宮城の不通区間を辿って

「三陸縦断作戦 1日目 (あおば通~石巻~前谷地~柳津~気仙沼)」

[2015/4/7]


東京から本州最北へ向かう鈍行旅は、過密ながら順調な道のりを辿る。
常磐線で茨城・福島を北上し、9時間かけて仙台までやって来た。

仙台からは仙石線と石巻線を乗り継いで前谷地へ行き、気仙沼線とBRTで気仙沼へ向かう!


不通区間突破ルート


仙台~気仙沼のルートは少し無節操で無駄が多く、正直言ってあまり統一感はない。
例えば仙台~前谷地間は東北本線と石巻線を組み合わせたルートの方が早く進めるが、今回の旅は東北本線を一切利用しない主旨を打ち立てたので断念。
東北本線の鈍行って鉄旅として面白みを見出せないんだよね………w

仙台駅から地下通路を歩いて仙石線の起点となるあおば通へ到達。
真新しい地下ホームで高城町行きを待った。


仙石線 [あおば通~松島海岸]

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先ほどの常磐線と同じく、仙石線も津波被害による不通区間がある。
不通となっているのは高城町~陸前小野間で、通しで行くには代行バスに乗り継がなければならない。
仙台側から乗り継いで効率良く進む場合、高城町ではなく一駅手前の松島海岸で降りる必要がある。

列車は4両編成。先頭改造された205系で爽やかな青い帯を巻いている。
ド派手な発車放送が流れると14時50分発の高城町行きが定刻通り発車。
ドアチャイムも「パラララーン♪」と小粋である。

起点のあおば通からしばらく地下をひた走る。
この地下区間は「仙台トンネル」として2000年に開通した区間だ。
あおば通ではガラガラだったが、隣駅の仙台で乗客がドッと入ってきた。


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苦竹手前で列車は地下を出た。苦竹からは住宅街と田園地帯を進んでいく。
ここにきて天気が回復してきた。最果てに着く頃にはきっと晴れ渡るだろう。

本塩釜を過ぎると、右手に海が迫ってくる。


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陸前高田手前で風光明媚な海景色が現れた。日本三景の松島である。
松島は260から成る諸島群でリアス式海岸だったところが沈降して形成された地域だ。

リアス式海岸だった名残から付近の海辺は水深が浅く、津波の被害を柔らげてくれたのだとか。


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15時30分、終点一つ手前の松島海岸に到着する。
ここから今度は15時35分発のバスに乗り継がなければならない。
乗り継ぎ時間は僅か5分!個人的に5分なら余裕だが結構シビアな乗り継ぎだ。

観光客でごった返す中、人波に従って駅前のバス乗り場へ向かった。


仙石線 (代行バス) [松島海岸~陸前小野]

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仙石線の代行バスは、松島海岸から各駅へ停車し矢本へと達する運行形態となっている。
鉄道不通区間の高城町~陸前小野間をぴったり走るわけではないから、注意したいところだ。

個人的には出来る限り鉄道運行区間を辿っていきたいのだが、
現時点終点の高城町は該当するバス停が駅前から離れているため、松島海岸で乗り継ぐことにした。
松島海岸の代行バス乗り場は駅前にあるので、乗り継ぎは簡単。専属の案内員もいるので迷うこともなし。

この区間は利用客が多いのかバスは二台体制だ。車両はみちのく観光の大型バス。
車内は全席クロスシート。鉄道代替には違いないが、ロングシートの鉄道と比べ至れり尽くせりである。


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バスは松島海岸駅を出ると国道45号を律儀に東へ進んでいく。
松島湾も何回か間近に迫った。


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仙石線は2ヵ月後に全線復旧するらしく、真新しい線路が既に敷かれていた。
世は鉄道衰退と言われ続けているが決してそんなことはないのだ。
ちなみに仙石線が全線開通すれば「仙石東北ライン」の運行も開始し、新たに敷かれた線路には電車に混じってハイブリッド気動車が走ることになるのである。


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吉田川と鳴瀬川を渡ると、バスは終点二つ手前の陸前小野へ到着した。
バス自体は矢本まで向かうが、次乗る仙石線の始発は陸前小野なのでやむなく降車。
ここは該当バス停と駅の間がほんの少ししか離れてないので、簡単に乗り継ぐことが可能だ。

降りた乗客は僅か5人。
そのうち鉄道に乗り継ごうとする者は私含めて2人のみであった。
JRはここで乗り継ぐことを推奨してない(矢本で乗り継ぐよう案内されている)から、当たり前か。


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バス停後方の交差点から3分もしないうちに陸前小野駅へ到達。
駅舎は新しいつくりで3.11後に建てられた建物だと分かる。
窓口や売店も併設されているようだ。


仙石線 [陸前小野~石巻]

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一人ホームに立つこと十分、石巻行きの鈍行がやってくる。電化区間にしてまさかの気動車だ。
この区間、鉄路は生きているが津波で電化施設が損傷したため、他線の気動車を持ち込んで運行してるらしい。

これまで電車ばかりだったが、ここから本州最北まで気動車一辺倒になる。
「ガガガガガッ!」とエンジンを唸らせながら、列車は陸前小野を出た。


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この区間で使われている気動車はキハ110。東日本ローカル地区では何処でも見かける車両だ。
キハ110は個人的に好きな車両で、鈍行旅行者には不可欠な要素をほぼ全て満たしている。
窓が広く車窓が見やすいし、何より座席の座り心地が新型車と比べ格段に良い。

矢本でバスからの乗り継ぎ客がドッと乗り込んでくるかと予測したが、思っていた程ではなかった。
天気もすっかり晴れた。このまま回復してくれることを祈ろう。


石巻駅

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16時51分、列車は終点の石巻に到着した。常磐線に続き仙石線も無事完乗!

時刻は既に夕暮れ時。寒風を凌ぐため、地元学生が跨線橋の中で列車を待っている。
氷点下の寒さを想定していた私はダウンジャケットを着込んでいるから大丈夫だ。
一人、ホーム端で寒風を浴びながら突っ立ってると旅情が感じられた。


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石巻駅構内には石ノ森章太郎が生み出したキャラクターの置物が置いてあった。

「間もなく3番線には、小牛田行きの普通列車が参りまーす」


おっ来るなっ!小牛田行き鈍行!
石巻線の鈍行は国鉄気動車で白×緑のキハ40がやって来るはずだ。
しかし、ここにきてまさかのサプライズ塗装を小牛田行きの鈍行は纏っていたのだった。


石巻線 [石巻~前谷地]

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何だアレ!?随分と、ド派手な列車がやって来たぞ。


17時15分発の小牛田行きはラッピングカーだった。
通称「マンガッタンライナー」。石ノ森章太郎のキャラクターが車体に塗りたくられている。
土日に運転される特別列車だが、平日もランダムで普通列車の運用に入ることがあるのだとか。


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このマンガ列車は、JRと石巻市がタッグを組んで実現させた企画らしい。
復興パワーをビンビンに感じるぜ。
外装だけでなく内装もキャラクターで埋め尽くされている。

マンガッタンライナーならぬ「漫画鈍行」は、定刻通り石巻を発車。
列車はしばらく住宅街を進むが、曽波神を出たところでただっ広い土地に出た。


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それにしてもこの気動車はエンジンの唸りが凄まじい。
キハ40はどれもこれもエンジンの唸り方が違うのは気のせいだろうか。
尻が擽ったくなるほど車体を震わせ、国鉄気動車が轟音立てながら平野をひた走っていく。
「プァーーーン!」日が暮れかける中、古き良き警笛が石巻の地にこだまする。


前谷地駅

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石巻から約20分後、気仙沼線と繋がる前谷地へ到着。ここで気仙沼線の鈍行に乗り換える。
マンガ列車がキハ110と顔合わせ。
馬力はあちらに軍配が上がるが、存在感ではこっちの方が遥かに勝っているぞ。

もう日が暮れてしまうが旅の本番は寧ろここからだ。
三陸を縦断する路線群「三陸縦貫線」の起点が、ここ前谷地なのだから。


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侘しいホームには、地元の学生数人と私一人しかいない。
気仙沼線はもっと利用客の多い印象を持っていたが、実際は違うようだ。
外は凍えるように寒く真冬並みの寒風が吹き荒ぶ。自販でミルクティーを買って身体を温めた。

前谷地到着から数十分後、柳津行き鈍行がやって来たので乗り込んだ。
長い長い三陸縦貫線(前谷地~八戸)の旅の始まりだ。


気仙沼線 [前谷地~柳津]

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三陸縦貫線南端を担う気仙沼線は、3.11の甚大な被害に伴い4分の3ほどの区間がBRTで仮運行されている。
鉄路を全線復旧させるための総工費は約700億円に及ぶといわれ、復旧の見込みは不透明な状況。
現在鉄道として運行しているのは前谷地~柳津間のみで、柳津から先は全てBRTである。

18時発の柳津行きは単行ワンマンのキハ110だ。
車内は私一人と学生五人しかいない。思った以上の閑散振りである。
気仙沼線は通勤通学客で賑わってるのかと思っていたから、これは意外。


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列車は前谷地を出ると旧北上川に沿って田園をひた走っていく。
日は既に暮れかけており、途中駅で乗り込んでくる人は誰もいない。
始発から乗っていた学生達は途中で降りてしまい、車内は私含めて二人だけとなった。

外は日暮れ寸前。侘しすぎるぞ、この状況。


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結局途中で誰も乗ってくることはなく、ガラガラのまま列車は柳津に到着した。

時刻は18時半。外はすっかり真っ暗だ。
最低限に設けられた外灯がより侘しさを誘う。
今日はここからさらにBRTで2時間近く北上し気仙沼まで向かわなければならない。


気仙沼線 (BRT) [柳津~気仙沼]

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気仙沼行きのBRTは柳津駅前に停まっていた。BRTに乗るのは初めてである。
車両はノンステップバスだ。座席も通常の路線バスと全く変わりなし。
しばらくすると運転手が乗り込みエンジン始動。ドアが開いたのでそそくさと乗り込んだ。
車内は僅か二人。始発から終点まで二時間弱、同じ車両に乗って進むことになる。思った以上に長い。

18時45分、最終2本前の気仙沼行きBRTが発車した。


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柳津を出てしばらくは一般車と同じ車道を走っていく。
外は真っ暗でもう何も見えないが、平野とは違い深い山の中を走っている気がする。
やがて一般道を逸れるとBRTは専用道へ突入。BRT専用道は鉄道をそのまま見立てた感じだ。

専用道と一般道を行ったり来たりしているうちに、途中駅があっという間に過ぎていく。
最終的に車内の乗客は私一人だけとなった。


気仙沼駅

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気仙沼、到達!


20時31分、BRTは定刻通り終点気仙沼に到着した。
早朝から鈍行とバスを乗り継ぎ、ようやく着いた気仙沼。
ここは震災真っ只中の地だが復興は進んでいるようだ。
派手にライトアップされた新駅舎に、どれくらいの人々が勇気付けられたのだろうか。

今日の宿は駅前から徒歩15分程のところにある。
駅前にもホテルはあるのだが、費用を少しでも浮かせるべく駅から少し遠い安宿に泊まることにした。
身体に疲れが溜まってきているので、駅到着後はすぐ宿へ向かう。


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時刻は21時前。外はがらんどうとしていて道端には誰もいない。
宿へ向かう前にコンビニへ向かおうとしたところ、暗くて気付かなかったのか、道路脇の側溝に落ち派手に転倒。
ここに来て最大の誤算だった。

手で身体を受け止めるのが間に合わず、右肩と膝を強く打ちつけていた。
思った以上の重傷だ。特に肩がヤバイ。力を入れると根元から鈍い痛みが走る。
「こんなとこで何やってんだ俺は……!」
ふと後ろめたい感情が脳を掠めたが、転倒如きで挫ける私ではない!


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いつの間にか21時を回り消灯を促す放送が町中に響き渡る中、予約していた宿へ無事到着。
明日使う路線は計8路線!鈍行とBRTと路線バスを乗り継ぎ、夜19時過ぎに大湊へ到達する予定だ。
今回の旅の正念場は明日なので、少しでも身体を休めるため即刻就寝する。
(シャワーはかろうじて浴びました)


待ってろよ、大湊!(二日目へ続く)


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