「極寒北国紀行 4日目 (森~大沼~大沼公園~函館)」
[2014/12/13]
東京から鈍行で最北端へ到達し、さらに札幌から函館へ向かう私は、
早朝に札幌から函館本線(山線)を乗り継いで正午過ぎに森まで到達した。
森からは再び函館本線に乗って大沼で下車し、今年度に消滅するSLとご対面を果たすことになる。
SL撮影&乗車計画
これから私が決行する、鈍行+臨時SLを組み合わせた強行計画の詳細な順序は以下の通りだ。
1:森を13時30分に出る函館行き鈍行に乗って、大沼で下車する。
2:大沼駅から徒歩でSLの撮影ポイントへ移動(所要時間約10分)。
3:函館を14時15分に発車し、撮影ポイントを14時40~50分前後に通過するSLを撮影。
4:SL撮影ポイントから徒歩で二駅隣の大沼公園駅へ移動(所要時間約20分)。
5:大沼公園を15時55分に出る復路のSLに乗車し、終着函館を目指す。
この計画の肝はSLを「撮って乗る」こと!鉄の醍醐味を両方とも味わってしまおうという旅程である。
途中でもたもたしてると失敗確実な行程だが、乗り鉄にかかればこんな道のり何てことない。
難点を言うなら、今から乗る函館行き鈍行に遅延が出てほしくないことぐらいか。
こんな雪が降りしける中SLが来るのか心配だが、張り切って行こう!
函館本線 [森~大沼]
森以南の函館本線は八の字に分岐しており本線(山側)と砂原支線(海側)に分かれている。
これから行くのは再び山の中だ。
山線区間に続き、函館本線のオリジナルを従順に辿っていくことになる。
手前に停まっているのは13時29分発の長万部行き鈍行で、奥が今私が乗る本線経由の函館行き鈍行だ。
砂原支線を経由する鈍行が1日8本なのに対し、本線を経由する上りの鈍行は1日5本のみ。
海沿いの砂原支線と比べて本線はあまり需要がないらしく、砂原支線よりも列車の本数が少ない。
しかし、こちらのルートでは車窓に雄大な駒ケ岳を望むことができるらしい。
森~大沼間の本線ルートは森からだとキツイ急勾配があり、車重の重い貨物列車は一切通らない。
今から乗るのは鈍重な国鉄車(キハ40)だが、この大雪の中で大丈夫だろうか??
乗客たった三人を乗せ、本線経由の鈍行は定刻通り発車した。
列車は森を発車すると、間もなく人家の皆無な山の中へ差し掛かる。
森からしばらくはS字カーブが連続しており、短区間で高度を一気に稼いでいく。
先へ進むごとに雪の勢いは増し、大雪状態に。
列車は単行気動車だが、今にも止まりそうである。
「ドゥルルルルーーーン!ドゥルルルーーーン!ガラガラガラガラガラ」
全然、進まねえ。
人が走れば追い抜かせるぐらいの速度をいったりきたりしていて、エンジンふかしてるのに全く加速しない。
どうやら空転してるらしい。線路に積もった雪かなんかで車輪が滑っているんだろう。
大雪に加えて20パーミルの急勾配という悪条件の最中、キハ40がヒイヒイ唸りながら坂を上る。
空転を何度も繰り返し、限界までエンジンを回しても速度は上がらず。
思わず運転士に「頑張れーっ!」て応援したくなる状況だ。
このまま止まってしまい立ち往生するんじゃないかとヒヤヒヤするが、超鈍足を保って峠は無事越えた。
峠越えなんて蒸気の時代にしかないものと思われがちだが、そんなことはないのだ。
駒ケ岳近くから下り勾配となり、列車は惰性で坂を下りていく。
森からの標高差は約180m。沿岸から一気に上ってきたわけだ。
各駅の停車時間が長いので苦戦した峠越えによる遅延はほぼない。
外は真っ白で、肝心の駒ケ岳は全く見えないのが残念。
坂を下りきったところに大沼が見えてくると、列車は大沼公園に到着する。
大沼公園を過ぎると砂原支線と交わり、すぐに隣駅の大沼へ。
ここで列車を降りたのは私一人だけであった。
大沼からはSLの撮影ポイントに向かう。
その場所は大沼駅から歩いて10分のところにあり、ほぼ一本道なので行くのは容易だ。
大沼駅~撮影ポイント (徒歩)
まず駅前から二車線の県道に出た。
あとはこの県道を少し南下すれば撮影ポイントに行くことができる。
撮影する場所は県道が大沼と接する地点にあり、道路の脇に居座って撮影することになる。
「先客」の足跡を辿ること10分で、大沼沿いの撮影ポイントに到達した。
撮り鉄と普通の鉄が15人くらい待機していて、有名な場所だからか警備員もいる。
外は雪が降りしきっているが、SLが来るまでしばし待機しなければならない。
SL撮影
これからやってくるSLは「SLはこだてクリスマスファンタジー号」という。
函館で開催されているクリスマスキャンペーンに合わせて設定された臨時列車で、小型の蒸気機関車C11が客車5両を牽引してやってくるはずだ。
ただC11だけだと客車5両は引っ張りきれないので、最後尾にはディーゼル機関車が付く。
「ああそこ敷地内だから出て!三脚も!危ないから!」
「ああはい、すいません」
線路敷地内に居座る撮り鉄が警備員に注意された。敷地内に入ることや三脚を立てるのはマナー違反なのだ。
こうして待ってるときに限って雪の勢いが増すからシャレにならない。
身体に降り積もり、いくらはたいてもキリがない。
そうして一人ジタバタしていると、雪の向こうから一点輝くライトが見えた。
SLが来たことを察知し、ガッチガチになった手でカメラを構える………!
来たな………!
一眼ではなくコンデジだから一発勝負!連写機能は信用できないから使わない。
「撮れりゃよし」という私の考え方は、撮り鉄の思想とは相反するだろう。
彼らは列車の構図や位置、景色や日の当たり方など全て計算しつくしているからだ。
しかしここは敢えて、乗り鉄としての実力(=コンデジ?w)を見せつけてやろうじゃないか!
ぬおおおおおおおお………!
(↑単発ショットでタイミングを合わせようと頑張っている)
キターーーーーーーーーーッ!!
大迫力!白煙と雪煙を上げながらSLが目の前を通過していく。
えっ?藪が邪魔だって??そんなの気にするな(泣)
雪の中を力走するSLなんて初めて見たから、通った瞬間には胸が熱くなった。鳥肌も立った。
極寒の地に身を捨ててまで、二度ない瞬間に立ち会う喜びってのもあるんだと思う。
今にも寒くて凍えそうだが………来といて良かった!
ただ、さっき警備員に注意されてたのに相変わらず敷地内に三脚入れっぱなしの撮り鉄には閉口だな。
自分は撮り鉄のことは素人だし、現場のマナー違反の度合いがどのくらいか知らないのだが、
敷地内に突っ込んだ三脚のおかげで後方側の「鉄」は撮るのに苦戦してたぞ。
撮影ポイント~大沼公園駅 (徒歩)
怒涛のSL撮影を終え、今度は歩いて二駅隣の大沼公園駅へ向かう。
県道沿いに行けば2kmちょっとだ。ここから徒歩20分ぐらいだろうか。
撮り鉄は車で移動するようで、コンビニや大沼駅前の駐車スペースに散っていった。
鉄道好きなのに鉄道に乗らない彼らの気持ちが私はよくわからない。
今の私が頼れるのは、自らの足のみ!
人気のない雪道を延々と歩き、雪ダルマ状態になりながら大沼公園駅へ到達した。
大沼公園駅
駅前はSLで来た人で賑わっている。
ここから今度は復路のSLに乗って函館に向かう。
恐らくほぼ全ての乗客が函館からの往復乗車であり、札幌からの移動手段として片道だけ乗ろうとしてるのは私以外誰もいないだろう。
ちなみに駅舎の前に人がわんさか集まっているのが見えると思うが、この光景は何なのかというと、駅舎に入れず外に溢れかえっている人達なのである。
駅舎内は外の寒さを避けたい観光客で満杯で、人と人が密着しサウナ風呂と化している。シュールすぎる!
密着状態の駅舎内で待つことしばらくして、駅員からアナウンスが入り改札が始まった。
さっき苗穂で発生した遅延によって復路のSLも発車が遅れるらしい。
やけに人が多いなと思っていたら、SLではなく特急に乗る人達が混じってるようだ。
しばらくすると、遅れて来た特急が入ってきた。
「特急入ってきまーす。ハイ下がって!下がってください!命関わりますよ!!」
中国人が下がれと言っても下がる気配がない。
大声でベラベラ喋りながらホーム端で記念撮影をしている。
しまいに駅員が「命」と重い言葉でまくし立てるが、やはり下がらないので手でどかす強行手段に出た。
さすが中国人だ。品が悪い。そして何を言っても人の言うことを聞かない。
てんやわんや状態の中、特急が到着すると自由席にドバッと人がなだれ込む。
車内が通勤ラッシュ並みの満員状態となり、列車は発車していった。
さっきの撮り鉄といいあいつら(中国人)といい、本当に大変だな鉄道従業員の人は………。
事故を起こそうとしているのは彼らなのに、仮に事故が起これば会社側に責任の一端がのしかかる。
そして最終的にツケが回ってくるのは、我々善良な「鉄」である。
SLはこだてクリスマスファンタジー号 [大沼公園~函館]
てんやわんやの特急に続き貨物が通過した後、定刻から遅れてはこだてクリスマスファンタジー号が入線した。
この臨時SLは運行期間内に函館~大沼公園間を1日2往復走っていて、函館からの往路はSLが牽引するが、大沼公園付近は機関車の向きを変えられる場所がないので復路はディーゼル機関車が引っ張る。
クリスマスキャンペーンに則した列車なので、機関車には派手なネオンが取り付けられていた。
クリスマスファンタジー号を含め、札幌〜函館間で運行しているSLは今年度で廃止されることになった。
理由はもちろん北海道新幹線開業の影響だ。
新幹線だけで手一杯だからSLを廃止させようなんて残念すぎやしないか。
函館大沼号とニセコ号は今年度の運転を終了したので、残る函館のSLはクリスマスファンタジー号のみというわけだ。
上記で説明した通り、復路の主役はこちらのディーゼル機関車「DE10」だ。
他にはない、なかなかかっこいい面構え!
このタイプのディーゼル機関車といえば朱色を連想させるが、黒いのは一度も見たことがない。
茶色に統一された客車と相俟っていぶし銀な井出達である。
予想以上の賑わいに巻かれて乗り込むと、ほぼ満席であった。全席指定席で指定席券代は820円。
既に大幅な遅れが出てるため、列車は入線後間もなく大沼公園を発車した。
終点函館まで約40分の道のりである。
SLの客車5両のうち4両は一般的な国鉄客車だが、1両だけ旧型客車(4号車)が使われている。
その旧客はカフェカーと名乗っており、車内脇にあるカウンターでコーヒーや食べ物を買うことができるという。
全体的にレトロな風情に仕立てられているが、元々レトロな旧客だからより古ぼけて見えて良い。
床は木製で荷棚は本物の網棚。
昔ながらの石炭ストーブも残っていた(火はついてないけど)
クリスマスを盛り上げるための列車なので、サンタの衣装を着た乗務員が案内を行っている。
記念ハガキを貰ったので、せっかくだしスタンプを押した。
今日はSLの運行最終日ではないが、乗っておいて本当に良かった。
クリスマスファンタジー号は、二週間先の12月25日をもって見納めになると思われる。
女性案内役の流暢なマイクパフォーマンスで車内は盛り上がり、拍手喝采!
こんな賑わってるのに廃止するとは………現実は非情だ。
函館駅
クリスマスファンタジー号は、予定よりやや遅れて終点函館に到着する。
到着後SLは早々に退散すると聞いたので、降りたらすぐに列車後方部へ。
僅かの撮影タイムの後、C11は客車から切り離されて駅を発っていった。
函館のSLは、これで最初で最後の見納めだ。
「ありがとう函館のSL(とDL)!今までお疲れ様でした!」
函館に北斗星が来るのは21時38分。
それまで5時間近くの滞在時間があるので、今回は函館市街を少し探索してみよう。
取り敢えず夜景を見に行くため、駅前からすぐそこにある函館市電の電停へ向かった。
………と意気込んだのはいいが、外はこんな状態だ。
風はさっきより弱まっているが、降ってる雪の量がマジで半端じゃない。
というか、何でこんな人多いの!?何でこんな大雪なのに外を出歩こうとするの!?w
もう既に体がヘロヘロなのに、またしても雪を容赦なく浴びるというのか………!
次回!体力が限界まで追い込まれた私は、函館観光の末に北斗星へ身を委ねる。
人生最初で最後の北斗星乗車をもって、今回大長編となった最北端鈍行旅は終幕を迎える!