「西国片道旅行 3日目 (佐伯~延岡~宮崎~青島)」
[2014/8/15]
鬼畜な最南端旅も3日日を迎える。
今日は佐伯から日豊本線を乗り継ぎ、指宿枕崎線で終点枕崎へ向かうことになる。
宗太郎越え
2日目の宿の中で日豊本線の時刻表を見ていたら「宗太郎」という変わった駅名を発見する。
その奇妙な駅名は、これから朝一の始発で行く佐伯~延岡の間にあった。
日豊本線の佐伯から延岡までの区間は県境にあたり、きつい峠を越えていくことになる。
通称「宗太郎越え」。
ここら県境の地は宗太郎という名がついており、峠も同じく宗太郎峠と呼ばれる。
宗太郎駅は、この峠の最中にあった。
時刻表を見てみると、この駅は特急を除くと一日三本しか列車が来ない。
朝の列車を逃すと、次の列車が来るまで何と10時間強。
途中下車してみたかったが当然の如く諦めた。
また宗太郎越えをするのは鉄道と一般車のみで、路線バスを利用しての立ち寄りも不可能だ。
かくして宗太郎は、他の追随を許さない秘境駅なのであった。
日豊本線 [佐伯~延岡]
一日たった三本の延岡行き単行気動車が、乗客たった三人を乗せて佐伯駅を発車した。
ここから先には宗太郎峠があり、難工事の末開通したという険しい山の中を進んで行く。
ぐずついた天気は回復する気配がないが、今日は少し青空も見える。
佐伯を出発すると列車はほどなくして山の中に入り、エンジンを唸らせながら坂を上っていく。
これまでの道のりでも見かけたが、今日の朝は山霧が一段と濃い。
未知なる場所に向かうようで緊張感が高まる。
途中の駅で乗ってくる人は全くいない。
混雑していた今までと違い、車窓の右から左まで撮り放題だ。
宗太郎一つ手前の重岡で、列車は行き違いのため数分間停車。
峠のサミットは県境ではなく重岡駅付近にあり、ここから先は延々と坂を下ることになる。
「次は、宗太郎に停まります」
自動放送とはいえ独りでにニヤッとしてしまうぞ。
線路は国道10号と絡み合いながら続いている。
この国道と線路以外は何も見かけられず、宗太郎峠の険しさがわかる。
崖を渡り、いくつものトンネルをくぐりながら列車は先へ進んでいく。
やがて、左に大きくカーブしたところに宗太郎駅はあった!
宗太郎駅
超秘境駅だし降りて探索してみたかったが、さすがに10時間も滞在するわけにはいかない。
ホームは当然のように誰もいなく、ドアは開いてから数秒で閉められ発車となった。
車内の窓から眺めるしかないのが残念だ。
宗太郎を出ると、市棚まできつい下り坂が続く。
市棚まで行けば宗太郎を越えたことになる。
下りに転ずるとともに、車窓には綺麗な川が見えてきた。
早朝の今は川霧が出ていて、幻想的な佇まいである。
そういや、川霧をこんな間近で見たのは初めてだ。
たまたまなのかは知らないが、山霧と川霧が絡み合う車窓に釘付けになっていた。
水面が見えないほどに霧が立ち込めていて、普段見られない光景にただただ感動!
延々と坂を下ると人家が少しずつ増えて、街中に入ると列車は終点の延岡に到着となる。
宗太郎越えは18切符の難所でもあり、ここだけ特急でワープする人も多いらしい。
今回鈍行旅の行程として、効率よく普通列車で越えられたのはラッキーだったと思う。
旅はまだ終わっていないが、宗太郎越えは今回の旅のハイライト区間に決定だ!
日豊本線 [延岡~宮崎]
延岡からはしばらく日豊本線で南下となる。
コミュッタートレインと名付けられた819系に乗車。
座席は木製のクロスシートになっている。
延岡から宮崎までは海沿いをひた走っていく。
ところどころに生えているフェニックスが南国ムードを盛り上げる。
しばらくすると、列車はリニアの実験線跡に並行して進む。
延々と続くこの実験線跡は、今は太陽光発電パネルの設置場所として活用されていた。
やがて9時過ぎに、列車は宮崎に到着した。
予定通り行くなら、次の列車まで2時間以上の滞在時間がある。
何処か観光できる余裕があるので、今回は宮崎から日南線で青島に行ってみようと思う。
日南線 [宮崎~青島]
日南線は、南宮崎から日南海岸沿いを走り志布志まで至る盲腸線だ。
青島駅は宮崎から数駅下ったところにあった。
駅前から徒歩10分ほどで青島に行くことができる。
青島
青島は周囲1.5kmほどの小さな島で、宮崎の一大観光スポットの一つである。
この島には、約1200年以上の歴史を持つ青島神社がある。
まだお盆なので、今日は多くの参拝客で賑わっている。
島の中は全て青島神社の境内になっている。
この神社には、彦火火出見命・豊玉姫命・塩筒大神という三神が祭られている。
縁結び・安産・航海・交通安全などの御利益が得られるそうだ。
拝殿脇には奥宮へと繋がる道があった。
亜熱帯植物で覆われており、南国の樹海という感じがして面白い。
青島神社を参拝した後、潮が引いて少しずつ顔を出した「鬼の洗濯板」を観察。
干潮になると、洗濯板のような独特の岩肌が全て顔を出すらしい。
これは是非、干潮時の状態で見てみたかった。
時間たっぷり青島神社を参拝した後は再び駅へ戻り、自販機でジュースを買って一服。
ここから宮崎に戻れば、あとは真っ直ぐ最南端の枕崎へ直行することになる。
南国の容赦ない日差しに悶えながら、私は日南線の上り列車を待った。