「三陸縦断作戦 3日目 (大湊~野辺地~青森~蟹田~三厩~竜飛崎)」
[2015/4/9]
朝7時、相変わらず寝不足のまま私は大湊のホテルで起床した。
無料の朝食バイキングで飯をかきこみ、エネルギーを注入する(ご飯軽く3杯いった)。
鬼畜な鈍行旅は体力と気力がないととてもやってけない。だから、充実した朝飯は必要不可欠なのだ。
大湊駅
本日の天気は快晴。スロースターターだが三日目になって運が向いてきたようだ。
今日は大湊線に乗り、野辺地から青い森鉄道と津軽線を使って津軽半島の最北端へ向かおうと思う。
当初の予定では大湊からバスで恐山へ行こうとでも思っていたのだが、あいにく閉山中のため予定変更。
未乗の津軽線で竜飛崎へ行くことにした。
今日の乗り継ぎルートはこんな感じである(大湊線→青い森鉄道→津軽線→外ヶ浜町営バス)。
下北半島から津軽半島の突端へ!半島の盲腸線を乗り通し、果てに待つのは竜飛崎。
三陸国最果ての景色はどんなものなのか、この眼で確かめてこよう!
大湊の駅舎を観察した後、改札を通り乗り場へ突入した。
大湊線 (快速しもきた) [大湊~野辺地]
昨日は真っ暗で何も見えなかったが、大湊駅のロケーションは想像以上に素晴らしい!
バックに聳えているのは標高878mの釜臥山だ。
「大湊軽便線」として1921年に開業した大湊線は、かつて終点に海軍の基地があった。
繁華街の中心は隣の下北へ移っているが、当時は大湊の方が活気付いていたという。
同路線は半数以上の列車が青い森鉄道に直通し青森・八戸まで乗り入れている。
昨日乗ったのは鈍行だが、今から乗るのは八戸行きの快速「しもきた」だ。
車両は2両編成のキハ100。東北ローカルではお馴染みの気動車だ。
8時05分、八戸行きの快速しもきた号は定刻通り発車した。座席は八割方埋まっている。
終点の野辺地まで約40分の道のりである。
大湊を出ると列車は右にグッとカーブし、広大な田名部川の河口を渡る。
ここで大湊線ハイライトの一つといえる釜臥山の絶景が展開。
田名部川を渡ると隣駅の下北へ。乗客がそれなりに乗り込んできた。
ここからしもきた号はいくつか駅を抜かして進んでいくことになる。
「ここは北海道なのか??」と思うほど、大湊線の車窓は荒涼としている。
人工物が少なく土地が広大に見えるので北海道の大地を想起せざるを得ない。
私は、こういう広大でなんもない車窓が、大好きだ。
陸奥横浜までは主に防風林の中を進んで行く。
沿線は木々も多いが、一部区間ではこんな感じで眺望が開ける。
唯一の列車交換駅、陸奥横浜で対向車とすれ違い。対向も2両編成のキハ100である。
大湊線沿線は菜の花が有名らしく、駅近くには日本一の菜の花畑があるという。
陸奥横浜からは開けたところを進み、吹越から先で海が間近に迫ってきた。
大湊線のハイライト砂浜区間(吹越~有戸)へ突入!この区間の駅間距離は約13kmもある。
昨日夕暮れ時で通ったときは屏風のような絶景だったが、日中もまた絶景。素晴らしい。
海の影響を受けないよう、鉄道が海沿いを通る際は高台に線路が敷かれてることが多いが、
大湊線は砂浜をぶち抜いており陸奥湾が穏やかな海域であることを物語っている。
砂浜区間を抜けると海を離れ、閑散とした住宅街へ入った。
野辺地駅
8時58分、快速しもきた号は野辺地へ到着する。
列車はそのまま青い森鉄道へ入り八戸へ向かうが、私は青森へ行きたいので下車。
数分停車後、エンジンを唸らしゆっくり走り去っていった。
北海道を彷彿とさせる大湊線の前評判は嘘ではなかった。
広大な原野を走る根室本線(釧路~根室)ほどではないが、
最果て妙味たっぷりの車窓が展開し、なかなか見ごたえがあった!
青い森鉄道 (快速) [野辺地~青森]
野辺地からは青い森鉄道だ。東北新幹線に長距離輸送を託したため、列車は快速と鈍行のみ。
昨日の八戸~野辺地間と同様、これから乗る野辺地~青森間も特例が適用され18切符で乗車ができる。
大湊線は新幹線を含むJR線とは一切接続していないためだ。
9時38分発の青森行き快速はクロスシート付き車(E721系)であった。
こいつは恐らく東北本線で使われていたやつだろう。
青い森鉄道の車窓は閑散としているが、乗客は多い。
左手には青森の険しい山々が聳え、手前には田畑が広がっている。
この区間、昔は東北本線の一部らしかったから不思議な気分だ。
その名残かは知らんが、長大貨物がさっきからひっきりなしに通っている。
東北本線は旅客ルートの大動脈であるとともに、貨物の大動脈でもあったのだ。
人家が多くなってくると、列車は終点の青森に到着する。
時刻は10時24分。青森から今度は、10時38分発の津軽線に乗り換えなければならない。
日中に初めて来た青森(←夜中にしか来たことがない)。
夜行「はまなす」で北海道へ2回行った自分にとって青森は通過点でしかなかったが、
今日の旅の主役は青森と津軽だ。青森駅前は夕方に立ち寄るとして、まずは津軽線を制覇しよう!
津軽線 [青森~蟹田]
津軽半島を走る津軽線は、青森~函館間を結ぶ「津軽海峡線」の一部を構成している。
全線の青森~三厩間のうち、青森~蟹田間は海峡線の特急・貨物達と共に走るが、
蟹田から先は津軽線単独の道のりとなり、鈍行のみが終点三厩へ向かうのだ。
一部例外もあるが津軽線は蟹田を境に運行系統が分かれており、途中で列車を乗り継ぐ必要がある。
10時38分発の蟹田行きは3両編成の701系。安定の鬼畜オールロングシートだ。
こいつとの付き合いはもう慣れっこ。鬼畜=当たり前みたいになってるのが恐ろしい。
列車は発車すると青森市街を進むが、程なくしてただっ広い田畑をひた走っていく。
左手には津軽の山々が聳え、手前に北海道新幹線の真新しい線路が見える。
列車交換駅の中沢で3分停車。この辺りはまだまだ繁華な幹線といった様相だ。
津軽線は海沿いに線路が敷かれているが、海は車窓からあまり見えない。
郷沢辺りからようやく海がチラチラと見え始める。
終点一つ手前の瀬辺地を過ぎたところで、列車はやっと海岸線に出た。
車窓に陸奥湾と、さっき私がいた下北半島が霞んで見える。
手前の道路は国道280号だ。
津軽線と並走するこの国道は蟹田先で一旦道のりを別つが、終着三厩近くで再び合流することになる。
津軽線 [蟹田~三厩]
蟹田に着いた。ホーム向かい側で待っていたのは、単行の国鉄気動車だ。
単行なのに車掌がちゃんといる。非冷房であり、エンジンも昔のまま。
デッキも取り外されてなくワンマン化などの改造もされていない。まさに素のままのキハ40だ。
これまで繁華な幹線だったが、蟹田から先で津軽線は非電化ローカル線となる。
1日走る列車は僅か5本。取り残されたような閑散区間となっており、利用者も著しく少ない。
蟹田を発車すると海沿いから離れ、半島の内陸側へ突入した。
中小国という変わった名の駅を過ぎてしばらく進んだところで、津軽線は津軽海峡線と分かれ単独路になる。
この先、歴史の新しい海峡線は山中をトンネルでぶち抜いて突き進むが、歴史の古い津軽線は峠を越えて先を進むことになる。
右手に分かれていく海峡線の高架を見ていると、正直“取り残された感”が半端ない。
将来新幹線がひっきりなしに駆け抜ける、未来が約束された鉄路の傍らで、我々ローカル旅行者は衰退した地方交通線を選び取って旅をしているのだ。
車内もご覧の通りガラガラ。悲壮漂うシチュエーションだが、そんなことはないと言いたい。
私からしてみれば、新幹線はただの移動手段にすぎない。
最果ての鈍行こそ旅に相応しい存在なのだ。
新幹線で東京へ帰ろうとしてる奴が声を大にして言うことじゃないかもしれんが(苦笑)
原形エンジンを唸らせながら、昔ながらの体裁で列車は太平から山道に差し掛かる。
もはや時代錯誤な峠越え。すぐ横には北海道へ通じる長大トンネルが通っているのに。
勾配を延々と上り、天狗岳の横を抜けていくと峠を越えた。
坂を下り再び海峡線と合流すると、列車はこれまた取り残されたような津軽二股へ着く。
津軽二股から先は、山に囲まれた平地を進む。
この辺りは人が住んでるのかわからない廃屋ばかり。最果て感が凄いが侘しいところだ。
今別から、列車は再び半島の海岸線沿いに出た。
終点手前のところでは海が間近に迫り、先ほど並走していた国道280号と合流。
海沿いを抜けそのまま終着へ着くのかと思いきや、列車は到着寸前で”クイッ”と内陸側へ曲がった。
内陸側へ差し掛かったすぐのところでアナウンスが流れ、列車は終点の三厩へ到着する。
三厩駅
終点まで乗ってきた乗客は私含めてたったの三人。
「侘しすぎる……」というのが、ホームに降り立ったときの率直な感想だ。
大湊よりも最果て感は濃厚で、本州の最果てまで来た感じがするぞ。
三厩駅はホーム端からそのまま駅舎に通じているようだ。
先に見える線路の末端も最果ての雰囲気を醸し出している。
今日はここから町営バスで北上し、より侘しい津軽最北の岬へ向かうのだ。
三厩駅は懐かしい雰囲気の平屋建て。開業当時から使われているものらしい。
駅舎入口には「津軽半島最北端の駅」と凛々しく掲げられていた。
ちなみに、この駅は「東北の駅百選」にも選ばれている。
駅前は特に何もないが、町営バスのバス停と観光案内板がある。
お目当ての竜飛崎行きバスはロータリー脇に停まっていた。
外ヶ浜町営三厩地区循環バス [三厩駅前~竜飛崎灯台]
外ヶ浜町営「三厩地区循環バス」は、三厩駅と竜飛崎を結ぶ唯一のバス路線だ。
元々この路線は「竜飛線」という名で青森市営バスが受け持っていたが、2001年に利用客減少により撤退。
これを地元の三厩村が受け継ぎ、さらに蟹田町・平舘村・三厩村が合併して発足した外ヶ浜町が受け継ぐことで、津軽最北のバス路線として生き残ってきた。
運賃は一律100円と安い!
12時10分、三厩駅前から竜飛崎灯台行きバスが出発する。
狭い路地を進み、すぐに海沿いの国道280号へ出た。
三厩本町を出るところで、バスは国道339号へバトンタッチ。道中には古い隧道も残る。
この区間、普通サイズのバスでは通行困難な箇所ばかりだ。
道路は二車線になってるのだが、二車線としてはギリギリの狭さ!
“酷道”っていうほどでもないかもしれないが。
むちゃくちゃ狭い国道をバスは手慣れた動きで進んでいく。
海と崖が迫り、その間僅かの土地に沿って車道が無理やり敷かれてる感じ。
地元の生活感満載で、道端にわかめや長靴やらが並んで干してあるのが面白い。
ひなびた漁港を過ぎていくとバスは国道を脱し、岬へ至る急坂をグイグイ上っていく。
どう考えても無理やり敷いたとしか思えないぐにゃぐにゃ路盤のオンパレード。
竜飛崎までの道のりは、思いのほか波乱万丈な道のりであった。
12時42分、標高高い岬へたどり着くと終点の竜飛崎灯台に到着した。
運賃100円を支払いバスを降りる。竜飛崎周辺は曇ってるときが多いと聞いたが、
今日は天気が良く絶景を沢山拝めそうだ。良かった、良かった!
折り返しのバスが発車するまで一時間強ある。ちょっくら探索するには十分な時間だ。
竜飛崎はすっかり観光化されてしまったようだが、一度は訪れてみたかった岬だ。
名前だけは有名な竜飛岬。そして、竜飛岬といえばあの歌である。
寒風を浴びながら、私はバス停から岬の先っぽへ向かった。