶ道路としては最短距離を誇り千葉最南端の県道でもあるのだが、
道中は人家の少ない野山で古い隧道も抜けた。乗客は自分入れて二人のみ。
延々と山の中を抜けると街中へ入り、ライバルの国道410号線と交差。
その後は無節操に狭苦しい道を進んでいく。
16時35分、バスは終点の館山駅に到着。たった一つの「救世主」豊房線の最終バスに別れを告げた。
豊房線が存在しなければ今回の旅は絶対に実現しなかったのだ。
復路の南房総号は10分後に発車する!
館山駅は「関東の駅100選」にも選ばれていて、駅舎は洋風の小洒落た造りだ。
ここから南房総号に乗って新松戸で降りれば、今回の旅は無事にフィニッシュとなる。
発車まで残り3分をきったので、駅舎を撮影後すぐホームへ降り立った。
春の南房総号 [館山~新松戸]
館山を始発とする復路の南房総号が6両編成で停まっている。
南房総から自宅最寄駅まで一本で行ってくれるんだから、自分にとってこれほど都合のいい列車はない。
使われている車両は国鉄特急車のお古(185系)だが、元特急だったこともあって快適性は申し分なし。
帰りの南房総号はガラガラだ。これは高速道路網が整備されてない外房とは対照的。
実際、外房線は全線通しの特急が今も走っている。
列車は館山をひっそり出ると富浦、保田、浜金谷の順に停車していくが、乗客は一向に増えない。
この列車は以前乗ったときもガラガラだった。
乗り間違えが多いのか、車掌は臨時快速である旨を何度も説明している。
穏やかな東京湾を横目に、南房総号は速度も控え間に淡々と駆け抜けていく。
千葉を過ぎる辺りで日が暮れ、京葉線・武蔵野線に入るとソロソロと進む。
やがて18時56分、列車は定刻通り新松戸へ到着した。
新松戸で降りた乗客は僅かで、自分のためだけに停車してくれたような錯覚さえ覚えた。
列車は到着してすぐ発車となりそそくさと走り去っていった。南房総号の終着はまだまだ先なのだ。
新松戸からは南越谷、南浦和、終着大宮の順に停車していくはずである。
改札を出た後、駅前からチャリを漕いで早々に帰宅した。
・旅の総費用:4570円(18切符一日分+指定席料金+バス運賃)
・乗った列車の数:5本(臨時快速3本+鈍行2本)
・全区間の総距離:約620km
車利用が圧倒的多数を占める中、内房の臨時快速は粛々と走っていた。恐らく南房総号は来年も走るだろう。
元々内房線は海水浴列車など多くの臨時列車が走っていたというが、今はその面影が全くない。
内房線は高校時代に初めて完乗した思い出の路線なので、何時かまた再訪したいと思う。
あとこれは余談だが、野島崎の「御神体」は想像以上にインパクトあったぞ。