「奥日光フリーパスの旅 3/3 (半月山展望台~東武日光~北千住)」
[2014/10/29]
奥日光の日帰り一人旅も終盤を迎える。
早朝に東武線に乗って東武日光へ向かい、駅前からバスとロープウェイに乗って明智平展望台へ。
続いて明智平展望台の脇から登山道に入り、尾根の上を延々と進んで景勝地の半月山展望台までやってきた。
登山道 [半月山展望台~狸窪]
半月山展望台からは、半月峠を経て中禅寺湖方面へ山を下りていく。
山麓に辿り着いたら、中禅寺湖畔の道を歩き通して今回の旅は無事に帰路となる。
日が暮れる前に、まずは山の麓まで向かおうか。
半月山展望台を後にし、半月峠の分岐へ向かって山道を下っていく。
ここ一帯は笹が一面に生えていて、展望もきいて気持ちよい景色が広がる。
この道は利用者が多いらしく、車で来たと思われる観光客もちらほら見かける。
「こんにちは~」
「これから社山まで行かれるんですか?」
「いや、もう山を下りますよ」
「そうですか、では気をつけて!」
ベテラン方と思われる登山者と挨拶を交わす。社山は半月峠からさらに先にある山だ。
重装備でかつ日が暮れる時間帯なので、心配されたのかもしれない。
今から山を上るのは、山行の常識からすれば御法度である。
半月峠から中禅寺湖方面の道を延々と下り、山麓の狸窪まで到達した。
これで、とりあえず登山道は無事制覇!あとは中禅寺湖畔をひた歩いていくだけだ。
いや~、思ったよりキツかったーー、この尾根ルート。
まず第一に思ったのは、予想以上に危なっかしい箇所が多かったことである。
トレッキングブーツは必須であり、安易な装備では足をくじいて怪我をしかねない箇所が沢山あった。
道から一歩足を滑らせれば真っ逆さまみたいな危険な場所も結構見かけたので、もし行かれる場合は、ハイキングではなくちゃんとした登山の装備が必要となってくるだろう。
中禅寺湖畔 [狸窪~イタリア大使館別荘記念公園]
珍しく物思いに耽りながら、秋の中禅寺湖畔を歩いていく。
童謡「静かな湖畔の森の影から~」のメロディが頭に流れてきた。
ここの道は、先にあるイタリア大使館別荘記念公園まで一般車通行止めなのでひっそりとしている。
どうせならと思い、道脇から湖岸に出てまったり小休止。
残念ながら紅葉のピークは過ぎているが、中禅寺湖畔の風景は素晴らしい。
夕日に照りつけられた木々が黄金色に輝き、何ともいえない哀愁を誘ってくる。
湖に落ちた枯れ葉が、鮮やかに水面を彩る。
ずっとこうして景色を眺めていたいが、最終バスの時間は近い。
常に時間に縛られるのは、公共交通機関の旅の宿命だ。
でも、限られた中でやることがあるからこそ楽しい。私はそう思っている。
イタリア大使館別荘
夕日に照らされる湖岸を進んでいくと、一風変わった造りの古い木造住宅があった。
ここイタリア大使館別荘は、1997年まで歴代のイタリア大使が利用していたという。
この建物は中禅寺湖に面しており、ベランダを開け放てば湖畔の美しい風景を独り占めできるようだ。
今はちょうど日が暮れる寸前で、まるで桃源郷の果てを思わせる光景が広がっている。
いや~、こんなところに一度住んでみたいものだ。
大使館別荘付近は記念公園として整備されているが、この辺りはまだ紅葉が残っていた。
ヤバイ、日が暮れる!10月は日が沈むのが早い。
ここからはバスに乗れるので、大人しくバスに乗っちゃおう!
東武バス日光 [イタリア大使館別荘記念公園~東武日光]
イタリア大使館別荘記念公園を過ぎたところで、県道との合流地点があった。
道脇にはバス停がある。中禅寺温泉行きの最終バスは16時50分だ。
「おーい、そこの兄ちゃん!もうすぐ最終来るから待ってな!」
「あっはい、ありがとうございます!」
道路のゲートを閉めにきたおじさんに一声かけられた。
ここのバス停から先の道路は、17時以降通行止めとなるようだ。
バス停到達から約15分後、中禅寺温泉行きの最終バスがやってきたので乗り込む。
この区間ももちろんフリーパスの圏内なので、乗車運賃は無料である。
日が暮れる寸前、最終バスに乗り込んだときの、この安心感。
乗客たった一人だけを乗せて、夕暮れの湖畔をひた走っていく。
日帰りの場合は時間を目一杯に使うので、帰りのバスは大概最終になるのが常だ。
到着後、バスから降りると日がすっかり暮れていた。
ここ中禅寺温泉からは再びバスを乗り継ぎ、東武日光まで戻らなければならない。
寒いので自販機で缶コーヒーを買って身体を暖める。待っている乗客は大体20人ぐらいか。
やがて20分後、JR日光駅行きのバスが来たので乗り込んだ。
結局車内は満席となり、隣に座る姉ちゃんが睡魔にやられて私の方に寄りかかってきた。
こういうシチュエーション、マジで困るなー。
でも睡魔に襲われるのは痛いほどわかるので、あまり刺激しちゃいけないだろう。
そういや最近、電車の中で眠っちゃって、起きると涎がだらだらに出てるときがあるのだが、アレ本当に何とかならないかな。早いうちに改善策を検討しないとマズイ。
目が覚めたときの、あの気まず~い空気ね!まず垂れた涎をどう処理していいか困るのだ。
とりあえず、うつむきながら手の甲で何事もなかったかのように拭き取るわけだが……(汚い話ですいません)
18時過ぎ、バスは定刻より少し遅れて東武日光駅へ到着した。
あとは東武の電車に乗って、帰路を辿るだけだ。
平日の夜だというのに駅前は賑やかである。
東武鉄道 [東武日光~下今市]
18時28分発の下今市行き列車が出発を待っている。
平日の東武日光は18時以降だと浅草まで直通する列車がなくなるため、
まずは一旦鈍行で下今市まで進み、そこから接続する特急に乗り換えなければいけない。
東武日光から僅か数分で、列車は鬼怒川線と接続する下今市へ到着する。
ここからさらに鈍行を乗り継いで帰ることも可能だが、もう疲れたので特急に乗って帰ろう!
きぬ138号 (スペーシア) [下今市~北千住]
子供の頃、「スーパーひたち」(651系)とともに憧れの存在だった「スペーシア」の登場だ。
言わずと知れた東武特急の顔であり、デビューから20年以上経った今も現役で活躍している。
一旦改札を出て特急券を購入したあと、生まれて初めて乗車するスペーシアの車内へ。
今見ても全然古臭くない内装は、欧米のホテルをイメージしたものだという。
そして素晴らしいのが座席だ!今まで乗った特急の中でも随一の快適さである。
肉厚のクッションに、頭部横にある大きな支えが心地良い眠りを提供してくれる。
やがて下今市から約一時間半で、きぬ138号は定刻通り北千住に到着した。
心地良すぎる座席に終点の浅草まで座っていたくなったが、やむなく列車を降りる。
「スーパーひたち」も「スペーシア」も名車だったんだな~と、心の中でしみじみと想う。
奥日光の景色を存分に堪能できたし、混雑なんか気にならないほどの充実した一日であった。
「まるごと日光 東武フリーパス」は4日間連続で有効の切符であるが、
使い方によっては日帰りでも十分元はとれるだろう。
夜の北千住駅は通勤客の慌しい喧騒に満ちている。
東武特急スペーシアに別れを告げ、私は帰路を全うするべく常磐線のホームへ向かった。