日本最北端の地、稚内へ

「極寒北国紀行 1日目 (上野~仙台~盛岡~青森)」

[2014/12/10]


寂しい男独人で他に打ち込めることが沢山あるはずの学生なのに、私はまた行こうとしている。
しかし、それも今回で一旦打ち切りとなるだろう。

「鈍行列車で最果てまで行きたい」


ただその(馬鹿な)願望と想いだけが、私をここまで突き動かし続けてきた。
最東端最西端最南端を鈍行で制覇した上で、今回向かうのは最北端の稚内だ。
この旅を制覇すれば最四端全制覇となるから、出発前から何時になく気合いが入っている。

「最北端、鈍行で行ってやろうじゃないか!!」


計画~導入


今回の旅の最終目的地は、上述した通り日本最北端の稚内である。
東京から鈍行で稚内へ行くには1泊2日かかる。稚内までの総距離は約1600kmだ。
復路合わせて4泊5日。稚内に到達した後も鈍行に乗り、北から南へ北海道を縦断する。

1日目:東北本線を乗り継いで青森まで行き、急行「はまなす」に乗って北海道へ上陸。
2日目:函館本線で旭川へ行き、旭川から宗谷本線に乗って最北端稚内へ向かう。
3日目:バスで宗谷岬を訪れた後、宗谷本線と函館本線の赤電に乗って札幌まで戻り一泊。
4日目:函館本線で南下。大沼公園でSLに乗り換えて函館に向かい、寝台特急「北斗星」に乗って上野へ。
5日目:上野到着。「北斗星」に別れを告げ、常磐線で帰路へ。


今回の旅の全体行程はこのようになっている。使用切符は「北海道&東日本パス」。
体力・気力の限界を考慮した上で、出来る限り「鉄」の要素を凝縮したつもりだ。
道中には、今年~来年度に消滅する名列車が4本(はまなす・北斗星・国鉄711系・函館のSL)もある。
記事上で何度も「夢をありがとう!」といった暑苦しいフレーズを連発することになりそうだが、しがないオタク野郎の愛情とロマンとしてご容赦頂きたい。

冬の雪国に一人で行くのは初めてなため不安なところもあるが、装備は万全である。
初日は約20時間鈍行に乗り、2日目からは片道6時間の宗谷本線を往復しなければならない。
完全に鬼畜としかいいようのない旅程だが……(苦笑)
これまでの最果て旅も往路は鈍行で制覇してきたから、その伝統は最後まで貫きたいところだ。



今回の舞台は極寒の北国で場合によっては生死に関わってくることもあるため、新たにスノーブーツを用意した。
道民はこんなもの履かないというが、雪に慣れてない関東民にとっては必須だ。
最北端の地の景色はどんなものなのか、直にこの足で確かめてこよう!

早朝4時半、パンパンのリュックを背負って家を出た。今のところ稚内到着時の天気予報は「吹雪」
吹雪になるとはマジで予想だにしなかったが、もう行くしかあるまい。
ブログ史上最もハードで過酷な旅が今始まるっ!!


東北本線 [上野~宇都宮]

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東北本線の道のりは長く遠く、そしてしんどい
淡々とした車窓、鬼畜のロングシート電車、思った以上に混む車内。
2年前の最東端旅でも同じルートを辿ったが、よほど面白みがなかったのかほぼ記憶にない。

上野から青森まで約20時間の道のりだ。
気が遠くなりそうな数字だが、初日のこの道のりを制覇しないことには、北海道はおろか青森すら行くことができないのである。



5時46分、始発から3本後の宇都宮行きが定刻通り発車した。
これから青森まで一日かけての長旅である。
東北本線の上野〜宇都宮間は宇都宮線という愛称がついており、バリバリの通勤路線だ。
列車は15両編成の通勤電車でグリーン車もついている。


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今回は、宇都宮までグリーン車に乗って行くことにした。車内はまだ誰もいない。
980円かかるが、これからの苦行を思えば何てことのない出費である。
私はグリーン車に乗るのは初めてで、グリーン券を購入するのに一手間かかった。
普通に切符を買うのかと思ってたのだが、Suicaにチャージして座席上のセンサーにタッチすればいいだけらしい。

宇都宮行き通勤電車が、まだ真っ暗な中、並走する京浜東北線を尻目に疾走していく。
大宮あたりでようやく乗客が入ってきた。
大宮から東北本線は並走路線を離れて一人立ちする。


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白岡あたりでようやく日が出てきた。短いようで長い長い一日の始まりだ。
今は一年間で最も日が短い時期であり、日中のうちに行動できる時間は限られている。
久喜を過ぎた頃、車窓右手に筑波山がうっすらと見えた。
線路のそばには住宅街が広がるだけだから、今のところ車窓の楽しみといえば遠くに聳える山ぐらいしかない。

新幹線と接続する小山でドッと乗客が増えたようだ。
既に通勤ラッシュに突入しているが、宇都宮行きのグリーン車はガラガラで通勤通学の喧騒とは無縁である。
普通車は満員状態なんだろう。やっぱりグリーン車に乗っておいて良かったと実感。
最初から混んでる中行くなんてやる気が出ないし、グリーン車ならのんびり朝飯を食べられる。

7時29分、宇都宮行きは定刻通り終点に到着した。これでグリーン車の快適旅は終了。
隣ホームに居座る黒磯行き鈍行に乗り換える。


東北本線 [宇都宮~黒磯]

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これから乗る宇都宮~黒磯間の車両はメルヘン顏の205系。
こいつは確か京葉線で走ってた奴じゃないか。

車内はみるみるうちに混んできて発車寸前には立ち客も出た。
8両編成のオールロングシートで、ブラインドも全て下げられたため車窓は全く見えないが、この区間の車窓は面白みがないので全然構わない。
ここからドアは「手動」になる。下車するときにさりげなく「閉」ボタンを押すのは暗黙のルールだ。
宇都宮から先は、駅間距離が少し長い気がする。


東北本線 [黒磯~郡山]

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黒磯に着いた。ここから再び郡山行きの鈍行に乗って北上する。
黒磯~一ノ関間で使われる車両は数種類あり、「悪魔」701系・「救世主」719系・「新型」E721系の3種類がある。
大半はロングシートの701系にぶち当たることになるが、
たまにクロスシートの719系やE721系がやってくるから侮れない。

今回はなんとE721系が来た。「今日は運が向いてるぜ!」と思ったが、
正直ぶっちゃけると、東北本線の車両の運用は最初から全て決まっているため、E721系が来ても運が良いわけではないので注意されたし!


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途中の新白河で14分停車する。
ホームのすぐ横には東北新幹線の高架ホームが聳える。
しばらくすると貨物が横を通過し間もなく列車は出発した。

「この列車は東北本線、普通列車の黒磯……あっ!失礼致しました。普通列車の郡山行きです」


ええー、戻るのかーー。ここまできて戻りたくねえべw


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これまでの東北本線は住宅街ばかりだったが、黒磯以北からはガラっと雰囲気が変わり山の中を進んでいく。
対向からくるのは鈍行でも特急でもなく貨物ばかり。東北本線は貨物の大動脈なのだ。
新白河からは山あいを出て、平坦な土地を快走していく。
ガラガラだった車内は少しずつ混み始め、新白河から数駅先で満席となった。

須賀川という駅で小学生が大勢乗り込んできた。郡山へ社会見学に行くのだという。
子供の勘は大人以上に鋭いが、まさか隣に座る男が鈍行で稚内へ行こうとしてるなんて絶対思ってはいないだろう。

磐越線と接続する郡山で、再び北へ向かう福島行き鈍行に乗り換える。


東北本線 [郡山~福島]

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悪魔こと701系の登場だ。
この車両はオールロングシートで、奥羽本線と東北本線(黒磯以北)の主力として使われている。
こいつにぶち当たる確率は限りなく高く、最悪のパターンだと、宇都宮から青森までずーっとロングシートに座らなければいけないこともある。
それこそまさに鬼畜である。

黒磯からの乗り継ぎ客が多く、車内は満席状態だ。
車窓は既にローカル一色。ここにきて早くも尻が痛くなってきた。
あとまだ15時間も残っているというのに………!

この区間の乗車時間は短く、50分もしないうちに終点福島に到着となる。
50分を「短い」と感じる時点で、私はちょっとした鈍行中毒に侵されているんだと思う。


東北本線 (快速シティラビット) [福島~仙台]

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福島から仙台までは快速がある。
「シティラビット」という快速列車が一日数本走ってるのだ。
車両は719系。主にクロスシートが設けられており、ロング中心の東北本線でも救世主的存在といえる。

しかし思った以上に混雑しており、肝心のクロスシートを確保できなかった。
車内端にあるこじんまりとしたロングシートに座る。


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白石を過ぎると列車は小高いところを走り、右手に広々とした景色が一望できる。
東北本線は、太平洋沿いに敷かれた常磐線と比べると勾配のきついところが多い。
そのため、昔の優等列車はこぞって常磐線経由で北へ向かったという。
今はその影が全く見られないが、常磐線が栄華を誇った時代もあったのだ。


仙台駅

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仙台に着いた。ここで昼食休憩となるが、次乗る列車が30分後のため急がねばならない。
もっと余裕ある行程を立てろと言われそうだが、今のダイヤの都合上ではこうするしかなかった。
最東端旅のときは50分ぐらい休憩がとれたが、今は「はまなす」の発車時間が少し早まっているため、
そのツケが仙台で回ってきたのである。

駅は混み合っており手軽に立ち寄れる店もないため、何か探して食べるのは無謀であった。
キオスクで適当に昼飯を済ませて、次の列車に乗り込む。


東北本線 [仙台~小牛田]

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発車10分前にホームへ降り立つと、小牛田行き鈍行は既に満席であった。
しかしずっと座っていても尻が痛くなるばかりなので、たまには立つのもいい。
ここから盛岡までは、列車を3本乗り継いで進むことになる。
仙台の住宅街をひた走り、閑散とした平野を走るとやがて小牛田に到着する。


東北本線 [小牛田~一ノ関]

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小牛田で一ノ関行き鈍行に乗り換える。車両はまたしても701系。憎たらしい奴である。
車窓は人家が少なくなり、ただっ広い田園を進んでいく。
徹夜出発なので、さすがにここまでくると眠くなってきた。
体力はまだまだ余裕だが眠気には俄然弱いことを痛感する。


東北本線 [一ノ関~盛岡]

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一ノ関到着は14時32分。ここから、現在の東北本線としては最後の鈍行に乗る。
盛岡以北は第三セクターに転換されたため、今の東北本線の実質的終点は盛岡である。
車両は相変わらずの701系だが、ラインカラーがこれまでのものと違うようだ。


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眠気に巻かれてうつらうつらしてるうちに外は雪景色に変わっていた。
時刻は16時を過ぎようとしている。
あっという間に日が暮れる中、列車は盛岡向けてひた走る。


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16時15分、列車は定刻通り盛岡に到着。
ここから先は第三セクターのいわて銀河鉄道だ。
駅構内のカフェで一服した後、私はいわて銀河の乗り場へ向かった。


いわて銀河鉄道 [盛岡~八戸]

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こじんまりとしたいわて銀河鉄道の乗り場は人で溢れかえっている。
長蛇の列を成しているが、私は列車を撮るのが最優先なのでホーム端で一人カメラを構えた。
やがて間もなく八戸行きが到着。終点八戸までは2時間弱と結構かかる。


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車両はいわて銀河独自の形式(IGR7000系)だが、JRの701系を転用しただけの代物だ。
車内は満席どころか満員となり、八割方は学生。
邪魔になるリュックを荷棚に置いてやり過ごすうち、座席はすぐに空いた。

外はもう真っ暗だが、雪が少しずつ深くなってきているようだ。
「今、稚内はどうなっているんだろう?」と車内で一人童心に返った。
時折鳴る甲高い警笛が想いを掻き立てる。私はローカル列車独特の警笛の音色が好きだ。


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陸奥から先は青森県で、列車は青い森鉄道の区間に入る。
ここまでくると車内はガラガラ。車内空調が弱いのか上着を着ていても寒い。
恐らく「はまなす」に乗り継ぐ乗客が、僅かに設けられたボックスシートに居座っている。

今回の旅は北&東パスの有効期間初日に決行することになったが、それが吉と出るか凶と出るか!
鈍行の旅は偶然の重なり合いみたいなもので多少の運要素がある。
私はそれを楽しいと思うタイプの人間だ。


青い森鉄道 [八戸~青森]

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最後の最後に乗る列車は、青い森鉄道の青森行き鈍行だ。
座席は八割方埋まっている。数駅過ぎると、車内は男一色となった。
男の学生、男のリーマン、男の外人、そして男の乗り鉄。マジで男しかいない。



列車は広々としたところを走ってるのか、車窓はポツポツと外灯が一定間隔で流れるのみである。
車内のむさ苦しさを除けば、その光景は本州の最果てまで来た感じがする。


青森駅

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やがて21時前、列車は終点青森に到着した。
はまなすが出発するまで一時間強の滞在時間があるので、ここで夕食をとる。
青森駅前には吉野家が夜遅くまで営業しているから有難い。
ただの牛丼じゃつまらないので、普段滅多に頼まない牛すき鍋を注文した。

夕食後、駅で待機すること20分ぐらいで急行はまなす到着のアナウンスが入る。
明日は遂に稚内だ!私は一番乗りで改札を通り、意気揚々とはまなすの発着ホームへ向かった。


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