「トロッコ列車から見る渡良瀬川の絶景」
[2013/8/20]
今回は、以前からずっと気になっていたわたらせ渓谷鉄道に乗車する。
群馬の桐生から、山深く渓谷の中を走る風光明媚な路線だ。
わたらせ渓谷鉄道 [相老~間藤]
わたらせ渓谷鉄道は元々国鉄足尾線で足尾銅山の貨物輸送が主だったが、後に平成になると利用者の減少もあって第三セクターに転換され観光路線となっている。
大正~昭和初期に造られた建造物の多くがそのままの姿で残っていて、沿線にある計38の施設が国の登録有形文化財に指定されているらしい。
北千住から東武特急りょうもうに乗って、わたらせ渓谷鉄道の接続駅である相老駅までやって来た。
ここからわたらせ渓谷鉄道に乗って、終点の間藤駅へ向かう。
普通列車は1~2両編成の気動車で運行されている。
車両番号が変わっていて、「わ89-314形」というように先頭に「わ」とついているのが興味深い。
車体は銅(あかがね)色という、阪急電車のようなマルーン一色で塗りたくられている。
トロッコわっしー号
せっかくなので、今回はわ鉄の目玉でもあるトロッコ列車に乗車しよう。
ディーゼル機関車牽引の客車もあるが、今日は走ってないのでもう一方の「トロッコわっしー号」に乗る。
昨年デビューしたばかりの自走式トロッコ気動車だ。
配色が何かラテンっぽいなと思っていたら、車体デザインは地元のラテンミュージシャンが担当したと聞いて納得。
2両編成になっていて、普通のボックスシートの車両とトロッコの車両が連結されている。
空はどんよりと曇っていて今にも雨が降り出しそうだが、むしろ雨の方が映えそうな景色だし問題ない。
ガラガラガラとエンジン音をふかしながら、僅かな乗客を乗せてトロッコわっしー号は発車した。
乗客は、意外にも僕と同世代ぐらいの若い女性の方が多い。
途中で団体客も乗ってきて車内は少し賑やかになった。
大間々駅を出ると、列車は本格的な渓谷の中へと入っていく。
トロッコ列車に乗るのは初めてだが、やっぱり開放的で気持ちがいい。
健康的だし、ガンガンに冷房をかけるより断然こっちの方が好きだ。
少し雨が降り出し始めた。
終点までずっと渡良瀬川に沿って進んでいくが、神戸駅までは車窓右側に風光明媚な景色が広がる。
途中線路のすぐ脇に滝や歴史的建造物があったりして、その都度徐行しながら観光案内がされる。
沿線有数の観光拠点である神戸駅を過ぎると、列車は全長5.2kmの草木トンネルに入る。
トンネル通過中はイルミネーション点灯が行われるが、トンネル走行中はかなりの轟音になる。
途中で耐え切れなくなったのか、二組のカップルが普通車両の方に退散していった。
約10分かけて草木トンネルを抜けると列車はすぐ橋梁を渡り、再びトンネルへと入っていく。
神戸から2つトンネルを抜けて、沢入駅に到着。
ホームにある木造の待合室が素晴らしい。昭和4年建築だから相当な年代物だ。
沢入駅を出発すると、列車はわ鉄一番のハイライトといわれる絶景区間に突入する。
この区間は人家も一切なく、車窓左側に正に渓谷といった景色が見渡せる。
沿線には色鮮やかな花が沢山見られる。
桜の時期や紅葉が一番の見所らしいが、混雑するし旅情はなくなってしまうだろう。
終点近くになると、鉱山住宅の脇を通り抜けていく。
足尾銅山観光の拠点である通洞駅を過ぎ、列車は終点一つ手前の足尾駅に到着。
大正元年開業からある木造駅舎と未だに全くかさ上げされてないホームが、旧時代の風景そのまんまという感じ。
ここまで昔ながらの雰囲気が残っていると、それだけで何かすごいと思う。
足尾駅から間藤駅の間は短く、徒歩でも簡単に行ける距離である。
駅構内の側線には、キハ30形・キハ35形が保存されていた。
間藤駅
やがて相老から1時間20分で、列車は終点の間藤に到着した。
間藤から先も線路は続いており、辿っていくと足尾本山という貨物駅に辿りつく。
この区間は廃止ではなく未だに休止扱い。
これはあくまでも撤去予算削減によるものらしく実質的には廃線となっている。
ここ間藤駅は、紀行文作家の宮脇俊三さんが国鉄全線完乗を果たした駅として有名だ。
文学界で鉄道紀行というジャンルを確立し、今では乗り鉄の神様といわれている人である。
駅ノートには、各人の先生に対する熱いメッセージがびっしりと刻まれていた。
僕も興味があって、これから宮脇先生の諸作品を読んでいこうと思っている。
間藤駅から、今度は貨物の足尾本山駅までの廃線区間を辿っていくことに。
線路には立ち入りできないが、トンネルや信号機などがそのまま残っているので見渡すだけでも発見があるだろう。
まずは駅前の県道を歩き、貨物の廃線跡に沿って足尾本山駅へ向かった。
わたらせ渓谷鉄道は車窓が素晴らしいが、それ以上に趣ある駅舎やホームがよかった。
個人的には、足尾駅の景観が一番印象に残っている。