白銀の宗谷本線を行く

「極寒北国紀行 2日目 (旭川~名寄~稚内)」

[2014/12/11]


最北端を目指し、東京から鈍行とはまなすに乗って旭川までやってきた私は、駅前の繁華街で休憩をとっていた。(前々回前回の記事を参照)
朝飯にありついた後は駅へ戻り、宗谷本線の発着ホームへ向かう。
宗谷本線の道のりは長く、全線通しだと259.4km
これは日本の地方交通線として最長距離である。

途中の拠点名寄までは快速列車に乗り、そこから先は鈍行に乗って最北端駅の稚内へ向かう!


宗谷本線 (快速なよろ) [旭川~名寄]

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日本最北端の路線として知られる宗谷本線は、元々樺太への連絡手段として建設が進められたという。
1898年に旭川~永山間が開業し、延伸を繰り返して1922年に稚内まで全通する。
宗谷本線は天塩川に沿って敷かれており、水運衰退とともに道北からの資材輸送の役割も果たした。
終戦後は樺太への連絡船が廃止され、樺太連絡手段としての役割を失うことになる。

かつて宗谷本線は、名寄本線深名線美幸線天北線羽幌線など多くの支線を持っていたが、
これらの支線は80年代のうちに全て廃止となり一路最北を行く孤高路線となった。
孤高ではあるが道北の大動脈として健在しており、特急も1日3本出ている。

宗谷本線を全線乗り通す場合、全線通しの鈍行で行くパターン快速+鈍行を乗り継ぐパターンに分かれる。
全線通しの鈍行は1日1本のみだが、快速と鈍行を効率よく併用する場合だと1日2回チャンスがある。
今回は11時11分発の名寄行き快速と、12時35分発の稚内行き鈍行に乗って稚内を目指そう。



宗谷本線の快速「なよろ」は、思った以上に混雑していた。
ボックスシートは既に満席なので車内端にあるロングシートへ座る。
宗谷本線は名寄まで高速化されており本数も多い。しかし、問題となるのが名寄以北の鈍行である。
名寄から北は、人家どころか道路もろくにない大自然を進んでいくことになるのだ。

列車は発車するとしばらく市街地を進む。この辺りはまだ最果て路線の風情はない。
「快速」なのでいくつか駅を抜かして進んでいくが、速度は東京の普通列車より遅い
上り勾配に差し掛かると今にも止まりそうだ。空調がききすぎなのか車内は蒸し暑い。


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石狩川を渡って間もないところで人家が少なくなり、左手に雄大な山々が姿を現す。
まだ路線の三分の一にも至ってないのに、車窓は大自然の風格を醸し出した。
これから先どんな車窓になるのか期待が膨らむ。


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ぴ っ ぷ 。


北海道は可愛い地名が多いな!w
北海道の地名は八割方アイヌ語がルーツにあるらしい。
「のっぽろ」も相当ツボにハマったけど「ぴっぷ」はそれ以上にツボ。
ピップエレキバン愛用してるわけじゃないけどね。


名寄駅

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上りの特急に遅れが出たため、列車は8分遅れて名寄に到着。
外は何時の間にか雪が降りしけっている。
もう既に発車してるはずの稚内行き鈍行が、向かいのホームで待機していたからよかった!
走って跨線橋を渡り、発車ベルが鳴る中そそくさと稚内行き鈍行に乗り込む。

孤高の最北路線、宗谷本線の凄みを味わえるのはここからだ。


宗谷本線 [名寄~稚内]


快速からの乗り継ぎ客を待ってくれてたのは有難いが、乗り継ぎ時間はほぼゼロであった。
車両はキハ54系の単行。
車内には昔の特急の座席を転用したクロスシートがあるが、景色の良い左側は全て埋まっている。
左側の車窓は意地でも確保したいところなので、やむなくロングシートに座ることに。


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ああ、結局最初から最後まで鬼畜な行程になってしまった。
まあいい。鈍行に贅沢なんぞ言ってはいけない。

これも最北端までの試練と思えば何のその!
リュックをロングシートの片端に置いて背もたれ代わりにし、座席と垂直に座るようにすると窓と自分の位置がいい塩梅になった。
これなら4時間ロングでもいけるだろう。ロングシートも「住めば都」である。


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名寄から宗谷本線は屈指のローカル区間に入り、一級河川の天塩川沿いをひた走っていく
左手には川沿いの絶景が広がるが、右手は面白味がないので避けたいところ。
名寄市街を出ると天塩川が間近に迫り、圧巻としかいいようのない車窓が続く。

この名寄からの天塩川と宗谷本線の並行区間は、これから先なんと2時間強も続くのだ!
………いやーマジですごいわー。スケールが他と比べ物にならない。


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その佇まいは大河のようで、また向かいに聳える山々も険しく、「ここは本当に日本なのか?」と思ってしまうほど荘厳な大自然の景色である。


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雄大な天塩川とともに車窓に広がるのは、途方もなく広大な北海道の大地だ。
人家はポツポツとあるのみで、車や道路もろくに見当たらない。
そんなところを今、単行の気動車が一路ひた走っている。


豊清水駅

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上りの特急が鹿と衝突したため20分ぐらい遅れが出たらしい。
そのため、豊清水駅で長時間停車となる。
道北に来てから雪が降りしけてきた。吹雪にならなければいいのだが………。

特急到着後、列車は間もなく発車。宗谷本線は鹿衝突が日常茶飯事らしい。



音威子府から佐久までの区間は険しい渓谷になっていて、山と山の間を縫うように進む。
山中に差し掛かると外は吹雪き始めた。
今日は天候の変化が著しく早い。


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辺り一面、白一色。関東では滅多に見られない白銀の世界である。
列車は崖と天塩川の脇すれすれに沿って走っていく。


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画像だとそのスケールがいまいちわからないかもしれないが、この区間の車窓はずっとこんな感じ。
ぐにゃぐにゃ曲がる大河と山に挟まれて線路が敷かれている。
もう、ひたすら釘付けになるしかない!

とある山中の板切れ駅で一人乗客が降りていった。
辺りは何もない辺鄙なところだが、一体何をするつもりなのだろうか………。


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佐久を過ぎ、列車は無事渓谷を抜けた。さっきは吹雪いていたのに再び天気が回復してきた。
この辺りは集落が見られ、地元民が続々と列車を降りて行く。
車内はいつの間にか三人だけだ。


幌延駅

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幌延に到着した。ここでは上下の列車とも長時間停車するようだ。
停車中は駅構内を探索できるが、さすがに道北か外はめちゃくちゃ寒い。
特に風が強く、向かい風だと眼がチカチカする。まだ15時台だが日は早くも暮れてきた。

約40分の停車時間の後、列車は再び稚内向けて出発。
今まで並行していた天塩川はここで離れ河口へ至る。
宗谷本線の絶景区間はこれから先もあるが、もうすっかり日が暮れてしまった。
ただ、今日の往路で見れなかったところは明日の復路で見れるから問題ない。



幌延から兜沼まではサロベツ原野の横を進んでいく。
豊富という駅で学生が大勢乗ってきた。
二日近くほぼ一睡もしてないため、眠気が限界にきている。
そうしてうつらうつら繰り返してるうちに、何が起こったのか列車が急停車した。

「只今鹿と接触しましたため、停車致しました。これから調べて参りますので、しばらくお待ち下さい」


上りでも鹿とぶつかったらしいが、こちらでも鹿衝突が発生。
宗谷本線の鹿衝突の発生率は日本一と聞く。運転士も手慣れた対応で運転を再開した。


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抜海を過ぎれば左手に日本海と利尻島が見えるはずだが、今はもう真っ暗で何も見えない。
抜海駅から少し歩いたところにある抜海港には野生のアザラシが住み着いているという。
明日立ち寄って観察しに行こうと思っているのだが、あいにく明日は吹雪だ。

抜海港は駅から徒歩30分ぐらいかかるらしい。
吹雪の中一人で歩いて行くとなれば生死に関わるので断念せざるを得ない。


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真っ暗な中をゴトゴト走り、列車は稚内から一駅前の南稚内へ到着。
稚内で特急が立ち往生しているため、ここで再び長時間停車となる。
色々あったが、最北端到達まであと少しだ。

約10分停車後、向かいの線路から特急が遅れて入線する。
特急到着後、列車は間もなく発車。いよいよだ………!

東京から1600kmの道のりに終止符を打つときがきた!



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稚内駅

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「ご乗車ありがとうございました。日本最北端の駅、終点稚内です」


着いたーーーーーー!!稚内ーーーー!!
鈍行で最四端到達達成!!


上野から37時間。計画通り列車を乗り続け、日本最北端駅の稚内に到達した。
最東端の根室・最西端の佐世保・最南端の枕崎に続き、最北端の稚内も無事攻略!
東京から4つの最端へ行った距離を合わせると、恐らく6000kmぐらいになると思われる。

長かった………最四端到達の道のりは本当に長かった!!


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最北端の駅を有する稚内は、最南端終着駅を有する枕崎と友好都市が締結されており、
両者の駅ホームには二つの駅を結んで示した看板が掲げられている。
半年前行った枕崎の看板と合わせ、めでたくコンプだ。


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車止め裏側には、ここが最北端の線路であることを示す看板が立てられていた。
途方もなく距離が離れてるとはいえ、最南端から最北端まで線路はちゃんと繋がってるから不思議な気分だ。


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稚内駅は近代化されていて、売店や施設が充実しているようだ。
もう疲れたから駅構内を探索するのは明日にしよう。

外は吹雪。歩けるのか年輩の観光客が駅中で心配そうにしてるが、
実際外に出てみると雪に殴られるような強風が吹いていてたまったものじゃない。
風が吹くと道に積もった雪がブワッと舞い上がって私に襲い来る。でも、もう行くしかあるまい。


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吹雪の中をひた歩いて塩ラーメンの名店「青い鳥」に立ち寄った後、予約しておいた宿で一泊となった。
明日は最北端の宗谷岬を訪れた後、函館に向かって鈍行で北海道を南下していくことになる。
今回の旅でゆっくり休めるのは稚内の宿だけなので、到着早々ベッドに寝転がって眠りについた。

最四端到達はめでたく達成したが、旅はまだまだ終わらない。
赤電SL、そして北斗星。残り数ヶ月で消え行く名列車が道中で待っている。

次回!予測し得ない荒天の中、容赦ない風と雪を振り払い最北端の岬へ向かう!


コメント

  1. 黒住 英生 より:

    45歳になる会社員です。島根県出雲市に住んでいます。
    北海道には憧れていて、定年退職したら是非行ってみたいです。
    臨場感のある写真が大変に良かったです。
    北海道の大自然を感じることが出来ました。
    疲れて帰ってきて、こうした大自然の写真に鑑賞でき癒されました。
    ありがとうございます。

  2. Pink16 より:

    非公開様、非公開コメントは初めてだったため返信が遅れてしまいました。申し訳ございません。ブログ主のPink16と申します。
    せっかく貴重なコメントを寄せてくださったので、差し障りのない内容で返信させて頂きます。

    北海道といえば夏が観光シーズンですが、冬の北海道は気候の厳しさを感じられてよかったです。
    特に宗谷本線に乗ったときは吹雪の中で、途中で鹿とのトラブルもあってか手堅い道のりを感じました。
    車窓の写真は全て、走行中の車内から撮ったものです。臨場感を感じてもらえて本当に嬉しいです。
    吹雪でも列車はちゃんと動いてましたから、鉄道偉大なり!って思いましたね。

    北海道は、これから新幹線開業へ向けて活性化していきそうですね。
    新幹線が札幌まで走るのはまだまだ先(2030年頃?)のことですが、
    開業したら新幹線で北海道へ訪れるのもご一考ではないかと思います。

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