「秋田ローカル鉄道旅 2日目 (羽後本荘~秋田~大曲~角館)」
[2015/10/17]
由利高原鉄道を乗り通した私は、南からやってくる羽越本線の鈍行に乗って秋田へ向かった。
ロングシートのステンレス電車が秋田の平野をひた走る。
この区間は数年前に乗り通しているので、車窓にデジャヴ感を感じざるを得ない。
今日は土曜なので車内は行楽客で埋まっている。
羽越本線 [羽後本荘~秋田]
羽後亀田を出ると列車は日本海沿いに出る。一駅一駅進むごとに乗客が増えて、何時の間にか満席状態に。
東京では当たり前の4G回線も、この地では容赦なく3G回線に格下げされるようだ。
終いには立ち客も出て、列車は終点秋田に到着となった。
秋田駅は奥羽本線と羽越本線の他に、男鹿半島へ向かう男鹿線も直通で乗り入れている。
ロングシート鈍行地獄の秋田界隈でも、男鹿線は昔ながらの国鉄気動車だ。
奥羽本線や羽越本線も全部この気動車ならいいのにと思う。
秋田からは奥羽本線に乗って内陸へ向かうが、ここに来て私は致命的な問題に直面していた。
「旅費が・・・旅費がねえ・・・」
そうなのだ。運賃や宿泊代は事前に用意するが、観光などで使う余分な旅費を今回は全く持ってきてなかった。
現状懐に残されているのは、秋田内陸縦貫鉄道の運賃と昼飯代と帰りの新幹線運賃を足した分のみであり、
その分を引くと、手元はリアルで数百円以下になってしまうというジリ貧状態に陥っていた。
このままでは夜飯にあり付けないし、秋田駅から遠いらしいみ○ほのATMに駆け込む時間も無い。
そこで短区間でも高運賃になってしまう新幹線を避けるため、私は昨日の宿滞在時に別の行程をおっ立てていた。
そのジリ貧突破ネタは後にとっておいて、今は取り敢えず奥羽本線に乗って大曲を目指そう。
奥羽本線 [秋田~大曲]
秋田からは間髪入れずに奥羽本線に乗り換える。11時38分発の新庄行き鈍行だ。
長大幹線の奥羽本線だが、この区間の鈍行は1日10本以上あり乗り継ぎには困らない。
車両は相変わらずピンクのステンレス電車だが、こちらは一部の座席がクロスシートになっている。
奥羽本線の内陸区間は未開地でまだ一度も行ったことがない。
列車は秋田を出ると市街から田園に出て、甲高い音を立ててかっ飛ばす。
峠もある奥羽本線だがこの区間の道のりは至って平坦だ。進むごとに車内はガラガラになってきた。
和田を過ぎると人家が少なくなり、鬱蒼とした山あいを突き進む。
次第に上り勾配へ差し掛かるが、軽快な電車なので上ってる感覚は希薄。
沿線沿いは特に景勝地たる場所が存在しないが、すっかり紅葉した山々が車窓を彩っている。
しばらくすると山あいを抜けて刈和野へ到着。対向列車待ち合わせのため5分停車となった。
刈和野から先は何の変哲も無い郊外のようだが、広大な田園の向こうに内陸の山々が見えた。
この区間の奥羽本線は新幹線用の線路と鈍行用の線路に分かれていて、線路の幅も少し違う。
俗に鉄用語で言う「標準軌(1435mm)」「狭軌(1067mm)」ってやつだ。
標準軌は日本の新幹線で使われている線路幅で一部私鉄でも採用されている。国際的に最も一般的な線路幅だ。
しかし大隈重信の致命的な知識不足によって、日本国有鉄道の規格は狭軌に決められてしまった。
当時の狭軌決定に関する公的資料は全く残されてないらしいが、
大隈重信自身がそもそもゲージの意味すら知らなかったという逸話が残っている。信じられない話だが。
鉄道知識が貧弱だった当時の国有鉄道は、外国からのおまかせで決めるしかなかったのだろうか……。
大曲駅
12時40分、奥羽本線の鈍行は大曲へ到着する。大曲からも鈍行に乗って先を進みたいところだが、
残念ながら田沢湖線は新幹線が完全優勢となっている。とにかく鈍行の本数が殺人的に少ないのだ。
時刻表を見ると、この区間の鈍行は1日7本しか走ってない。
次に出る田沢湖線の鈍行は2時間後だ。
この鈍行では、どう頑張っても秋田内陸縦貫鉄道の紅葉列車に間に合わない。
そこで私が急遽考案したのが、鉄道と並行する路線バスを利用する行程であった。
今回は大曲と角館を結ぶ羽後交通大曲角館線に乗って角館を目指そう!
新幹線機運に逆らう如く、私は大曲駅から歩いて羽後交通のバスターミナルへ向かった。
大曲駅西口から徒歩2分のところに羽後交通のバスターミナルはある。大曲と角館を結ぶとはいえ、
バス自体は大曲駅前から発するわけではないから注意したいところだ。
羽後交通大曲角館線 [大曲バスターミナル~角館駅前]
羽後交通の大曲角館線は、田沢湖線と並行する国道を走る実直なバス路線だ。
秋田最大の規模を誇る羽後交通の主要路線であり、大曲バスターミナルを起点として、
羽後長野駅と角館駅を経由し終点の角館営業所へ向かう。現時点では1日最大13本運行されている。
大曲~角館間は、秋田新幹線だと運賃と指定席券代合わせて1590円かかってしまうが、
並行するこの路線バスを利用すれば510円で済む。本数も田沢湖線の鈍行より多いようだ。
所要時間は約40分。発車10分前にバス停に向かうと既にバスが停まっていた。
何てことないワンステップバスだ。でもこの実直さが、またいい。
天下の新幹線に負けられない、意地(というか金がなかっただけ)のバス突破行程が今始まる。
13時発の角館営業所行きは、たった4人の乗客を乗せて定刻通り発車した。
バスは駅前通りを出ると国道105号に入り北上。
進むうちに地元客が少しずつ乗ってくるが、観光需要がないのか旅行客は私一人だけだ。
国道に入って間もなくバスは奥羽本線の線路を渡った。
内陸の田園を突っ走り、しばらくするとバスは裏道に入って羽後長野駅前へ到着する。
羽後長野駅前を出ると裏道から再び国道に戻って、一路ひた走っていく。
玉川を渡ると、バスは律儀に辿っていた国道105号から裏道に入りソロソロと走る。
乗客がバスを降りると発車時に警笛を鳴らすのは、羽後交通の決まりなのだろうか。
狭苦しい裏道を辿り駅前通りを過ぎると、バスは定刻通り角館駅前に到着した。
角館駅前
ありがとう、大曲角館線!
僅か二人を降ろすとバスは角館営業所へ向かっていった。なかなかグッジョブな路線だったと思う。
なんせ、このバスが無ければお高い新幹線に乗らざるを得なかったんだから。
角館は「みちのくの小京都」と呼ばれる地で、近くには武家屋敷があるという。
武家屋敷とやらも見てみたかったが、時間の都合上無理そうなので今回は我慢。
腹が減ったので駅近で美味しい店がないか探してみると、本格的な蕎麦屋さんがあるというので行ってみることに。
駅前通りをトボトボ歩き武家屋敷がある方へ向かうと、10分ほどでお目当ての店を発見した。
「角館そば」。見かけは由緒正しい蕎麦屋さんだ。
限定物に弱いので土日限定の「田舎そば」を注文してみる。
非常に上品なそばで、そば素人の私にはちょっと本格的すぎる味わいだ。
追加注文しようと思ったが旅費が底を尽きていたので我慢。完食後はやむなく店を出た。
そばを食した後は角館駅へ戻りキ○スクで今日最後の食料となる駅弁を購入。
これで手元に残された余分な旅費は500円をきった。まあ……なんとかなるだろう。
秋田内陸線の列車出発までちょっと時間があるので駅前を探索してみると、
農業センターの支店と思われる建物に、コレまた萌え~な女性キャラを発見した。
調べてみると彼女の名は「おばこ娘」というらしい。農業協同組合の公式キャラクターである。
農協のキャラクターにしては随分萌え度が高い気が……普通にギャルゲーとかに出てきそうw
駅前ロータリーの真ん前に構える田沢湖線の駅舎に対し、秋田内陸縦貫鉄道の駅舎はこじんまりとしている。
今日は紅葉列車の運行日なので観光客でごった返すのかと思いきや、そんなことはなく思った以上に閑散としている。
意外と穴場なのかもしれない。
路線愛称に「♥」が付く恥ずかしの三セク鉄道で、今回のローカル旅はもう一つの佳境を迎える。
次回(最終回)!角館から秋田内陸縦貫鉄道の紅葉列車に乗って、一路弘前へ向かう!