アルペンルートと地鉄電車

「北アルプス横断旅 3/4 (室堂~美女平~立山~岩峅寺~南富山~富山)」

[2015/8/5]


立山頂上から一時間強で下山した私は、室堂周辺の観光スポットを回っていた。
山の天気は移り変わりが早く、正午からガスが多くなってきたのが残念だが、
それでも室堂のロケーションは素晴らしく観光客で賑わっている。


室堂

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扇沢からは怒涛の上りが続いたが、室堂からアルペンルートは下り道を辿っていくことになる。
あと乗り継ぐ路線は二つだけだ。立山から先は富山地鉄電車が待っている。

まずは美女平へ向かうバスに乗ろう。


立山高原バス [室堂~美女平]

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立山高原バスは、室堂から立山ケーブルカーと接続する美女平までを結んでいる。
この路線が通る富山県道6号(立山有料道路)はアルペンルート区間に限りマイカー規制がかかっており、
路線バスや貸切観光バス等しか通行できない特別な道路となっている。
実際、ターミナルに停まっているのはバスだけだ。

15時発の美女平行きバスはそれなりの乗車率で、複数台での運行となるようだ。


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室堂を出ると、山上の丘稜を何度も曲がりながら駆け下りていく。

ここは標高2000mの天上道路である。
確かにこの区間にマイカーを入れると混雑して、繁忙期にはとんでもないことになりそうだ。
排気ガスが蔓延して北アの大自然が死んでしまう。


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右手には荘厳な山々を拝むことが出来る。北アの雄大さが最後に楽しめる区間だ。
天気は不安定で、何時の間にか雲が多くなってくると雨が降り始めた。
しかしすぐに止んだから安心。


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室堂から50分経過したところで、バスは美女平に到着する。
標高は977m。標高2450mから一気に1500m駆け下りてきたのだ。
美女平からは、アルペンルート最後の路線となる立山ケーブルカーに乗り継ぐことになる。

バスを降りた後、16時発の立山行きケーブルカーを待った。


立山ケーブルカー [美女平~立山]

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立山ケーブルカーは、美女平から地鉄電車と接続する立山を結んでいる。
正式名称は「立山黒部貫光鋼索線」だが、黒部ロープウェイと同じ名称なので公には用いられないらしい。
所要時間は7分で標高差は487m。資材を運んでいた名残か車両には貨車が連結されている。

貨車を連結したケーブルカーは、日本でも立山ケーブルカーだけだというから意外だ。



16時発の立山行きは満席になったところで発車した。
最大29度の急勾配を下りていくこの区間は、左手に眺めが広がるようだ。
柱状節理の岩肌が見えると案内しているが、どこが柱状節理なのかよくわからない。

もうすっかり下界へ降りてきてしまった感がある。
標高差2000mのアルペンルートも、これで終幕というわけだ。


立山駅

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16時7分、立山ロープウェイは終点立山へ到着した。
扇沢から9時間弱かけてアルペンルートを辿ってきたが、
北アの神々しい景色は、写真で見るのと肉眼で見るのとでは全く迫力が違った!
高額なので滅多に来れないところだが、機会があれば再訪したい。十年後とかになりそうだが……。

アルペンルートは全線突破したが、立山からは富山地鉄電車に乗って富山へ向かう必要がある。



立山~富山間は列車一本で通じているが、若干の遠回りになっている。
そこで今回、私は立山~富山を最短距離で行く鉄道ルートを考えてみた。

「立山→立山線→岩峅寺→上滝線→南富山→市内電車→富山」


路線図を見ると、メインの立山線・本線(立山~寺田~富山)とは別に、岩峅寺から上滝線という路線が延びている。
岩峅寺でこの路線に乗り継げば、立山線・本線を一本で行くよりも多少距離が縮むことが判明。
南富山からは市電が接続しており、ここでさらに富山駅行きの市電に乗り継ぐことで、富山~立山の地鉄電車最短ルートは”完成”される。

すっげえアホらしいがw、せっかく計画したんだしこのルートで富山へ向かおう!
立山から南富山までの普通切符を購入し、いざ地鉄電車のホームへ。


富山地方鉄道立山線 [立山~岩峅寺]

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富山地方鉄道立山線は立山から寺田までを結ぶ路線で、一部の特急除く全列車が本線へ乗り入れ富山へ至る。
アルペンルートへ行く主要ルートになっている路線で、地元需要の他、観光需要も持つ。
急行や宇奈月温泉へ向かう特急も存在するらしいが、これから乗るのは鈍行だ。

16時15分発の電鉄富山行きは、元東○電鉄のステンレス電車だった。
富山まで来て東京の通勤電車に乗るとは思わなかった。二両編成でワンマン仕様に改造されている。
元通勤電車なので車内はオールロングシート。満席なのでドア脇でやり過ごすことに。
定刻が近づくと運転士が乗り込んできて、電鉄富山向けて発車する。


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立山からしばらくは山岳路線で、20~30パーミルの急勾配とトンネルが続く。
そのためか列車はソロソロ走っている。元通勤電車とは思えないのんびりっぷりである。


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車窓に広がるのは、世界有数の急流河川である常願寺川だ。
何の変哲もない川の流れも、北アの麓にかかれば険しく見える。

絶景の連続だが、鈍行なので観光案内などは一切行われないようだ。


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北アの麓を離れ山間を抜けると、列車は田園地帯へ入り岩峅寺へ到着する。
この駅は立山線と上滝線が乗り入れており、地鉄の拠点でもあるらしい。
だが、降りたのは私一人だけだった。

乗りっぱなしの乗客全てはアルペンルート帰りの観光客で、そのまま富山へ向かったんだろう。
最終目的が一緒なのに、乗り鉄の私はここから一人で”最短距離”で列車を乗り継ぎ富山へ向かう!


富山地方鉄道上滝線 [岩峅寺~南富山]

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上滝線はかつて立山へ向かう元祖主要ルートで、路線名も当初は「立山線」だったという。
しかし後に新しい主要ルートが考案され、寺田から延びる五百石線を新メインルートし路線名も譲渡。
元立山線には上滝線の名が与えられたのだった。
現在上滝線は不二越線とともに、地元輸送に特化した純ローカル線となっている。

岩峅寺駅で10分ぐらい待っていると上滝線の鈍行がやってきた。
地鉄の古参車14720形。南海電車似の二枚顔が愛嬌あって良いね!


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17時01分発の電鉄富山行きは定刻通り岩峅寺を発車した。
最初は二人しか乗客がいなかったが、途中で地元の学生が乗り込んでくる。
車窓は水源豊かな田園。昔ながらの転換クロスシートでその景色を存分に味わう。


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17時24分、上滝線の鈍行は南富山へ到着した。

列車はそのまま電鉄富山へ向かうので、到着後すぐに走り去っていった。
南富山は上滝線と不二越線の他に市内電車が乗り入れており、計3路線が接続する地鉄の拠点だ。
有人改札で切符を回収してもらい、外へ出るとノスタルジックな町並みが広がる。


富山地方鉄道富山市内軌道線 [南富山駅前~富山駅]

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最後の最後に乗るのは、富山の市電だ。正式には「富山市内軌道線」と言うらしい。
南富山駅は市電本線の南側起点で、富山駅へ向かう1系統と大学前へ向かう2系統が乗り入れている。

市電の乗り場は、上滝線・不二越線のホーム脇に設けられていた。
停まっているのは7000形。57~65年に導入された富山市電の最古参車だ。
出発するとグォオオオオオオーー!と吊り掛け音が唸りだした。吊り掛け大好き(笑)


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乗客はみるみるうちに増えてきて、環状線と合流する辺りで満席状態となった。
車窓に真新しいビルが多くなってくると、市電は駅前交差点に差し掛かる。

終点富山駅の電停はどうやら駅中に直結しているようだ。


富山駅

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「富山、到達!!」


18時を過ぎたところで、市電は終点の富山駅に到着した。

信濃大町から14時間かけての到達となったが、
ほぼ想定通りの時刻で抜けられたし、何よりトラブル無しで来れたからよかった!
富山駅は新幹線も乗り入れたためか活気がある。
今後は北陸新幹線がアルペンルートのメインアクセスになるんだろう。


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駅前で一服した後、駅ビルで富山名物の白エビ天丼にありついた。
アルペンルートを一日で突破してしまったが、登山もやったので体力は擦り切れ状態。
再び市電に乗り込み、ホテルの最寄電停で降りて早々にチェックインした。

明日は高山本線完乗だ!日差しで焼けまくった肌の染みに耐えながら、夜22時に就寝した。


コメント

  1. 774の人 より:

    わざわざ三回も乗り換えをしてでも最短距離をとおろうとする考え、アホですねぇ(笑)
    だがそれがいい!
    次回富山へいくことがあったら自分も同じルートを通ってみようと思います

  2. Pink16 より:

    774の人様、コメントありがとうございます。

    自分、今まで乗り鉄で相当アホなことしてきましたが(苦笑)、地鉄電車の乗り継ぎは楽しかったですよ。
    特に岩峅寺駅が駅舎・ホーム共に味があって、一度下車してみる価値がある場所だと思いました。
    ノスタルジックな南富山駅も良かった!

    今回辿った東京~富山のルートは、鉄道を限りなく利用した上での最短距離ルートとなったはずです。
    長野・北陸新幹線だと相当な遠回りになりますし。ぶっちゃけ所要時間は新幹線の方が全然早いですが(汗)。

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