「日本海北上紀行 4日目 (札幌~千歳~新夕張~夕張~南千歳~新千歳空港)」
[2016/1/8]
市電とシェルター探索を終えた私は、地下鉄に乗って札幌駅へ戻ってきた。
札幌からは千歳線で千歳に向かう。ズラッと並ぶ改札を通り、ホームへ。
道民100%の行列の中でひっそりと列車を待つ。
車社会の北海道とはいえ、札幌~千歳間は列車の数が多く快速列車もあるのが有難い。
ホームで突っ立っていると、新千歳空港行きの快速がやってきたので乗り込んだ。
千歳線 (快速エアポート) [札幌~千歳]
道内屈指の過密路線、千歳線。札幌~千歳は車移動で見慣れてたから、逆にちょっと楽しみだ。
やって来たのはロングシートの通勤電車。以前はクロスシートがデフォだったのになぁ。
石狩平野を突っ走り30分で千歳に到着。列車を降りると、古ぼけた気動車の音が聞こえてきた。
もうすっかり聞き慣れた”あの音”だ。気動車は停まってるときも煩い。
ガラガラ唸るアイドリング音に実家のような安心感を感じるよ。
千歳から、夕張へ。石勝線のオリジナルを辿る鈍行で、今回の旅に終止符を打とう。
石勝線 [千歳~夕張]
道央~道東を結ぶ石勝線。大昔は「夕張線」と呼ばれていた路線で、意外と歴史は古い。
北海道炭礦鉄道という私鉄が19世紀末(1892)に線路を敷いたのが全ての大元であり、
それから90年後の1981年に、日高山脈を貫く新線区間が開業して現在の形に至っている。
新線区間の開業以来、道央から道東へ直結する重要幹線として機能し、役目を担ってきた。
新線を抜けて道東へ向かう特急は割と多いが、問題なのは旧夕張線区間へ向かう鈍行だ。
札沼線と同様に地域需要は大昔に枯れ果てており、本数は著しく少なく、
追分から夕張……つまり石勝線のオリジナルを辿る鈍行は1日5~8本しかない。
2016年度のダイヤ改正でさらに本数が減るらしく、今後廃止される可能性もある。
千歳駅にたった一両の国鉄気動車が停まっている。ちっぽけな存在だが見かけは頼もしく見える。
14時28分発の夕張行き鈍行だ。千歳から直通で夕張へ行ってくれる、貴重な列車。
乗り込むと思った以上に乗客がいて、ボックスシートに一人ずつといった塩梅に。
終点夕張まで2時間弱の道のりだ。定刻が来ると列車は出発した。
南千歳を出ると千歳線と別れ、すぐに独り立ちする。
千歳線と室蘭本線を繋ぐこの区間は、途中駅が一切ないようだ。
ただっ広い平野をのんびり進み、シェルターを潜って長い隧道を抜ける。
隧道を抜けたところで運転停車。対向から特急が駆け抜けていった。
長い運転停車の後、列車は再び隧道を抜けて室蘭本線との合流点を目指す。
室蘭本線と合流すると、間もなく追分に到着。地元客がドッと降りていった。
さっき特急待ちで停車したのに、ここでさらに15分ほど停車するようだ。
追分駅は広く、大昔鉄道拠点だった名残が残っている。夕張線の起点として追分は機能したという。
今から41年前のクリスマスの日、ここ追分で、実用としてのSL列車は消滅している。
長時間停車した後、ガラガラの状態で追分を出た。
室蘭本線と別れると、列車は見渡す限り白一色の平野を行く。
その平野の中に佇む駅が東追分だ。追分で15分停車したが東追分でも5分停まるらしい。
マイペースと大らかさがウリの北海道。汽車ものんびりしてるじゃないか。
東京じゃありえない長い停車時間が、北海道の鈍行には残ってるのだ。
素朴な風景を進み、小さな街へ入ると川端へ着く。
川端からは夕張川と交差しながら進み、深い山の中へと入っていく。
ちょっとした集落へ達すると滝ノ上へ。今まで誰一人乗ってこなかった地元客が乗り込んできた。
滝ノ上を出て長い隧道を抜けると新夕張へ到着する。
新線区間との分かれ目だが長時間停車はしない模様。すぐに駅を出た。
夕張支線 [新夕張~夕張]
新夕張からは石勝線の支線、通称「夕張支線」と呼ばれる区間へ入った。
新線が遠ざかると夕張川を渡り、広大な景色が広がる。
夕張川の川面には野生のエゾシカがいた。
野生のシカって札幌では見かけなかったから、ちょっと新鮮。
レストランが併設する沼ノ沢で客が数人乗り込んできた。
沼ノ沢から南清水沢にかけては国道と並行し、人家の多い中を走るが、
清水沢を出ると鬱蒼とした山の中へ入り、道道とともに谷間を抜けていく。
終点が近づくと住宅が多くなってきた。大昔、炭鉱街として栄えた鹿ノ谷地区だ。
斜面にへばりつく団地と民家。ここが炭鉱の街だったことを物語っている。
皮肉にも、団地の外壁には「夢」と掲げてあった。
夕張鉄道と接続していた鹿ノ谷を出れば、終点夕張はすぐそこだ。
鹿ノ谷から夕張まで僅か1.3kmだが勾配がキツく、列車はノロノロ進む。
北国の山の日暮れはあまりにも早かった。
まだ16時過ぎなのに、炭鉱街をバックに陽が落ちる。
千歳から二時間弱の道のりもあと少し。というか眼の前だ。
終点到着のアナウンスが流れ、味気ない単線ホームへ滑り込んだ。
夕張駅
夕張、到達!
16時20分、列車は終点夕張に到着した。
夕張駅は二度も駅の場所を移転していて、現在建っているのは三代目の駅らしい。
そっけない単線ホームで、駅のすぐ横に巨大な観光ホテルが建っている。
昔の夕張駅は中心街に位置していたが、後に距離が縮小され現在の場所に移転したそうだ。
折り返しの列車が出るのは8分後。僅かな滞在時間だが、ちょっと駅前に出てみる。
駅舎というより“完全に観光センター”って感じの夕張駅。
バックに聳え立つのは、スキー場を有するリゾートホテルである。
あからさまな存在感が凄い。
駅前は小さなロータリーの他、これまで道のりをともにしてきた道道が通っていて、
道道に沿って「屋台村」と称したグルメ施設がある。他は……特にこれといったものが無いかな。
上画像は、今の夕張駅から初代夕張駅までの道のりをルート表示したものだ。
初代の駅舎は10年前に取り壊されており、痕跡は全く残ってないという。
終着駅としての風情は感じられないが、生き長らえてること自体が奇跡のような駅だ。
地図で近くを見回すと、見つけたのは安定のセイコーマートである。
駅前を刻み込んだ後、折り返しの列車に乗り込んだ。
一人一人がボックス席に落ち着いたところで千歳行きは出発する。
夕張を出ると、あっという間に真っ暗になってしまった。
あとは新千歳から飛行機に乗って帰るだけだ。
リボンナポリンうめぇええええええええええ
札幌帰省時、毎日のように飲んでたジュースです。今も好きです。中毒性が凄いんです。
シトロンっていう緑のマガイモノ(笑)も売ってますが、俺は昔からナポリン派。
どういう味なのかというと言葉に出来ない味なのだ。
列車の中で考えてみたが、出てこない。強いて言うならTHE北海道の味!答えになってませんね。
石勝線 [夕張~南千歳]
復路の鈍行は割かし乗客がいて良い感じに賑やかだ。日はすっかり沈んでしまい、辺りは真っ暗。
それでも列車の中は明るく、暖かい。北海道の気動車のこの安心感ってなんなんだろう??
ボロイけど暖かい。鈍いけど力強い。煩いけど憎めない。
鈍行らしい鈍行の原点は、北海道の国鉄気動車にあったんだと再確認した。
しかしこんな気動車で旅ができるのも今のうちだ。恐らく十年後には全廃……想像できてしまうのが怖いよ。
元来た道を戻って追分に着くと30分停車。長げぇ。東京じゃありえない停車時間だ。
追分から先でも運転停車し、結果的に往路復路合わせて一時間以上のロスがかかった。
18時25分、南千歳へ到着。これで石勝線の旅も終わりだ。列車の終点は千歳なのですぐに駅を出て行った。
新千歳空港行きを待ちながらブラブラしていると、石勝線の石碑(0キロ標)を発見したが、
今日行った夕張支線は石碑に刻まれていなかった。
新線開業以前の90年の歴史は何処へやら。これじゃ夕張支線が幻の存在みたいだ。
刻んでやれよ、路線のオリジナルぐらい刻んでやれよ。
勝手に煮え切らない想いに駆られていると、3番線に快速エアポートが入ってきた。
すぐに乗り込み一駅隣の新千歳空港へ。飛行機が出るまで残り40分!
チェックインが迫ってるので、早足で搭乗口へ向かう。
東京へ帰ろう!
LCCの搭乗口はターミナルの端っこにある。どこの空港も大体そうだ。
延々と歩いていくとオレンジの受付が見えてきて、そこがジェットスターの搭乗口だ。
機械にコードを打ち込み、あっという間に手続き完了。手荷物検査を済ませ売店でお土産を買うことに。
白い恋人、マルセイバターサンド、ロイズの生チョコ。
この3つが(自分の中では)北海道土産の定番で、どれも飽きるほど食ったけど無難に白い恋人を買った。
六花亭の中だったら、個人的にバターサンドよりもストロベリーチョコがオススメです。
イチゴがそのまんま入っていて美味しいよ!
ジェットスター国内線 [新千歳空港~成田空港]
東京〜千歳は国内線のドル箱航路だ。「東京から北海道行くんなら飛行機」コレ常識である。
北海道新幹線が札幌まで開業しても、この流れが変わることはないと思う。
今回取ったジェットスターの便は5000円を下回った。笑っちゃうほど安い。
北海道新幹線「東京~函館」運賃の5分の1以下!新幹線の運賃が馬鹿みたいに高いのだ。
以前福岡から乗ったときは大幅な遅延を起こしたが、今回は定時で行けそうな感じだ。
出発が迫ると後方座席の乗客から入場。案の定満杯となり、
成田行きは定刻からやや遅れて千歳を発つ。
狭い座席で耐え忍ぶこと一時間半、飛行機は成田空港へ到着する。
夏に北海道から東京へ帰ってきたときの絶望感(主に湿気的な意味で)は半端ないが、冬はそうでもない。
冬ならどっちみち寒い。やっぱり、北海道は夏が旬なんだろう。
でも、私は冬の北国を旅したかった。北上したかったんだ。その願望を今回の旅で全うすることが出来た。
全行程3泊4日、乗った列車の数は31本。トラブル一切無しでやれたことに感謝したい。
終電まで余裕があるので、成田アクセス特急に乗り込み北総線経由で帰路に着く。
全行程完遂。その実感を秘めながら、何時もの寝床にくるまった。
・旅の総運賃:34440円(北海道&東日本パス+その他運賃+特急券+新幹線代+飛行機代)
・乗った乗物の数:鈍行21本+快速5本+特急3本+急行1本+バス5本+新幹線1本+飛行機1本
・総距離/所要時間:約1500km/3泊4日(高崎~増毛~夕張)
旅を終え、二ヶ月経った3月21日。夕方TVではまなす最終列車のニュースが流れて、私は思い知った。
「あんな旅、もう二度と出来ない……!」本当に出来なくなってしまったのだ。
内地~道内を北上するにおいて、はまなすがどれだけ有難い存在だっただろうか。
ブログ史上最長となった鈍行旅行記。長くなりましたが、ここに終幕!!